見出し画像

お気に入りの傘をなくした【子供の頃の記憶】

梅雨の時期が嫌いだった。
髪の毛もじゃもじゃになるし、
長靴履くのめんどくさいし、
傘は小さくて
ランドセルが濡れるか
私が濡れるかのどっちか。

しかも何か知らないキャラクター
がついていて黄色も好きじゃないし
テンションが上がらない。

しばらくして、
新しく傘を買ってもらえることになった。
家族と百貨店に出かけた。
何本もある傘と睨めっこして
子供ながらに吟味して選んだのは、
チェック模様の傘。
赤と茶色と白色が少し入っている。
決め手は持ち手が木目で他のより
濃いめの茶色な所が気に入った。
初めて自分で選んだ傘だ。

学校に持っていくモノには
名前を書く決まりがあった。
親から保護シートを剥がしてから
名前を書いておくように言われた。
私はまだ字が上手に書けないから
サインペンで書いて失敗したら
せっかくの傘が台無しになってしまう。
まだ持ち手の保護シートを
剥がすのがもったいなくて、
こっそりシートの上から名前を書いた。

梅雨の時期は憂鬱だったけど、
この傘を使いたくて
雨の日が楽しみになった。


雨の日、学校に新しい傘で登校した。
少しサイズが大きくなったから
ランドセルも雨に濡れない。
赤のチェックもいい感じ。
持ち手に書いた名前は
雨で滲んでしまったけど、
また書けば良い。
これからの雨の日が楽しみになった。

掃除の当番を終えて傘立てに行くと
自分の傘がなくなっていた。
代わりに似たようなチェックの傘が残っていた。

私は先生に
「傘がありません」
と伝えた。

「1本残ってるけど、これじゃないの?」

私は首を左右に振った。

先生が「本当に?よく見てみたら?」
先生が傘を広げてみると
自分のではないのが明らかだった。
赤と緑と白のチェックだし、
持ち手の部分は木だけど色が薄い。
それと、傘の枝が1本折れている。

誰かが間違えちゃったのかな。
また雨の日になったら戻ってくるかも。
そう期待して、
その日は傘をささず自宅に帰った。

また雨の日、私の傘が戻ってきていた。
でも、持ち手のシートが剥がされて
違う名前が書かれていた。

もう私の傘では無くなったのだと悟った。
ちゃんと名前を書かなかった私が悪い。

相変わらず残されたままのチェックの傘。
先生が帰りの会で、
「ずっと残っている傘があります。
忘れた人は今月中に持ち帰ってください。
来月になっても残っていたら
捨てますからね」
と言っていた。

最終日になっても持ち主は現れなかった。
先生に、「この傘あなたのじゃないの?」
と言われたけど、
私は首を横に振った。
翌日からその傘は姿を消した。

新しい傘を失くして親に怒られるくらいなら
貰っておけば良かったのかもしれない。
残された傘も、私に使ってもらえたら
喜んでくれたのだろうか。

雨の日になるとたまに思い出す
子供の頃のお気に入りの傘の記憶。

先生に状況説明ができなかった。
だから、思ったことは不器用でも
いいから言葉にしよう。

ちゃんと名前を書かなかった自分のせい。
今度からは持ち物に名前を書こう。

そんな経験があったから
今の自分がいる。

あの頃の自分に言いたい。
最近使うのはコンビニのビニール傘だけど
なくさないように目印をつけているよ。

いいなと思ったら応援しよう!