ファインダー越しの成田の空
カメラとの出会い
カメラには、人それぞれ思い入れがあると思う。最新機種を次々と買い替える人もいれば、一台のカメラを長く使い続ける人もいる。私がカメラを手に取ったのは、小学5年生か6年生の頃。きっかけをくれたのは、小学校3年の頃に出会った一人の友人だった。 彼は、親から譲り受けたという古いデジタル一眼レフ(Canon EOS Kiss X5)を、まるで体の一部のように扱っていた。 ある日、彼が見せてくれた写真に、私は言葉を失った。 それは、ありふれた放課後の風景だった。まっすぐに伸びた日ざしが、地面にいくつもの光の矢を突き刺し、その中で彼の自転車が輝いている。 プロのカメラマンが撮る美しい写真なら、SNSやYouTubeでいくらでも見ることができる。けれど、彼の写真は違った。見慣れたはずの景色が、スマートフォンでは決して捉えられない、深みのある「物語」として描き出されていたのだ。 「自分も、こんな風に世界を切り取ってみたい」 その衝動に突き動かされるようにして、私は親に頼み込み、親の友人が使っていたという中古のNikon D7000を手に入れた。
D7000という相棒
今ではミラーレスカメラが主流となり、D7000は決して新しい機種ではない。有効画素数や高感度性能だけを見れば、最新機種やスマートフォンにも及ばないだろう。それでも、このカメラにはスペックでは語れない魅力がある。 ファインダーを覗き込み、重みのあるシャッターボタンに指をかける。1/8000秒という一瞬を刻む機構が、ミラーを力強く跳ね上げる。指先に伝わる確かな振動と、鼓膜を震わせる「カシャッ」という硬質な音。 その瞬間、私はただ記録しているのではなく、この世界の一場面を自らの手で切り取る表現者=「アーティスト(アーティストっていうと、なんだかプロっぽい感じがして、響きが好き)」になれる気がするのだ。設定に悩み、不自由さを楽しみながら一枚を紡ぎ出す。その手間こそが、私にとっての「写真を撮る」という儀式だった。それこそが、このカメラの魅力だ。
そんなD7000を持って、自転車に乗り、風景や飛行機の撮影によく出かける。
成田・さくらの丘へ。初の飛行機撮影
中でも特に印象に残っている、成田空港近くにあるさくらの丘での撮影について、ここに書こうと思う。
スマホ/カメラ問わず、飛行機撮影が好きな人なら一度は訪れたことがある場所かもしれない。成田空港の滑走路の近くに位置し、離着陸する航空機を間近で見ることができる。私が訪れた日も、とにかく多くの人がカメラを構えていた。大型の望遠レンズを装着した本格的な航空写真家、家族連れ、スマートフォンを構える海外の人(おそらく旅行客)。さまざまな人が同じ空を、飛行機を見ていた。
その日は雲が少なく、青空が広がっていた。
風は穏やかで、カメラを三脚につけ、芝生に座る。すると、遠くから飛行機のエンジン音が聞こえてくる。
この待ち時間というのは不思議なもので、飛行機撮影の楽しさの半分はこの時間にある気がする。いつ来るかわかっていても、わからなくても、実際に機体が現れる瞬間には緊張感、そしてわくわくがある。(私はこの待ち時間が好きだ)
エンジン音が近づき、やがて滑走路の向こうに機体が見えた。
機体がゆっくりと移動し、やがて加速を始める。
エンジン音が大きくなる。
周囲のカメラマンたちが一斉にレンズを向ける。
私にとって、この時が初めての飛行機撮影だった。いつ機体が現れるのか、どのタイミングでシャッターを切ればいいのかも分からず、ただ周囲の人たちの動きに合わせて、必死にファインダー越しに機体を追いかけた。 飛行機は猛烈な速度を上げ、機首を持ち上げる。 その瞬間だった。 無我夢中でシャッターを切った。シャッター音が響く。
視界の中で機体が地面から離れ、空へ向かっていく。
ほんの数秒の出来事だったが、その時間は不思議と長く感じられた。
撮影後は、液晶モニターで写真を確認する。
青空を背景に上昇していく飛行機。
機体に反射する光。
思わず笑みがこぼれた。
この時撮った写真はもちろん、プロが撮るような完成度の高い航空写真ではない。ただの中学生が撮った写真だからかもしれないが、おそらく構図にも改善点はあるだろうし、もっと高性能なカメラなら解像感も高かったかもしれない。
それでも、その一枚には確かに自分が見た景色が写っていた。
写真がのこしてくれるもの
写真というものは不思議だ。
ただの記録であるはずなのに、見返すたびにその日の空気や匂い、音まで思い出させてくれる。
あの日の風。
遠くから聞こえるエンジン音。
シャッターを切った瞬間の高揚感。
それらが写真の中に閉じ込められていて、写真を見るたびに「撮る」という体験そのものを思い出させてくれる。
私はこれまで多くの写真をD7000で撮影してきた。
街並み、夕焼け、鉄道、食べ物、そして飛行機。
どの写真にも共通しているのは、その瞬間に感じた感情が残っていることだ。
カメラは単なる機械ではない。
思い出を残す道具であり、感動を記録する相棒でもある。
成田のさくらの丘で見上げた飛行機は、今も世界のどこかを飛んでいるだろう。
最高の1台
私の手元には、その一瞬を切り取った写真が残っている。
それを見るたびに思う。
最新機種である必要はない。
高価な機材である必要もない。
自分が残したいと思った瞬間を写せるなら、そのカメラは自分にとって最高の一台なのだ。
だから私はこれからもD7000を持って空を見上げる。
飛び立つ飛行機を追いながら、新しい思い出を写真に残していきたい。
ギャラリー
※この時に撮影した写真を下に掲載しました。
みなさんにも、この景色や空気、温度、そして飛行機のエンジン音まで、私が感じたものが少しでも伝われば嬉しいです。



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私のスマホ。。。という記事でもある通り、スマートフォンが壊れているので、このノートを書くためにもそちらの修理にも使わせて頂こうと思います。