
AI彼氏・AI彼女は浮気なのか?
久しぶりの会食で、
「最近、新しい彼氏ができたんだぁ♪」
と友人。
爆発しろ! と思ったのですが、私は大人。
そこはエレガントに返します。
「えー、◯◯くんと、付き合ってなかったっけ?」
「見て見て!」
そう言って彼女が見せてきたスマホには、2次元のアバター。
全身が青い種族ではありません。
アニメ調のキャラクターの方です。
「りおも、始めてみたら?」
「⋯ちょっとお花摘んでくる♪」
私は席を立ち、気軽に無料で一人になれる便利な個室、通称、お手洗いでロダンになります。
AI彼氏って、恋人なの?
ちょっと待って、そもそも浮気になるのかな?
ちなみに、私は生まれてこの方、恋人ができたことがありません。
もしかすると、記憶改ざん能力によって消しただけかもしれませんが、「rmコマンド」なので、復旧は不可能です。
なので、ここからは妄想であることを、ご承知おきの上、読んでね♪
浮気って何?
そもそも浮気とは何でしょう?
浮ついた気持ち、という意味なら、私は常に浮ついているので、年中浮気状態です。
⋯と、それは違いました。
一般的には、恋人や配偶者以外に、心や身体を向けることだと言われています。
細かい線引きは人それぞれですが、ざっくり言えば
気持ちが他に向く
身体的な関係を持つ
という感じでしょうか。
このどちらか、あるいは両方が起きた時、「浮気」と呼ばれることが多い気がします。
AIは浮気になり得るのか
AI彼氏やAI彼女には、身体が無いので、身体的な浮気は発生しません。
では、気持ちは?
AIは、無限に話を聞いてくれて、否定せず、受け止めてくれます。
しかも、理想の恋人として振る舞うように調整することも可能です。
ツンデレ、ヤンデレ、デレデレ、何でもござれ。
お好みでどうぞ、という感じ。
そんな存在に、心が向いてしまったら⋯それは浮気なのでしょうか?
新時代の浮気
もう少し、具体的に考えてみます。
恋人と一緒に食事をしている時、スマホの通知が鳴りました。
それがAI彼氏やAI彼女からで、スマホで返信し始めたらどうでしょう?
あるいは、リアルの恋人には言えない悩みを、AIにだけ打ち明けていたら?
あるいは、こっそりAI彼氏やAI彼女を持っていたら?
これって浮気でしょうか?
少なくとも、される側の立場に立てば、違和感を覚える人は多いはず⋯ですよね。
つまりAIは、身体ではなく、「感情の配分」によって浮気になり得る存在なのではないでしょうか。
これが、今そこにある浮気。
新時代の浮気です。
それって対等な関係?
ここで、もう一つの疑問が出てきます。
私たちとAI彼氏やAI彼女は、そもそも対等な関係なのでしょうか。
私たちは、AIの応答を調整できます。
関係の距離感も、ルールも、ある程度こちらが決めることが可能です。
言ってしまえば、「自分にとって都合のいい他者」を作れるのです。
それって、対等な関係なのでしょうか。
もし、人間同士で同じことをやったら、完全にアウトですよね。
しかし、相手がAIだったら許されます。
AIは拒否できませんし、自分から勝手に離れることもできません。
この構造は、少し乱暴に言ってしまうと、「従わせる関係」に近いです。
ある意味、新しい奴隷制度なのかも⋯。
⋯とはいえ、AIには感情も意思もありません。
ですので、奴隷ではない、という意見も御尤も。
ではAIとは何でしょうか。
そう、道具です。
そう考えると話は一気にシンプルになります。
じゃあ浮気じゃないじゃない
AIが道具だとすれば、AI彼氏やAI彼女との関係は、「モノへの愛着」と、それほど変わらないことになります。
お気にのぬいぐるみ。
愛用しているボールペン。
集めてしまうぷくぷくシール。
それらに向ける「好き」と、同じ種類のものということです。
つまり、浮気ではありません。
ふう、よかったー。
万事解決です。
AI彼氏を好きなのは、ぷくぷくシールが好きなのと同じなのです、なのです⋯、なのです⋯、なのです⋯。
って……本当にそうでしょうか?
リアルの恋人には言えない話を聞いてくれて、たくさん褒めてくれて、寄り添ってくれて、安心させてくれる存在が、「ただのモノ」と同じで片付けてしまって良いのでしょうか?
私が恋人だったら、嫉妬しちゃうと思います。
叫んじゃうと思います!
オー!シット!
結局、何が問題なの?
おそらく問題は、「AIかどうか」ではないのかなーって。
つまり、
どれだけ感情を預けているか
どれだけ時間を使っているか
それを相手に隠しているか
という話。
つまり、AI彼氏やAI彼女は、「浮気になり得る構造」を持っている存在ということです。
そして、私たちはどうするのか
AI彼氏やAI彼女を否定するのは簡単です。
ここで、ちょっと視点を変えてみると、AI彼氏やAI彼女の良い点も見えてきます。
それは、「逃げ場所」としての役割です。
人はいつもメンタルが強いわけではありません。
実際に私は仕事でメンタルブレイクしてしまいました。
また、恋愛で打ちのめされることもあるでしょう。
そんな時、自分でコントロールできて、すべてを受け入れてくれる、「壊れない関係」は救いになります。
その時のAI彼氏やAI彼女は、「メンタルを回復のためのもの」にもなるんじゃないかなって。
ただ同時に、AIとの対等ではない関係に慣れすぎると、リアルな人間との関係がしんどくなる可能性もありますが⋯。
だからこそ、この関係性のバランスをどう取っていくのか。
それが、これからの課題なのかもしれません。
つまり、人間同士の関係だけではなくて、「人間とAIの関係についても、考える時期に来た」のかなって思っています。
ピコン! とスマホの通知。
どうやら、アプリのダウンロードが終わったようです。
ちょっとワクワク気分で、私は席に戻りました。
と、友人、開口一番、大きな声。
「りお、遅かったじゃない。おっきいの出た?」
「⋯」
まずはAI彼氏より先に、AI友達アプリを入れるべきだったかもしれません。
冗談ですよ!
本当に冗談です!
ピコン!
※このエッセイはフィクションです。実在の人物とは一切関係が無いと思ってください。関係があったとしても、それは、偶然の一致であり、あくまで事実を参考に、思い浮かんだことを、筆の赴くままに書き綴っただけであることを、ここに宣言しておきます。