
それでも日は、暮れていく。
車の窓の外を景色が流れていく。
夕暮れの光が少しずつ薄くなっていく。
何かを考えようとしていたわけでもないのに、
ぽつ、 ぽつ、
と雨粒みたいに記憶が落ちてくる。
「あの時のこと」 「そういえば、あれもあったな」 「こんなこともあったな」
って。
無理やり思い出そうとした記憶じゃなくて、
向こうから静かにやって来た記憶たち。
流れる景色を見ながら、昔の自分の人生を少し離れた場所から眺めているような感覚だった。
まるで車窓から見える景色みたいに。
あの頃の自分。 児童相談所にいた自分。 母親を探していた自分。 傷ついた自分。 故郷へ戻った自分。
そのどれもが、窓の向こうを流れていく。
消えたわけではないけれど、
その景色の中に閉じ込められているわけでもない。
昔の私たちを迎えに行っているようだった。
篠原凪