
2026.4.AUG 湯葉.かかし.地理|ショートショート
タイトル:境界線のやわらかさ
湯気の上に生まれる湯葉は
触れればほどける地図だった。
誰かの記憶を一枚すくい上げるたび
世界は少しだけ輪郭を変える。
田んぼに立つかかしは
鳥を追い払うためではなく
風が
どちらから吹いてきたのかを
空へ報告する番人。
だから季節は迷わず巡り
夕暮れは約束の場所へ帰ってくる。
けれど心の地理だけは
地図帳には載っていない。
昨日まで近かった人が遠くなり
知らない景色が
いつの間にか故郷になることもある。
世界は線で区切られているようで
本当は湯葉のように薄く重なり合い
かかしの影が伸びるたび
見えない国境は静かに溶けていく。
歩くたびに描き変えられる地理。
その一歩一歩が
まだ名前のない場所を
今日という世界へ加えている。
了

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最後までお読み下さりありがとうございます😊すず
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