
第三十五話「やっぱり親子」
私は昔から、
人を観察するのが好きだ。
人は、
嬉しい時ほど、
素の自分が出る。
火の国母さんが来られて、
数日。
私は一つの事実に気付いた。
この事務所には、
会長を愛する人が、
二人いる。
一人は、
もちろん、
りさ子さん。
そしてもう一人は、
火の国母さんである。
朝、
会長は、
いつもの場所でくつろいでいた。
😼✨
母上が見つける。
「可愛かねぇ。」
会長。
右へ一歩。
母上。
一歩近付く。
その瞬間だった。
「お母さん。」
りさ子さんだった。
「会長には会長の距離があるから。」
「分かっとるよ。」
母上は笑う。
「でも可愛かねぇ。」
りさ子さんも、
会長を見る。
「それは私も毎日思っています。」
「私の方が思っとる。」
「私も思っています。」
「私の方がいっぱい思っとる。」
「私は毎日一緒にいます。」
「私は産まれた時から見とる。」
私は思った。
……始まった。
会長は、
静かに二歩だけ離れた。
母上、
二歩近付く。
りさ子さん、
母上を二歩下げる。
母上、
また一歩。
りさ子さん、
また一歩戻す。
その様子を見て、
顧問が笑った。
「なるほど。」
「親子ですね。」
相談役も笑う。
「よく似ています。」
事務局長は、
静かにメモを書いていた。
『会長保護計画』
その文字を見て、
私は吹き出しそうになった。
しばらくして、
母上は、
少し離れた場所で立ち止まった。
「見るだけにしとく。」
りさ子さんは、
安心したように笑う。
「ありがとう。」
会長は、
二人を見つめる。
そして、
その場で静かに目を細めた。
母上は、
嬉しそうに笑った。
「可愛かねぇ。」
りさ子さんも、
小さく笑う。
「ほんとに。」
私は思った。
勝負は、
つかなかった。
けれど、
二人とも、
会長が大好きなのだ。
その気持ちだけは、
十分すぎるほど伝わっていた。
今日の記録には、
こう残しておこう。
人は、
親に似る。
特に、
好きなものを見つけた時ほど。
そして、
優しさも、
少しだけ困ってしまうくらいの愛情も。
親から子へ、
受け継がれていくものなのだろう。
その日の帰り際。
母上は、
事務所のみんなへ、
何度も頭を下げて言った。
「みんな本当にありがとう。」
「また来るけんね。」
その笑顔を見ながら、
私は思った。
この数日で、
事務所には、
また一つ、
優しい思い出が増えた。
🐾😼🔥✨
🐾 モフモフ会長日誌
記入者 顧問
