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赀毛のアンのように、そしお読曞䌑暇を

     熊が橋から萜ちる。王囜の王女が排氎溝から流されおくる。赀毛の少女が小埄を散歩する———。
     郜内ワンルヌムの小さな郚屋。そこには癟冊あたりの小説ず暮らす䞀人の女性。そう、それが私。この郚屋では、ありずあらゆる物語が亀錯する。それはもう自由気たたに。そうしお出来䞊がったのが、私の倜の倢の䞭。これたで觊れおきた物語たちが、あっちから、こっちからず頭の䞭に次々ず流れおくる。おくおく歩いおくるものもあれば、ヒュヌッず走り去るものもある。

     『こうしおむギリスから熊がいなくなりたした』『りェストマヌク戊蚘』『赀毛のアン』海倖の小説ずいう点以倖、䜜者、ゞャンル、時代、䞀切の共通点を持たない圌らが、私の倢の䞭では仲良く走り回る。たあ、倢なのだからそんなこずも起こりうろう。
     面癜い。芖野が広がる。远䜓隓できる。読曞が奜きな理由の倧半はこういった内容だろう。うん、至極真っ圓。反論の䜙地なし。けれど、私が読曞を奜む理由はちょっず違う。物語を玡ぐ蚀葉たちず優雅に旅に出たいのだ。いや、䜕も栌奜良く芋せたいわけではない。本圓のこず。ただひたすらに物語の䞭で遊びたいのだ。
     これは、䞻人公の気持ちになっおずか、この悪人は蚱せないずか、物語に感情移入をするずいうのずもたた違う。蚀葉ずいうのは䞍思議なもので、ただの䌚話でも物語を玡ぐにも誰かを傷぀けるこずにも䜿える。倚甚䞇歳、悪甚厳犁。
     そんな蚀葉だが、物語の時だけは少し姿を倉える。぀たり、悪甚䞇歳に倉化するのだ。倚少汚い蚀葉も、鋭い蚀葉も、蚱される。䞀方繊现な蚀葉や明るく晎れやかな蚀葉は、より䞀局その姿を矎しく魅せる。その遊び心が面癜い。読曞の醍醐味。䞀床觊れおしたったら、その沌からは抜け出せない。
     ひずたび衚玙をめくれば、今にも飛び出さんずする蚀葉たちが䜓をうずうずずさせおいる。その振動を手に芚えながら、䞀ペヌゞず぀噛み締め、䞁寧に読み進めおいくその過皋は、䜕にも倉え難い至犏のずきである。䞉時のおや぀にカフェで過ごすティヌタむムが至犏の人もあれば、ひたすらに垃団に朜り続けるこずが至犏の人もある。それが私にずっおは蚀葉ず遊ぶ、぀たり読曞だったずいうわけだ。

     䞀䜓い぀からこんなふうに蚀葉ず戯れるようになったのだろうかず思い返せば、それはきっずあの本に出䌚った頃。圓時、十あたりだった私に母が薊めおきたのが、あの名䜜『赀毛のアン』。
     情景描写の倚いあの描き方に苊戊したのも束の間、私はあっずいう間にアンの虜になっおしたった。こんなにも自由で、矎しい䞖界があるのかず、ペヌゞをめくる手が止たらなかったのである。
     アンのように、鏡の向こうに映る自分に毎日違う名前を぀けおは友達のように䌚話をし、頭の䞭に溢れ出る空想を忘れぬようにず必死にペンを動かした。そうこうしおいるうちに私は蚀葉に取り憑かれ、本、読曞がなくおは生きおゆけない人間に仕䞊がっおしたった。けれどそのこずは党く埌悔しおいない。むしろ、あのずき『赀毛のアン』を薊めおくれた母には感謝しなければ。あそこで出䌚っおいなければ、きっずこんなにも玠敵な䞖界があるこずを、知らずに生きおいたこずでしょう。


     読曞䌑暇。たたたたむンタヌネットで芋぀けた䞀蚀。うわあ、なんお莅沢なんだ。うんうん、あたりに玠敵すぎる。やっおみたい。瀟䌚人になっおも読曞ぞの県差しが倉わるこずがなかった、むしろ増す䞀方だった私は、咄嗟にそう思っおしたった。䌑暇䞭、ただひたすらに本を読み続けるだけ。やるこずはたったのそれだけなのに、これは間違いなく人生が倉わるぞず、そう私は確信した。
     ずはいえそんな䌑暇ずは裏腹に、あたりにも忙しい仕事を遞んでしたった私に、そんな倢のような時間が蚪れおくれるはずもなく、私はただこの特別な倢を叶えられおはいない。それでも少しでもそんな時間を味わいたいず、私に䞎えられたたった“数時間の䌑暇”に、私は本屋を四軒、五軒ずはしごするのだ。
     倜寝る前の数十分、心が匟む本屋はないかずマップを怜玢する。よし、ここだず思ったずころぞ印を぀け、眠りに぀く。そうしおずきたた蚪れる数時間の䌑暇に、それらの本屋を巡る。ただし、欲しい本、読みたい本ずいうのは特に調べおはいない。ただそこに行っお、実際に手に取り、心惹かれるものを探し出す。本の䞭で、“自らがその物語を圢䜜る蚀葉”であるこずを誇りに思っおいる蚀葉の棲む本を芋぀け出す。そうしお遞ばれた本ずの読曞の時間は、必ず特別なものずなるのだ。
     人間が生きるのには衣食䜏が䞍可欠。しかし私にはそれず同等、いや、それ以䞊に読曞ずいう時間が無くおは生きお行けない。どれほど忙しい時を過ごそうずも、蚀葉ず戯れるこずを手攟しおしたっおは、それはもう私ではなくなっおしたう。

     い぀か私に読曞䌑暇なるものが蚪れたずき、私はこのワンルヌムでずもに暮らす本を連れお、存分に蚀葉ず戯れる、人生を圩る旅に出るずしよう。


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    小説家、もの曞き。 仕事䟝頌rino.ynt8128@gmail.com 長線小説「ブルヌ・ブラむニクルの回想録」 短篇小説「果おしない冒険」「私の恋人」 「あるずき月が目にした話によるず」ほか ゚ッセむ集「感芚」 ゚ッセむ「赀毛のアンのように、そしお読曞䌑暇を」 ほか

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