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持ち物は、少し先の自分を映している

    業平部長

    持ち物に対して「見かたは変わりますか?」


    最近、鞄や持ち物を見るのが楽しい。

    若い頃にも好きなものはあった。

    車も好きだった。

    道具も好きだった。

    財布や腕時計にも興味があった。

    でも、今とは少し違う。


    若い頃は、どちらかと言えば「欲しい」が先にあった。

    格好いい。

    珍しい。

    性能が良い。

    人と違う。

    そんな理由で選んでいた気がする。

    もちろん、それはそれで楽しかった。


    ただ、最近は選ぶ基準が変わってきた。

    この鞄は疲れないだろうか。

    この財布は長く使えるだろうか。

    この道具は壊れた時に直せるだろうか。

    そんなことを考えるようになった。


    若い頃の自分が見たら、

    「地味になったな」

    と言うかもしれない。


    でも、自分ではそう思っていない。

    むしろ逆だ。


    面白くなった。


    一つひとつの持ち物に理由ができた。

    なぜ選んだのか。

    なぜ残ったのか。

    なぜ手放さなかったのか。

    そういう物語が増えていった。


    仕事用の鞄もそうだ。

    昔は見た目が先だった。

    今は収納や使い勝手を考える。

    それなのに、気が付けば色や素材にもこだわっている。

    合理性だけでは終わらない。


    財布もそうだ。

    名刺入れもそうだ。

    車もそうだ。


    歳を取るというのは、興味を失うことではないらしい。


    むしろ、

    「何が好きなのか」

    が少しずつ見えてくることなのかもしれない。


    面白いのは、今でも変化していることだ。

    去年好きだったものと、今年好きなものは少し違う。

    今の自分が選ぶものと、五年後の自分が選ぶものもきっと違うだろう。


    昔は変わることを少し怖がっていた。

    趣味が変わる。

    考え方が変わる。

    好きなものが変わる。

    どこか裏切るような気がしていた。


    でも最近は違う。

    変わることは、失うことではない。

    増えていくことだと思うようになった。


    若い頃に好きだったものは、今でも自分の中に残っている。

    その上に、新しい好きが積み重なっているだけだ。


    だから今は少し楽しみでもある。

    十年後の自分は何を持っているんだろう。

    どんな鞄を使っているんだろう。

    どんな車に乗っているんだろう。

    あるいは、今では想像もしないものに夢中になっているのかもしれない。


    未来のことはわからない。

    でも、一つだけわかることがある。


    きっと、その時も今と同じように、

    持ち物を眺めながら、

    「これは悪くないな」

    と笑っている気がする。


    持ち物は、少し先の自分を映している。

    そんな気がしている。


    お粗末。

    #創作大賞2026 #エッセイ部門


     
     
     
    小さな会社の中で大きい体を揺らしながら、中くらいの夢を叶えてみたいと思っている人。 福祉の世界で浮き沈みを経験して、なぜか蘇れた人。 「道は続く、走り抜けよう」を受け継ぎたいと思う人。 介護施設の運営法人で事業部長しているが、色んな意味で綱渡りが続いている人でもある。

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