帰りたくなる夏--------------------❅すいか /2min❅
日陰の空って、ブルーグレーというか、どこかしんとした静けさがある。
遠い遠い、狭く切り取られた夏の、かき氷の青蜜みたいな空を見ているうちに、だんだんとまどろんでいった。
・・・❅・・・
子どものころ、夏休みにしていたことが、断片的にしか思い出せない。
そんな中で、鮮やかな記憶のひとつが、西瓜をたべたこと。
それは、ばっちゃの畑で採れたものだ。
夏になると伯父が、ばっちゃから預かった西瓜やメロンやとうもろこしやらをごろごろ運んできてくれる。
あのころの私が好きなのはメロンだけだった。
しゃくしゃくとさっぱりした西瓜は、好きになれなかった。手や口のまわりのべたつきというだけでもマイナスなのに、口のなかで種をさぐって、吐き出さなければならない。
もうひと手間かかること。
それが苦手だったのだと思う。
幼いころ、すいかの種を飲み込んでしまったことがある。
すると横にいた祖父が、笑いながら「あーあ、おなかからすいかが生えてくるべ」と言った。ぞっとした。身体を芽が突き破って出てくるのだと思って、何も知らなかった私はほんとうに怖くて。
そういうちょっとした悪戯の記憶も残っているのかも、なんて。
おやつ代わりに果物を食べたあと、畳の上に寝そべって、吹き抜けの向こうの狭い青空を眺める。
けだるい昼寝から起きてすいかを食べて、熱いほうじ茶を飲む。もうねぶた囃子の練習も聞こえなくって、ごくごくたまに、ちりんちりんアイスのおじさんが近づいてくる鈴の音が。
退屈だけどたまに帰りたくなる、夏の風景。
いま、すいかを食べたなら、あの夏にひとときでも帰れるだろうか? 勉強したり遊んだりしているだけで、待っていたらきんきんに冷えたそうめんが出てきて、ぼんやりしていたらだれかが呼びにきてくれて、ひまで、ひまで、退屈で。
そういう夏に。
#ビンゴエッセイ
#なんのはなしですか
#なんのはなしです夏
▼8月はこのキーワードの中からエッセイを書いてみます。
▼エッセイの設計図・発想法をまとめました。

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