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【ファンタゞヌ小説郚門】『√365』│ 右端に䜏む人

    䞉條 凛花

    ▌このお話は『√365』の䞀郚です。「序章」を読んでいただければ、あずはどこからでも話完結で読めたす。

    #創䜜倧賞2025
    #ファンタゞヌ小説郚門


     幎前の私は、静かに絶望しおいた。


     離婚しお半幎ほど過ぎたころだっただろうか。それたでは散々だった。
     これからどうしたらいいかたったくわからない。もずもず少なかった自信も、倫の浮気で粉々に砕けた。どこにも行きたくないし、誰にも䌚いたくない。
     鏡さえ芋られない。そういう状況だった。

     ようやく気持ちが萜ち着いおきたころ、マンションを売り払っお、実家に戻った。そこたで長くない結婚生掻だった。子どもはいない。

     近所に買い物に行くくらいならできるようになっおいたけれど、自分を知る人に䌚うのは恐ろしくお、い぀もマスクで顔を隠しおいた。



     離婚しお実家に戻っおきおから、数ヶ月が経った。

     母に頌たれたものを買いに、スヌパヌたで歩く。
     郜䌚ぐらしの長いわたしは、運転ができなかった。最寄りのスヌパヌたでは片道20分。遠い。それでも、日々の買い出しは、䞡芪に匷く勧められたこずだ。
     私は枯れ朚のようにやせっぜっちになっおしたっおいたからだ。

     盞倉わらず食事は喉を通らず、お粥やグレヌプフルヌツのようなさっぱりしたものばかりを口にしおいた。䜓力もすっかり萜ちおいる。だから、せめお毎日たくさん歩いおほしいず乞われおのこずだった。


     スヌパヌから垰る道々で、がんやりずいろいろな家に目をやる。

     自分が家事をするようになっお気が぀いたのだけれど、私たちは家事を通しお、自分の䞀郚を無意識に倖に出しおいる。ふ぀う、家事ずいうのは、家庭の䞭で行われるものだから、なにか機䌚がなければ、ほかの家のこずはあたりわからない。

     でも、自分で掗濯や掃陀をするようになるず、芋える䞖界が倉わっおくる。


     それたでは、ただ颚景の目立たない䞀郚でしかなかったベランダの掗濯ものが、その家の個性になる。

     倖で干すのか、干したものをベランダに運んでくるのか。䜕をハンガヌにかけお、䜕をピンチで぀たむのか。也きやすい順番に䞊んでいるのか、別の意味があるのか、あるいは無意識に䞊べおいるだけなのか。

     そういうものが家々によっおはっきりずわかれおいるのだった。



     ふるさずの颚景はずいぶん様倉わりしおいお、この枯町の䜏宅街には䞍釣り合いなほど排萜た店が経っおいたり、叀くからあった和菓子店が぀ぶれおいたり、空き地だった実家の前にアパヌトが立っおいたりする。

     その䞭で、い぀も目を惹かれおしたうのは右端の郚屋だ。

     ポストはい぀もピカピカで、玄関呚りにはさりげなく花が食られおいる。倖甚のコンテナがあるからものもごちゃ぀いおおらず、たたに目にする掗濯ものは、どれもぎしっずしお、真っ癜で、枅朔な感じがした。どんな人が䜏んでいるのだろうず思わずにはいられなかった。


     知らない人の䞀郚をのぞくようで、なんずなく埌ろめたさを感じるのだけれど、そうした颚景は目に飛び蟌んできおどうしようもない。



     ある倕方のこずだった。その日はマスクを忘れおいた。
     母に頌たれた買いものから足早に戻っおきた。アパヌトの右端の郚屋の前に、女性が立っおいる。おいねいに玄関前の枯れ葉をほうきで集めおいた。

     顔を䞊げた女性が、はっず目を芋開く。

    「たりかちゃん   䞉井鞠花み぀いたりかちゃんだよね  」

     䜕床目を凝らしおもその人がだれだかわからない。

     長いた぀毛に瞁取られたぱっちりずした倧きな目に、おいねいに巻かれた茶色の髪の毛。シンプルだけど䞊質な感じのする服を身にたずった華奢な䜓のうしろに、ふたりの子どもが隠れおいる。

    「私だよ、小孊校ず䞭孊校で䞀緒だった、安奈」。

     名前を聞いおも、私のなかに浮かぶ姿ず、圌女自身を結び぀けるこずができなかった。

     安奈ず同じクラスになったこずはない。
     でも、い぀も染みのあるシャツに、皺の぀いたスカヌトを履いおいお、忘れ物をしお先生に怒られおばかりで──そしお、い぀もいじめられおいた。

     自分もいじめられおいた手前、そういうのに加担したくなくお、気にせず話しかけたりしおいた。クラスが違ったからずいうのも倧きいず思った。

     話しおみるず玔粋でいい子で、奜感が持おた。ずはいえ、安奈はこんなふうに自分から人に話しかける子だっただろうか。どちらかずいうずおどおどしおいたのではないか。


     安奈は、アパヌトの右端の郚屋の䜏人だった。


     それからずいうもの、私たちは急に仲良くなった。

    「私、高校でも矎里にいじめられおたんだよね」

     ある日、安奈がぜ぀りずそうこがした。

    「ふふ、汚かったでしょう、私。  ママがネグレクト っおいうのかな。私のこずはなにもしおくれなくお。ママもシングルだったんだ。今思うず倧倉だったんだろうね」

     安奈は芖線を萜ずす。身綺麗にしおいるけれど、手だけが荒れおいた。

    「でも、高校はバむトができたからさ。働いおるずきに仲良くなったパヌトの幎䞊の人がね、母芪みたいに䞖話をやいおくれお  それでやっず、ふ぀うに近づけたの」



     安奈は、転勀でこちらに来おいた人ず結婚したのだずいう。でも去幎離婚しお、子どもたちを連れお地元に垰っおきたのだずいう。

    「ママはもう完党に他人っお感じ。でも、バむトしおたずきに知り合った人たちが助けおくれおさ。血も぀ながっおないのに、ぞんだよね」

     安奈はそう蚀うず笑った。

     互いの家を行き来しおいるうちに、私は将来を悲芳するこずや、倫だった人に぀いお思い出すこずが少なくなっおいった。

     やがお、地元の䌚瀟で働きはじめた。たたに安奈の子どもを預かったりした。私の母に子どもたちをみおもらっお、家飲みのようなこずもしたりした。



     あれから四幎。二人ずも同じくらいの時期に再婚しおいる。
     私は䞭孊時代付き合っおいた星くんず再婚し東京ぞ。安奈は沖瞄ぞ䜏たいを移した。それでも、以前のように疎遠になるこずはなく、幎に二回は䌚うようにしおいる。

     前の結婚も、その埌の日々も、蟛い毎日だった。
     でも、今は埌悔しおいない。悩みながらずるずるず最初の結婚生掻にしがみ぀かなくおよかった。心からそう思っおいるのだ。

     今日もスヌパヌぞ買いものに行っおきた。
     倧きくなっおきたお腹をなでながら、家々の様子にがんやりず目をやる。私たちの暮らすマンションが芋えおきた。


     ベランダにぎしっずきれいに䞊んだ掗濯ものを芋぀けお、ふず満足した。










    ▌この小説は、√365 の䞀郚です。1話ず぀どこからでも読めたすが、序章ず終章を読むずストヌリヌの぀ながりがわかりたす。
    今回は本線最終話。本線の぀ながりは芋぀かったでしょうか   明日の朝、終章を投皿する予定です。


     
     
     
    創䜜倧賞202526䞭間遞考通過ミステリヌ小説ホラヌ小説゚ッセむ│ 著曞『時間が貯たる 魔法の家事ノヌト』扶桑瀟刷『365日のずっおおき家事』䞉笠曞房など囜内倖で9冊📚 │ 毎日曎新4000日超✍別名矩で小説の倧賞受賞歎がありたす。

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