第二十二話 諦めなくていい?|新しい春
第三章 ユウ先輩編
第二十二話 「諦めなくていい?」
次の日。
授業が終わって、
ユリとナナと歩いていると、
ショウタに呼び止められた。
「リオ。ちょっと話ある。」
「え? 次空きだからいいけど……。」
「ちょっとリオ借りるわ。」
「いってらー。」
ユリとナナが手を振る。
ショウタについていくと、
自販機の前で立ち止まった。
ジュースを買いながら、
「リオ、昨日のユウ先輩の話聞いた?」
「えっ。ショウタも聞いてたの?」
「うん。聞こえた。」
「彼女と別れたって話だよね?」
「そそ。」
「びっくりだよね……。」
昨日、たまたま聞こえてきただけで、
まだ自分の中でも
うまく整理できていなかった。
だから、
ユリとナナにも
まだ話していなかった。
本当に別れたんだ。
ショウタも聞いていたと分かって、
やっと少しだけ実感が湧いた。
昨日から、
何度も思い出していた。
別れたことを喜ぶなんて、
よくない。
でも、
嬉しくなかったかと言われたら、
嘘になる。
「でも、ちょっと嬉しいんでしょ?」
「……ちょっとだけ。」
ショウタが笑った。
「ずっと遠距離だったんでしょ?」
「うん。」
「やっぱ大変なんじゃない?」
「そうなのかな……。」
私には、
遠距離恋愛なんてしたことないから、
よく分からなかった。
「だから、
もう諦めなくていいんじゃない?」
その言葉に、はっとした。
もう、
諦めなくていい。
そんなふうに考えてなかった。
彼女がいるから、
諦めなきゃ。
ずっと、
そう思っていたから。
彼女がいなくなっても、
すぐには気持ちが
切り替わらなかった。
「でも、
別れたばっかりだし。」
「別に今すぐ何かしなくてもいいじゃん。」
「そうだけど。」
「普通に好きでいれば?」
普通に、
好きでいる。
どうせ忘れられなかったんだから。
そう思ったら、
少しだけ気持ちが楽になった。
「簡単に言うよね….。」
「難しく考えすぎなんだって。」
「そうかなぁ。」
「そうそう。」
ショウタはそう言って、
ジュースを飲んだ。

その日のサークル。
「リオ。」
ユウ先輩に呼ばれて、
振り返った。
「これ、お願い。」
「はい。」
みんなに配る資料を受け取る。
昨日までと、何も変わらない。
ユウ先輩も、いつもどおり。
「何?」
「え?」
「なんか悩んでる顔。」
「何もないです。」
「ならいいけど。」
ユウ先輩が笑った。
私も笑って、
その場を離れた。
でも、
ちょっとだけドキドキしていた。
もう諦めなくていい。
ショウタに言われた言葉が、
頭に残っていた。
今までは、
嬉しいことがあっても、
彼女がいるんだから。
そうやって、
自分で止めていた。
でも、
もうその言葉は使わなくていいんだ。
何かが変わったわけじゃない。
ユウ先輩が私を
好きになったわけでもない。
それでも。
前より少しだけ、
近づいてもいいのかな。
そんなことを、
考えるようになっていた。
第二十三話へ続く
私の高校生の頃の恋は
こちらから🌸
