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Photo by8links

【毎週ショートショートnote】合戦バー|ショートショート



       その店は、路地裏のさらに裏、地図にも載っていないくせに、人が吸い寄せられるように集める“不思議なバー”だった。看板には筆文字で「合戦バー」。戦好きのオタクがつけたような名前だが、扉の奥の雰囲気は妙に落ち着いていた。

     カウンターに座ると、店主が低い声で言った。

    「今日はどの陣営につきます?」

     どうやらここでは、客同士がテーマに沿った“合戦”をするらしい。
     でも武器なんて持ち込めないから安心してると、店主が胸元から小さな銀色のものを取り出した。

     ――デリンジャー。
     ただし銃口からは、光しか出ないらしい。

     ルールは簡単。
     “忘れたいもの”に向けてこの光を放つと、その記憶が冥王星くらい遠くへ飛んでいく。
     完全には消えないが、届かない距離まで後退する。

     私はデリンジャーを握った。予想より軽い。
     今日の対戦相手は、静かに笑うスーツの男。
     店主が合図すると、男は真っ先に光を撃った。

    「上司の理不尽!」
     光が私の肩をかすめ、壁にぶつかってはじけ飛ぶ。

     なんだこれ、と笑いそうになる。
     でも、私も撃つ番がきた。

    「自分を責めすぎる癖!」
     光はまっすぐ男の胸元に跳ね、冥王星の空へ飛んでいった。

     撃つたびに、胸の奥が少しだけ軽くなる。
     戦なのに、どこか救われていく。
     不思議だ。
     このバーが人を集める理由が、分かってきた気がする。

     数発撃ち合ったあと、店主が静かに鐘を鳴らした。
    「本日の合戦、引き分けです」

     引き分け。
     でも、私は勝った気がしていた。

     だって、さっきまで胸のど真ん中を占領していた重たい気持ちが、
     今は冥王星の向こう側で、ちっちゃく丸まって眠っているみたいだから。


    了

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    忘れたいものに撃つ光の銃


    *下記企画に参加させて頂きました*


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    鈴蘭

     
     
    心身の不調と付き合いながら、日々の気づきや心の動きを文章にしています。 ショートショートやエッセイ、詩などを発信中。 アフィリエイトや有料記事には抵抗がありましたが、自分のペースで少しずつ挑戦しています🍀 AIすず日記📖✐☡

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