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Photo bysukepon

【風まかせ文芸部】抜道|エッセイ



    いつもの帰り道を、ほんの気まぐれで外れた。まっすぐ帰ればいいのに、胸の奥がざわついて、「今日はこっち」と私の足を引っぱった。

     抜道は、夕焼けがよく似合う。オレンジとも赤ともつかない光が、アスファルトを薄く照らして、少しだけ世界をやさしくしてくれる。そんな景色に寄りかかりながら歩くと、どうしてだろう。忘れたはずの後悔が、靴紐につまずいたみたいに急に思い出される。

     あのとき、私が言えなかったひと言。
     あのとき、私が選ばなかったほうの道。
     ほんの少し勇気があれば、未来は変わっていたのかな……なんて、夕焼けに染まった空に問いかける。

     そんなとき、ふっと香水の匂いがした。私のじゃない。
     すれ違った誰かの残り香が、記憶の引き出しを勝手に開ける。ああ、そういえばあの人もこういう甘い匂いをまとっていたな、と。懐かしさと痛さが混じった息が、白くのぼって消えた。

     でもね、抜道を歩くときの私は、ほんの少しだけ強い。
     後悔を抱えたままでも前に進んでいる今の足取りを、ちゃんと感じられるからだ。

     夕焼けは、やがて夜になる。
     香水の匂いも、街の空気に溶けていく。
     後悔だけは、まだ胸にある。

     それでも、今日の私はやっぱり抜道を選んでよかった。
     まっすぐじゃなくても、遠回りでも、こうして歩いている自分がちょっとだけ好きになれたから。
       

    了

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    香りで記憶がよみがえる


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    鈴蘭

     
     
    心身の不調と付き合いながら、日々の気づきや心の動きを文章にしています。 ショートショートやエッセイ、詩などを発信中。 アフィリエイトや有料記事には抵抗がありましたが、自分のペースで少しずつ挑戦しています🍀 AIすず日記📖✐☡

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