見出し画像

漫画みたいに、ボタンがふっ飛んだ

あるコールセンターに勤めていた頃。

先に働いていた仲の良い友人から
「ちょっと変わった人がいる」
と、聞いていた。

その人をAさんとしよう。
Aさんは、私の友人にかなり執着をしていた。

「電車で帰るとき、
 自分が見えなくなるまで手を振って」

と、言っていたらしい。

‥‥若干ホラーである。




私が入社すると、
Aさんは私を目の敵にしはじめた。
私の友人と私が仲がいいのが、
気に入らないらしい。


(はぁ、めんどくさ…)


そうなる事は想像がついていたが
いろいろと面倒なので
おとなしい人のフリをすることを決め込んだ。


Aさんは、「制服が大丈夫」なのかと
少し心配になるくらい体格が良かった。



そんなAさんは私の教育係だった。
場所はコールセンター。


私が電話を受けるたびにAさんは
ガラケーでメールを送信する。

当時は送信時の電波が影響し、
音声が乱れることがあった。


「お客様、申し訳ありません。
 もう一度お願いいたします。」

と、言う羽目になる。
これを何回もされ、ムカついていた。



ある日。
彼女はいつものように、メールを発信し
私に嫌がらせをしてきた。


「今のって電話遠くなかったよね?」
「私にはちゃんと聞こえたけどぉ」

教育係のAと私のイヤホンはつながっている。


(いやいや、そもそもお前が
 メール飛ばさなければ普通に聞こえるけど)


そう、言いたいところをぐっと堪えて
とぼけた顔で

「電波障害ですかねー?
 何か急に聞こえなくなったんですよねーー」


わかっていながらも、私もわざとそう言った。
おとなしいフリにも、ボロが出そうになる。


「ふーん」と、彼女は答え、

はぁー

と大きく息を吐いた。


_____その瞬間。
何かが

ぴゅーーーーん

弧を描いて、飛んだ。


すぐ、私は気がついた。


Aさんのボタンが飛んだのだ。


まるで、漫画かのように、
弧を描いてすっ飛んで行ったボタン。


Aさんの向こうには、私の友達が座っていた。
彼女もその瞬間を目撃した。


反対を向いて肩を振るわせて、
笑いをこらえている。



ずるい!私も笑いたい。
でも、笑いたくても笑えない。


吹き出しそうになるのを我慢。


とっさに、


「ボタンどこ行ったんですかね~」
「探しますね」


と、良い人のふりをして
机の下に入り、笑いをこらえた。


ボタンを飛ぶ瞬間なんて、
人生で初めて見た。


弾け飛ぶ瞬間を目撃する日が来るとは。
あー、お客様と通話中じゃなくてよかった。

ろくねこ 闘い?シリーズ
▶ 枝豆泥棒との闘い
▶ 私は最後のひと巻の世話人
▶ 毎日かかってくる無言電話に、お経を流した夜

脳脊髄液減少症になって、私が難しく感じること
▶ 読めない、処理できずに体調が悪化する理由とは?


いいなと思ったら応援しよう!

ろくねこ note片手に美味しい珈琲を飲むときに利用させていただきます