
「F1のピットストップのときにタイヤをマグロに交換してもらう」【ワンフレーズ小説⑨】
📚1分で読める、おバカなショートストーリー
レース残り20周。ケンジのマシンはモナコの石畳を駆け抜けながら、無線でピットに告げた。
「タイヤ交換のタイミング、次の周でいく」
「了解。マグロ、準備できてます」
短い返答に、ケンジは何も聞き返さなかった。このチームに来て3年、彼はもう慣れていた。
ピットレーンに滑り込んだマシンを、クルーたちが取り囲む。電動レンチの音が響き、4本のタイヤが外された。そして次の瞬間、クルーたちはそれぞれ80キロ超のマグロを脇に抱え、慣れた手つきでホイールハブに押し込んだ。
2.4秒。
チームの自己ベストだった。
コースに戻ったケンジは、マグロの感触を確かめるようにステアリングを切った。タイヤとは違う、しなやかな反発がある。コーナーで荷重をかけると、マグロがわずかにたわみ、路面に吸い付くような感覚が生まれた。
「悪くない」
無線越しに、チームエンジニアの田中が言った。「先代のチーフが見つけた秘密です。マグロの背筋は、スリックタイヤより0.3秒速い。でも、なぜかはいまもわかっていない」
ケンジはアクセルを踏み込んだ。
最終ラップ、彼は3台をごぼう抜きにして2位でフィニッシュラインを越えた。表彰台の下で、クルーのひとりがマグロをクーラーボックスに丁寧に戻しながら言った。「このマグロ、次のレースも使えます。豊洲の仲買人のおやじに感謝しないと」
……その仲買人は翌日、店のまえに手書きの貼り紙を出した。
「当店のマグロ、F1で2位入賞。1キロ3割増し」
※ワンフレーズ小説は、"奇妙なワンフレーズ"をAIの力を借りて拡張させた短編小説です。
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