
「都合のいい女」をやめた日 第1話「居酒屋で出会った都会の男」
出会いは、友達と飲んでいた居酒屋だった。
金曜日の夜。
ガヤガヤとうるさい店内に、焼き鳥の匂いと、笑い声が混ざっていた。
その時、隣の席に二人組のサラリーマンが座った。
ふと目に入ったのは、黒いスーツ。
シワひとつないジャケットに、細いネクタイ。
背は180センチくらいあって、横顔まで綺麗だった。
流行りの韓国系男子、って言葉がぴったりで。
重たすぎない前髪に、少し低い声。
田舎生まれ、田舎育ちの私には、全部が眩しく見えた。
“うわ、都会の人だ”
そう思った瞬間には、もう目で追っていた。
たぶん、ひとめぼれだった。
一緒にいた友達は、女優みたいに可愛かった。
人懐っこくて、誰とでもすぐ仲良くなれるタイプ。
しかもその日は、ちょっと酔っていた。
「ねぇ、絶対あの人たちお金持ってるじゃん」
そう言って、笑いながら隣の席に話しかけた。
私は「やめなって〜!」って言いながら、
内心ちょっと期待していた。
すると彼らは笑って、
「じゃあ、一緒に飲みます?」
と、自然に席をくっつけてくれた。
そこからは、本当にあっという間だった。
何を話したかは、一つも覚えてない。
仕事の話をしてた気もするし、
恋愛の話で笑った気もする。
でも覚えているのは、
ずっと楽しかったってことだけ。
彼が笑うたび、
私はもっと好きになっていた。
グラスを持つ手も、
店員さんを呼ぶ声も、
たまに見せる横顔も。
全部が、今まで私の周りにいなかったタイプだった。
帰る頃には、
「また会おうよ」って自然に連絡先を交換していた。
あの時はまだ知らなかった。
この出会いが、
何年も私を苦しめることになるなんて。