
「あなたの体重はいくらですか」を書いた理由
# あなたの体重はいくらですか
「現在の体重は89.1キロです」
そう言うと、だいたい二種類の反応が返ってくる。
「そんなに見えないですね」
か、
「痩せた方がいいですよ」
どちらも正しい。
どちらも、少し違う。
体重という数字は、健康診断の項目として存在しているようでいて、実際には人生の履歴書みたいなものだと思う。
残業が続けば増える。
眠れなければ増える。
孤独でも増える。
ストレスでも増える。
逆に、誰かと笑っている時は少し減る。
体重計は、食べたカロリーだけを測っているわけじゃない。
その人が、どんな生活をしているかを測っている。
私はリモートワークでデータ分析の仕事をしている。
一日中、家でパソコンを見ている。
昼はコンビニ。
夜もコンビニ。
冷蔵庫もない。
自炊もしない。
会話しない日もある。
それでも仕事は進む。
社会人としては成立している。
でも、身体だけが少しずつ壊れていく。
人間は、静かに壊れる。
劇的には壊れない。
突然叫び出したりもしない。
ただ、
夜中に甘いものを食べる回数が増えたり、
「今日はもういいか」が増えたり、
Uber Eatsの注文履歴が長くなったりする。
そしてある日、健康診断で数字になる。
89キロ。
でも、その89キロは脂肪だけではない。
疲労。
諦め。
ストレス。
孤独。
逃げ場のなさ。
全部込みの89キロだ。
世の中には「痩せる方法」が溢れている。
糖質制限。
16時間断食。
脂質制限。
ジム。
プロテイン。
GLP-1。
もちろん、どれも間違っていない。
私もリベルサスを飲んだ。
昼飯を抜けば体重が減ることも知っている。
でも、昼飯を抜いた人間は、午後から静かに壊れていく。
集中力が落ちる。
イライラする。
夜に反動で食べる。
数字だけ見れば痩せる。
でも人生全体で見ると、少し負けている感じがする。
だから私は、「痩せる」より先に、
「なぜこんなに食べてしまうのか」を考えたかった。
すると、個人の意思だけの問題ではないことに気づく。
この社会は、太るように設計されている。
大盛り無料。
深夜営業。
24時間コンビニ。
ストレス産業。
長時間労働。
疲れた人間に、
「高カロリーを安く早く大量に」
供給する仕組みだけは異常に発達している。
その一方で、
「自己責任で痩せろ」
とも言われる。
戦場だけ用意されて、
武器は自分で何とかしろと言われている感じがする。
だから私は、自分の体重を書くことにした。
成功者としてではなく、
途中の人間として。
まだ89キロある。
たぶんまた増える日もある。
でも、それを書き残したいと思った。
体重は、単なる数値じゃない。
その人が、
どう働き、
どう疲れ、
どう寂しくて、
どう生きてきたかの記録だからだ。
もしこの記事を読んでいるあなたが、
体重計に乗るたび少し落ち込んでいるなら、
私は聞いてみたい。
あなたの体重はいくらですか。
そして、
その重さの中に、
何が入っていますか。