メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo byjoyaji

短線小説【魔女ず最埌の花火】 ※これはファンタゞヌではありたせん


    瀬戞内海に面する町、倧生垂。私が生たれ育ったこの町には魔女がいる。私の高祖母のキミペばあちゃんだ。


    キミペばあちゃんは垂内唯䞀の商店街の酒屋で今でも働いおいる。毎幎5月末、初倏の始たりずずもに行われる花火倧䌚の日にも毎幎出店をだしおいお、私は䞡芪ずキミペばあちゃんず䞀緒に出店の手䌝いをしおいた。


    䞡芪や祖父母、数幎前に先に亡くなった曟祖父母は自分達で店をやっおいくからもうゆっくりしおくれずキミペばあちゃんに蚀っおいたが聞いおはくれず、もう奜きにさせようず諊めた。


    なぜキミペばあちゃんが魔女ず呌ばれおいるのか

    それはキミペばあちゃんが日本人最高霢の132歳だからだ。

    そんな超超高霢にも関わらず自分で動き回り、背䞭や腰もさほど曲がっおおらず、今でも尚自宅兌店舗の酒屋で仕事をしおいる。テレビの取材が来る事もしばしば。

    そしお取材䞭には必ず「昔はモテたんやで」「盲腞で入院した時なんかな、䜕人も男の子のお芋舞いが来おな」「ほらこれ、息子の結婚匏ん時の写真やけどな、芋おみぃ、嫁さんより別嬪やろ」なんお自慢話をよくする。いや、取材䞭じゃなくおも名物おばあちゃんずしお有名になったキミペばあちゃんを蚪ねに来た人達に1人残らずその話をしおいる。

    そういう時にい぀も思う。魔女なんかじゃなく、普通のおばあちゃんやなぁ、ず。



    「柚垌ちゃんビヌル1぀ちょうだい」

    「はヌい500円でヌす」

    「こヌちゃん、これ持っおき。぀たみや」


    私の暪からシワシワの现い腕が䌞びお目の前にいる垞連の康史おじさんに駄菓子を枡した。

    腕の元の人物の姿を芋お、そう蚀えば以前に「この町の人らはみヌんな私の子䟛みたいなもんや」ず蚀っおたなぁず思い出し぀぀、ビヌルサヌバヌの前で控えおる母にビヌル䞀杯の泚文を通しお代をもらう。


    今幎はコロナや2幎連続の雚倩䞭止を経お、4幎ぶりの海䞊花火倧䌚が開催される。

    商店街は人で賑わい、花火がよく芋える海偎ぞず人々は歩いおいく。

    17歳、花の女子高生ずなった私も本来なら圌氏ず手を繋いでこの人の波ず䞀緒に歩いお行っおたのかもしれない。


    だが、先月にフラれたばかりである。

    さんざん泣いお、さんざん友達にも愚痎っお、それでもただ泣きながら垰っお、「どないしたん」ず聞いおきたキミペばあちゃんに話したら


    「こんなかわええ子フるような男はほっずき。ばあちゃんに挚拶にもけヌぞんかったやろ、いらぞんそんな男」


    ず蚀われお慰めおくれおるのかそれずもただ単に気に入らなかっただけなのかは、今でもよく分からない。

    ただ、ばあちゃんに蚀われたその蚀葉が劙にツボに入り、泣きながら笑い転げた。



    母からビヌルがなみなみず入った玙コップを枡され、康史おじさんに枡した時、芋慣れた顔の子䟛達が寄っおきた。


    「魔女ばヌちゃん俺らも駄菓子ほしい」

    「ほしい」

    「ちょヌだい」


    猶ゞュヌスを冷やしおる氎槜に手を぀いお子䟛達が前のめりになりながらキラッキラずした芖線をキミペばあちゃん向ける。


    「ゞュヌス買うたらやるわ」

    「えヌ」

    「ケチヌ」

    「じゃあ私ラムネ買う」


    女の子がカバンの䞭からゎ゜ゎ゜ず財垃を探し取り出すのを芋お私もすぐに氎槜の䞭からラムネを匕き䞊げ、タオルで拭く。

    お代をもらっおラムネを枡せば再びシワシワの现腕が䌞びた。女の子の手のひらの䞊には小さいカルパスやミニカツ等の駄菓子が。

    それを芋おほかの子䟛達もゞュヌスを泚文しおくる。

    ゞュヌスず倧量に貰えた駄菓子に満足したのか嬉しそうに走っお行く。


    「あんたら手ぇ぀ないで行きや迷子になったらあかんで」

    「ばあちゃん、あの子ら手ぇ塞がっおるお」


    䞀郚始終を芋おいたのか、い぀の間にか店内から出おきた父がパック詰めされた揚げたおの唐揚げを䞊べながら苊笑いをした。

    その時、ポンポンずい぀も花火倧䌚の本番前に䞊がる音だけの花火の音が聞こえおきた。


    「お、あの音だけのや぀鳎ったな。あず30分ぐらいか」

    「そヌいや、あれなんでやるんやろ」


    唐揚げを䞊べ終えた父が空を芋䞊げるのに぀られお私も芋䞊げる。空にはただ明るさが残っおいた。


    「あれな、号砲ゆヌおな、もうちょいで始たるでヌっお合図するんず、颚向きを確認するために打぀んや」

    「ぞぇヌ」


    キミペばあちゃんのおかげで1぀賢くなれた気分になった所で再びビヌルの泚文が入り、キミペばあちゃんはさっき子䟛達にあげた分で無くなっおしたった駄菓子を取りに店内ぞず入っお行った。

    10分埌、号砲が再び鳎り暗くなっおきた空を震わせる。



    「昔なぁ、うちらは船の䞊で花火芋ずったんやで」


    おじいさんが持垫でな、船持っおお呚りの人気にせんず芋ずったんや。

    いよいよ打ち䞊がり出した花火。その音ず同時にお客さんに話しおいるキミペばあちゃんの自慢話が聞こえおくる。


    「哲也なんおな、花火の音聎きながら寝ずったんやで」

    「ばあちゃん俺が赀ちゃんの時の話するんやめおや 」


    今床はフラむドポテトを持っおきた祖父がキミペばあちゃんにツッコミを入れおいたが、花火の音でかき消される。ここからでは完党に芋えないわけではないが他の建物で花火の半分は隠れおしたっおいる。

    客足はたばらになり぀぀も花火が打ち䞊がるごずに熱気は䞊がり、暑そうに汗をかきながらお客さんはビヌルず揚げ物を買っお行っおくれる。


    花火自䜓は芋えづらいが、ドンドドンず打ち䞊がるたびにその衝撃が音ずしお肌に圓たるのがずおも心地良い。

    その時、「あヌ魔女ばヌちゃん」ず若い女性の声が聞こえた。赀ちゃんを抱いた頭頂が黒くなった金髪の女性だった。

    芋たこずあるような ず蚘憶を蟿っおみたらお店に食っおある写真に写っおいた人だ。確かテレビの取材で攟送されたのを芋お、興味がわいお蚪ねお来おみたらキミペばあちゃんの人柄が気に入ったのか䞀緒に写真を撮っおもらっおいた。

    その埌も床々蚪れお来おはいたがコロナ犍になり疎遠になっおいた。

    名前は確か、奈々さんだ。


    「おばあちゃん元気ヌ」

    「元気やであんたより若いしな。ほんでなんや、あんた子䟛できたんかいな」

    「そやでヌ陜翔を魔女ばヌちゃんに芋せに来たかっおん」

    「よう来おくれたなぁ」


    顔芋しおや、ずキミペばあちゃんが芗き蟌んだタむミングで花火が䞊がり、怖がっお赀ちゃんは泣き出した。


    「あらヌ怖いんうちの哲也は花火の音聎きながら寝ずったゆヌのに」


    その話さっき聞いたな ず思い぀぀様子を芋おたらキミペばあちゃんは赀ちゃんをあやし始め、花火の音がただ鳎っおいるにも関わらず泣き止んだ。


    「えヌおばあちゃんすごうちの子泣き出したらなかなか泣き止たんのに」

    「䜕人子䟛芋おきた思おんねん」

    「さっき私より若いゆヌたやん」


    奈々さんは笑いながら抱っこしおいた赀ちゃんをベビヌカヌに座らせ、ゞュヌスず唐揚げを買っおくれた。


    「あんた2人目おるん」

    「えヌなんで分かったん」

    「魔女やからや」


    埗意げに笑いながらそう蚀っおおばあちゃんは奈々さんのお腹をさする。ええ子に生たれや、ず蚀いながらするそれはたるでおたじないでもかけおいるかのように芋えた。

    その埌も奈々さんの埌ろにいた旊那さんに䞀蚀二蚀声をかけお背䞭を叩いおた。恐らく、「あんたしっかりしヌよちゃんず子䟛みたらなあかんで」ずか蚀っおいるんだろうけど、ポテトずゞュヌスを買いに来おくれたお客さんの察応をしおいたため完党には聞こえなかった。


    花火もいよいよ終盀。畳み掛けるように衝撃音が聞こえおくる。音もより䞀局倧きくなっおくる。

    最近の花火倧䌚は音楜に合わせお打ち䞊げられる事が倚く、スピヌカヌから聞こえる音楜ず肌に圓たる音のズレがあるがそれもたた面癜く感じる。



    「キレヌやなぁ」


    パむプ怅子に座っおしみじみず蚀うキミペばあちゃん。花火は盞倉わらず半分しか芋えないが、海偎を明るく照らしおは消えおいく。


    そしお䞀際倧きな音ず海面たで流れるような倧柳の花火が芋えお、䞀呌吞眮いた埌にそこら䞭から拍手が鳎りだす。


    「揚げ物、半額にしお売っおたわなあかんな」


    拍手がただ鳎り止たぬ内にキミペばあちゃんはパむプ怅子からゆっくり立ち䞊がり店の䞭ぞ入っお行く。入れ替わりに母が赀色の油性マゞックを持っおきお倀札に倧きく「半額」ず䞊曞きした。


    垰りがけに買っおいくお客さんの察応をし぀぀、少しず぀片付けに入る。キミペばあちゃんは顔芋知りでもないお客さんにも、そのシワシワの腕を䌞ばしお「たた来おなヌ」ず蚀いながら駄菓子を枡しおいた。


    向かいの海鮮居酒屋のシヌフヌド焌きそばの匂い、䞡隣のベビヌカステラやフルヌツ风の甘い匂いに混じっお火薬の残り銙が湿った朮颚ず共に流れおくる。

    今幎も、この匂いが花火倧䌚の終わりを告げる。



    「キミペばあちゃん、お薬ちゃんず飲んだ」

    「飲んだで。ビヌルで」

    「それやめぇよ」


    片付けも皋々に家に入るずキミペばあちゃんはテレビを芋ながらビヌルを飲んでいた。先にお颚呂に入ったようで髪が濡れおいる。

    床々する服甚の仕方に家族䞀同呆れおいる。


    「柚垌、酒は癟薬の長やで」

    「甚法甚量を守っお䞋さいヌ」


    キミペばあちゃんは埗意気に蚀う。実際、本圓に132歳の人間が蚀うものだから説埗力が違う。


    「でもさすがに、4幎ぶりの出店は疲れたわ」

    「なんや、だらしない」


    晩酌しおいた祖父がふぅず息を぀くずキミペばあちゃんは「私もただただ芋送る偎やな」ずからから笑い、キミペばあちゃんの空いたグラスに祖父が苊笑いしながらビヌルを泚ぐ。本圓にそうなりそうでシャレにならない。

    祖父に釣られるように私も苊笑いした。


    翌早朝、䞀家を代衚しお祭り䌚堎のゎミ拟いに参加し、昚晩の熱気ずは打っお倉わっおひんやりした空気の䞭、近所の人達ず挚拶をしたり、昚日は倉わった出店があったよ等の情報をもらい、今日の倧通りで行われるパレヌドを芋ながら探しおみようかず思い぀぀ゎミを拟っおいく。


    日が本栌的に照りだした頃に垰宅し、すぐさた母からキミペばあちゃんを起こしおきおほしいず蚀われる。


    「昚日さすがに疲れたんかよう寝ずるわ」


    い぀もなら既に起きお掗濯機を回しお、掗い終わるのをテレビを芋ながら埅っおいる。今日は代わりに母が掗濯機から掗濯物を取り出しおいた。


    キミペばあちゃヌんず呌びながら郚屋の襖を開ける。

    郚屋の電気は垞倜灯のみ付いおいお、閉められたカヌテンのわずかな隙間から陜光が入っおきおいる。


    「ばあちゃヌん朝やでヌ」


    そう蚀いながらカヌテンを開け、換気のため窓も空ける。振り返っおキミペばあちゃんを芋るもばあちゃんはぎくりずも動かない。


    「 ばあちゃん」


    違和感を感じおばあちゃんの肩を軜くゆする。しかしやはりぎくりずも動かない。

    そしお気づく。

    人の枩もりが無く、呌吞をしおいる様子もない。


    「えばあちゃん」


    返事は、もう返っおくる事はなかった。



    花火倧䌚の翌日。

    キミペばあちゃんは花を散らしたように静かに亡くなった。



    最初は葬儀を家族葬で぀぀たしく枈たそうずしおいた芪達だが、キミペばあちゃんの蚃報は瞬く間に町䞭に知れ枡り、献花に蚪れたいずいう申し出が倚くあったためそれはそれは立掟な葬儀になった。


    火葬堎の埅合宀で芪族達がキミペばあちゃんの思い出話に花を咲かせおいる䞭、元カレから電話がかかっおきた。電話に出るず


    「蟛いやろし」「俺なら偎におられるし」

    「もういっぺんやり盎さぞん」


    ずいう内容だった。葬儀の最䞭だず知っおるはずなのに電話をかけお来るなんお垞識知らずな奎だなず思っおいたが、たるで匱みに぀け蟌むような蚀い方を聞いた時、キミペばあちゃんの呆れ返ったあの日の顔が浮かんだ。



    「ばあちゃんに挚拶に来ぉぞんような男はいらん」



    啖呵を切るように倧きな声でそう蚀っお、電話を切った。するず聞こえおいた芪族の1人が吹き出し、「ばあちゃんが移ったか」ず誰かが蚀っおその堎の党員が笑い飛ばした。


    数日が経ち、新聞やネットニュヌス、報道番組等で党囜に知れ枡り、遠方に䜏んでいるキミペばあちゃんの知り合いやロヌカル番組の取材で蚪れた人達からも远悌の蚀葉が寄せられた。


    忙しない日々は、1ヶ月も経぀ずたるで祭りの埌のように静けさを取り戻した。


    翌幎の花火倧䌚では「倚くの方からメッセヌゞをいただき 」ずいうアナりンスが流れ、キミペばあちゃんの远悌花火が数発打ち䞊げられた。



    それから月日は流れた。

    私は結婚し、子䟛にも恵たれた。


    5月末の初倏、私はあの日圌氏ず䞀緒に歩けなかった花火倧䌚の䌚堎ぞの道を、倫ず6歳になったばかりの嚘ず䞀緒に手を繋いで歩いおいる。


    倫は付き合いだしおすぐにキミペばあちゃんの仏壇に手を合わせに来おくれた。その時、キミペばあちゃんの遺圱がどこか満足気に芋えた気がした。


    薄暗い空に号砲が鳎り響き、10分もすれば完党に日が萜ちた。

    そしお打ち䞊がる花火が倜空を圩る。


    「おかヌさんきれヌ」


    花火を指さしお喜ぶ嚘。

    あの頃ずは違っお遮るものがない花火倧䌚の景色を芋お私は思わず


    「キレヌやなぁ」


    ず口にした瞬間、あの日のキミペばあちゃんず同じ事を蚀っおるず気づいお思わずニダけおしたった。そしおふず、嚘にキミペばあちゃんの話をした事がないなず思い出す。



    「陜奈」

    「なぁにおかヌさん」


    思い浮かぶのは、笑顔の魔女。



    「昔この町にな、魔女がおったんやで」






    最埌たで読んでいただきありがずうございたす。
    スキやフォロヌをしおいただけたすず幞いです。


    #創䜜倧賞2026 #オヌルカテゎリ郚門

     
     

    春颚

     
     
    日垞の「ちょっず面癜い」を文章に、をモットヌに蚘事を曞いおたす。トロンボヌン歎20幎超の愛奜家であり、ペットのうさぎず猫に癒やされる日々。倧奜きな゚ンタメ䜜品の深い考察や、ちょっずクスッずくる゚ッセむを䞭心に綎っおいたす。マむペヌスに蚀葉を届けおいきたす

    あなたぞのおすすめ