介護の中心で、仕事を回す
妻が倒れてから10年──
私の仕事の中心には、
いつも妻の介護がありました。
以前にも、
少し触れていますが、
私は20年以上、
外資系の企業で医療関係の営業をしています。
在宅オフィスの形を取っていて、
普段は自宅から、
客先の病院に直行直帰しています。
出社は月に一度もしていません。
ただ、これは──
妻を在宅介護する上では、
とても重要なことで、
私が妻の緊急時の対応をしたり、
毎朝デイサービスへ送り出せるのも、
この仕事スタイルだからこそ、でした。
会議の大半も、
なるべくリモートで対応するようにしていました。
そして、それは、
顧客の医師や医療関係者に対しても、
同様でした。
移動の時間は、
私には無駄なことであり、
それをいかに削るかが大事でした。
顧客の医師は忙しいので、尚更。
要件を伝える程度なら、
わざわざ会う必要はなく、
メールやリモートの面談でも十分でした。
これまで私が、
介護をしながら働く上で、
一番意識してきたことは、
いかに無駄な時間や仕事を省いて、
妻の介護や家のことに時間を費やせるかでした。
ただ、それが良かったのか、
妻が倒れる前と比較しても、
十分に働けていないのに──
これまでの営業成績は、
決して悪くはありませんでした。
もちろん、
そうでない時もありましたが。
また、大事な顧客には、
妻の介護について、
なるべく包み隠さず話すようにしてきました。
──大事な仕事でも、妻のことで、
いつでもキャンセルできるようにと。
ある大学病院の教授は、
そんな私に、
『お前は、
俺のとこに来てる場合じゃないだろ!』
『ちゃんと使うから、
母ちゃんのところにいろ!』
と、わざわざ営業に行って、
叱られたこともありました。
そんな人の優しさに触れ──
妻が倒れてからは、
厳しい環境の中でも、
人並み以上の結果をこれまで残せた気がします。
私自身は、これまで、
──十分に働けない。
そんな仕事への罪悪感を、
嫌と言うほど感じてきました。
また当然、満足に働けない私に対する、
いろいろな意見も耳にしてきました。
ただ、私の仕事は営業なので、
やはり結果が全てかと思っています。
まして、結果重視の外資でもあり。
10年前の、あの時よりも──
妻の介護度は跳ね上がり、
今年の私は、例年以上に働いた気がしていません。
けれど、営業成績だけは、
なぜか過去最高を記録しています。
今では、すっかり──
私の仕事は、
妻の介護を中心に、
回るようになっていました。

介護の中心で、仕事を回す 【完】
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