
【シロクマ文芸部】シャボン玉|エッセイ
タイトル:シャボン玉の行方
シャボン玉が、ふわりと空に浮かぶ。
風に乗って、どこへ行くのか分からないまま、
ゆっくりと遠ざかっていく。
子どもの頃、あの光景をただ見上げていた。
何も考えずに、
ただ、きれいだなと思っていた。
公園にはチューリップが咲いていて、
赤や黄色の色が、やけに鮮やかだった。
ブランコに乗って、
少し高くまでこいでみる。
空に近づいた気がして、
それだけで嬉しかった。
あの頃は、時間の流れも、
ずっとゆっくりだったように思う。
戻れないと分かっているのに、
ふとした瞬間に思い出す。
シャボン玉みたいに、
軽くて、つかめない時間。
それでも、ちゃんとそこにあった記憶。
今、同じように空を見上げても、
あのときのままではいられない。
でもきっと、あの頃の自分は、
まだどこかに浮かんでいる。
割れずに、
遠くまで届いていくみたいに。
シャボン玉の行方は分からない。
けれど、あの景色だけは、
今も胸の中で、やさしく揺れている。
了

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