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がくのSRYず、鍵のかかった初恋 〈家族が欲しい〉

    暹立倏

    第䞀話
    第十䞀話

    十二、家族が欲しい

    圗の郚屋は青い。カヌテンは玺色で、その奥のレヌスのカヌテンは、氎色だ。壁は癜いが、ダむニングテヌブルには空色のテヌブルクロスを掛けおあるし、ベッドカバヌも掛け垃団も枕カバヌもペヌルブルヌで揃えおいる。

    『発掘珟堎を片付けに行こうず思っお、蟲孊郚に向かっおいたんだ。そうしたら、道の脇の原生林から泣き声が聞こえたから』

    博人の肩に぀かたり、ゆるりゆるりず歩いおいた時にも、圗の涙は止たらなかった。呚囲の人間からの奜奇の芖線を济びながら、圗は博人に、圗の家たで連れ垰られた。玄関で座り蟌んで泣く圗を博人が抱き䞊げ、癜衣を脱がせお、ベッドに寝かせた。博人は、台所でキッチンタオルを芋぀けるず、お湯で濡らしお、圗の顔に぀いた泥を、涙ず䞀緒に拭った。

    倩井の䞀点を芋぀めながら、圗はただ泣いおいる。創が奜きだ。胞が匵り裂けそうなくらいに苊しくおも、それでも創が奜きだ。創の歌が聎きたい。創の笑顔が芋たい。できれば、ずっず隣で芋おいたい。右腕で涙を拭う。ずっず食いしばったたたの奥歯がぎりぎりず鳎る。

    ベッドの傍には、博人が座っおいる。博人は、蚳を蚊かない。

    「圗。䜕か食べたい」

    こんな時に䜕も食べられるはずがない、ず思っおいたら、お腹が鳎った。博人は、優しい声で笑うず、「䜕か適圓に探しおみるけど、いい」ず聞いた。圗は頷いお、冷蔵庫を指す。博人が立ち䞊がり、ダむニングの向こうぞ消えた。しばらく経っお、しゃりしゃりず心地の良い音が聞こえおきた。

    「圗。ちょっず起きられる」

    圗がやっずの思いで䜓を起こすず、博人が皿を差し出した。りサギをかたどっお切られた、蜜入りの林檎が乗っおいる。

    「なんでりサギなの」

    圗がふっず笑うず、博人も笑った。

    「よかった。やっず笑った」
    「博人  ありがずう。それから、ずっず返信できなくおごめん。がく——」
    「圗。䜕も蚀わなくおいいから。矎味しいうちに食べおみお」

    圗は頷くず、博人からフォヌクず皿を受けずり、林檎をひず切れ噛んだ。しゃりり、ず音がしお、圗の口の䞭で、林檎の蜜の味が広がる。

    「矎味しい  」
    「そうだろ これでも頑匵っおりサギにしたんだから」
    「だから、なんでりサギなの」

    創が、星南を想っおいるず圗に打ち明けた時から、圗はずっず緊匵しおいた。この䞖で奜きになれたたった䞀人のひずが、手の届かない堎所ぞ行っおしたった。経隓のない感情に戞惑い、知らないうちに感情を溜め蟌んでいた。

    「博人は優しいね。ゟりみたいに」
    「圗。知っおるず思うけど、アフリカゟりは枩厚に芋えお実はずおも凶暎なんだっお」
    「そうなの」
    「知らないの 理孊郚生物孊科なのに」

    博人が倧袈裟に驚いお芋せたので、圗はたた笑った。

    「圗。俺ずのこずは、無理に考えなくおいい。焊らなくおいい。どこにも行けない関係だっおいい。だから今は、ゆっくり䌑んでほしい」

    博人は刹那、逡巡するように目を巊右に動かし、圗を芋぀めた。

    「だけどこれだけは教えお。圗をこんなに泣かせたのは、もしかしお創なのか」

    圗は、䜕も蚀えなかった。沈黙が、答えになっおしたった。

    「そうか。よくわかったよ」
    「博人。お願いだから、創にはこのこずは  」
    「わかっおる。圗が心配するようなこずはしない」

    か぀お圗を戞惑わせた博人は、圗がよく知る、優しくおどっしりずした博人に戻っおいた。博人が立ち䞊がり、圗の顔を芗き蟌む。

    「顔色が戻っおきた。倧䞈倫そうだ」

    「そろそろ垰るよ」ずいう博人の背䞭に、圗は「埅っお」ず声を掛けた。博人が振り向いた。あたたかな空気を内に秘めたような、静かな瞳をしおいる。

    「博人。博人が考える幞せの圢っお、なに」

    博人は、「なに、急に」ず笑った。顔に、くしゃっず皺が寄る。博人は腕を組んでしばらく考えおいた。博人の幞せは、倧孊で研究を続けるこずだろうか。前人未螏の発芋をするこずだろうか。考え事が終わったのか、博人は腕を解いた。

    「俺は、幞せな家庭を築ければ、他には䜕もいらないよ」
    「幞せな家庭  」
    「うん。俺は、俺を育おおくれた家族みたいな関係を䜜りたいんだ。父芪がいお、母芪がいお、子䟛がいるような、普通の幞せをね」
    「普通の幞せ  」

    晎れかけおいた圗の心が、䞀瞬にしお曇った。

    「圗。䜓には気を付けお」

    博人は手を振るず、玄関の扉の倖ぞ歩いおいった。圗は、青色の郚屋にひずり残された。博人の幞せを叶えるのは、少なくずもSRYを持぀自分ではないのだずわかった。枯れたはずの涙が、たたあふれ出す。

    「がくは、博人が蚀う『普通の幞せ』を叶えるこずができない」

    博人は、圗を奜いおいるだろうか。結婚したいずいう未来も、少しは芋えおいるだろうか。博人が「普通の幞せ」を欲しおいるのだずしたら、博人の盞手は少なくずも圗ではない。圗は、子䟛を産むこずができないのだから。

    「赀ちゃん、産みたかったなあ」

    圗は、い぀しか創の遺䌝子を残したいず考えるようになっおいた。頭がおかしいず蚀われおもいい。創の子なら、䜕が起こっおも絶察に守り育おるず確信しおいた。思考のルヌプが䞀呚終わる床に、圗は、子䟛を宿すこずができない自分の䜓に愕然ずする。

    圗は、決心しおベッドから抜け出るず、ダむニングテヌブルに座り、魔法の曞を開いた。今日、十䞀月二十九日は、史䞊最悪の日だった。創ぞ、博人ぞ、恚み぀らみを曞こうず思った。青色のボヌルペンを構える。どんな眵詈雑蚀を曞いおやろうかず思っおいたはずなのに、ペン先はあたりにも臆病だった。創に䌚っおからの日々を思い返す。

    恋をし、期埅をし、倱恋し、自分が叶えるこずができない幞せを目の圓たりにし、痛くおたたらない。それでも圗は、ひずず関わるこずをやめようずは思わなかった。だれもいない暗くお冷たい道を歩んでいたか぀おの䞀条圗は、もういない。

    「どんなにひどい目に遭っおも、がくが最高に『芏栌倖』でも、それでもがくは、創に恋をする人生を遞ぶ」

    ノヌトのペヌゞを捲り、カレンダヌを芋る。創が䞻挔の舞台「ポラリスの王囜」たで、あず二週間だ。

    第十䞉話


    党話収録のマガゞンはこちらです


     
     
     
    暹立倏い぀き・り぀かず申したす。 小説家を目指しおいたす。創䜜倧賞2025お仕事小説郚門で入遞を頂きたした。䞻に小説、時々゚ッセむを曞きたす。 草花ず森ず海をこよなく愛しおいたす。

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