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小説「無償の犯罪」6/13

    【登場人物】

    ・岩山田誠(いわやまだ まこと)
    ……刑事
    ・鈴木敬二(すずき けいじ)
    ……刑事、岩山田の後輩

    ・林克行(はやし かつゆき)
    ……コンビニ強盗事件の際、近所に住んでいた人物
    ・喜美子(きみこ)
    ……克行の妻
    ・行斗(ゆきと)
    ……克行の息子

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     最後の家族は、アパートに住んでいて、当日留守にしていた林という家族だった。林克行(当時四十歳)林喜美子(当時三十六歳)行斗(当時八歳)の三人家族。十年前は、翌日になってから警察が訪問した。喜美子が対応し、「留守にしていた時間は家族ででかけていた」と話し、帰宅してからも不審者などは見ておらず、「事件があったことも知らなかった」と話した。

     そのすぐあとにアパートは取り壊され、今は八王子に住んでいるようだ。鈴木の運転で向かう。

    「このあたりだな」

     地図を見ながら岩山田が言う。近くのコインパーキングに車を停めて、住宅街を歩いて林の家を探す。アパートの老朽化に伴う取り壊しと同時に、空き家になっていた喜美子の実家に引っ越してきたらしい。

    「ここですね」

     築年数は古そうだが、きれいな外観の家だった。庭もよく手入れがされており、花々が色とりどりに咲いている。花壇というより、庭全体に足の踏み場がないほど花が咲いていた。庭いじりが趣味なのかもしれない。

     チャイムを鳴らすが反応がない。

    「留守ですかね?」

    「少し待ってみるか? 八王子まで来たし」

     玄関の前で二人して腕組みをし、少し傾き始めたじりじりとした西日に耐えていると、中年の女性と若い男性が歩いて来た。

     女性は怪訝な表情で近寄ってくる。

    「あの、うちに何か御用ですか?」

     林喜美子か。少しよれた灰色のTシャツ。脇に汗染みが浮いている。髪を後ろで一つに結っており、くたびれた印象だ。スーツの男二人が腕組みして家の前にいたら恐怖だろうな、と鈴木は少し笑いそうになった。しかし、そんな思いはあっという間に消え去ることになる。

    「こういうものです」

     岩山田が手帳を見せるやいなや、喜美子は大きな声を出した。

    「見つかったんですか! 主人は、どこにいるんですか!」

     明らかに興奮している。

    「どこにいる、とはどういう意味ですか?」

     岩山田が静かに聞いた。

    「あ、違うんですか? はあ、すいません。そうですよね、こんな早いわけがない」

    「何のことでしょう?」

    「実は今、主人の捜索願を警察に出してきたところなんです」

    「ええ!」

     岩山田と鈴木は顔を見合わせた。




    《つづく》→7

     
     
     
    あきや・りんこ。小説家。創作大賞2023別冊文藝春秋賞受賞『ナースの卯月に視えるもの』シリーズ累計14万部突破!新刊『桃井ナースはこころも看ます』7月7日発売!『潜入心理師・月野ゆん』シリーズ『桃井ナース』シリーズ『人生最高ごはん』

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