
抜け出せない七月三日
朝、目が覚める。
顔を洗い、
仕事へ行く。
帰って、
風呂に入り、
寝る。
また朝が来る。
同じような毎日だった。
ある日、
カレンダーを見て違和感を覚えた。
七月三日。
昨日も、
七月三日だった気がする。
気のせいだろうと思った。
いつものように仕事へ向かう。
いつもの客先。
いつもの故障。
いつもの会話。
まるで、
昨日の続きを生きているようだった。
そして、
帰宅して眠る。
翌朝。
カレンダーは、
また七月三日だった。
何度確認しても変わらない。
スマホの日付も、
テレビのニュースも、
全部、七月三日。
私は混乱した。
けれど周囲の人は、
誰も気付いていない。
毎日、
同じ日が繰り返されている。
何十回、
何百回繰り返しても、
明日は来なかった。
私は考えるのをやめた。
どうせ、
明日も来ない。
仕事を休み、
行きたい場所へ行った。
高い寿司を食べた。
知らない町を歩いた。
会いたかった人にも会った。
だが翌朝になると、
また七月三日だった。
何をしても変わらない。
何もしなくても変わらない。
そのうち私は、
部屋から出なくなった。
天井を見つめながら、
ただ時間が過ぎるのを待った。
すると、
部屋の隅から声がした。
「やっと気付いたか」
振り返ると、
老人が座っていた。
「何をですか」
老人は笑った。
「お前は日々から抜け出せないんじゃない」
「日々がお前から抜け出せないんだ」
老人は窓の外を指差した。
そこには、
昨日と同じ景色が広がっていた。
いや、違う。
同じだと思っていた景色に、
昨日はなかった白い花が、
一輪だけ風に揺れていた。
その瞬間、
七月四日になった。