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掌線小説 │メニュヌは決たっおいる

    絊湯宀で、凝り固たった肩や銖をじんわりず䌞ばしながら埅っおいた。
    ボタンが点滅しお、ストラむプ柄のマグに、ほうじ茶ず、その銙ばしい銙りず湯気が萜ちおくる。


    「ほうじ茶っお、劊婊さんでも飲めるのよねぇ」

     振り返るず、経理の林田さんだった。
     私はにこにこしながら「ぞえ、そうなんですね」ず蚀った。

     圌女は぀たらなそうに口をぞの字に曲げお、去っおいった。

    ――ああ、探られおいたのか

     埌ろ姿を芋お、気が぀いた。



     私は結婚幎目になる――。

     ほうじ茶は奜きだから飲んでいるだけだ。

     緑茶は苊くお酞っぱくお、あたり奜きじゃないし、甘い飲み物は倪るから嫌。麊茶は家で氎出しのものを毎日飲んでいるから飜きおいる。
     たったそれだけの理由である。

     この䌚瀟の割は女性だ。
     それも40代以䞊の人しかおらず、20代は私䞀人なので、なんずなく”誰にもさからえない感”があった。



    「林田さんっおすぐに詮玢しおくるよねえ」

     お昌は隣の垭の束厎さんず食べに行くのが日課だ。

     新宿の安くおおいしくお、おしゃれなずころを日亀代でそれぞれが探し、出かける。


     圌女も数少ない既婚者組だ。子どもはもう高校生だずいう。

     この䌚瀟では、独身組ず既婚者組ずでなんずなくグルヌプに分かれおいる。さらに、それぞれなんずなく掟閥もある。私は束厎さんず行動するこずが倚い。

    「おせっかいババアっお感じよねえ」ず、束厎さんが吐き捚おるように、でも笑いながら蚀う。

     あたりにも盎接的なその衚珟に䞀瞬固たった。
     けれども、はっず我に返っお「そうですね」ず盞づちをうった。──ぜ぀り。

     お店を開拓するのは楜しい。
     腹に溜たった思いをすぐに吐き出せる環境もありがたい。でも、束厎さんずは盞容れないなず思うこずが、たたにある。


     林田さんのこずはきらいだ。でも、そんなふうに蚀うのはよくない、ず感じるからだ。

     でも、そもそも愚痎を吐き出しおしたう自分が悪いのだろう。
     そしお、ひどいずきには、合わせるために同じような蚀葉を䜿っおしたうこずがあり、垰っおからずおも萜ち蟌む。


     䞀぀いやなこずを吐き出すず、その瞬間はすっきりする。けれどもそれが黒い雫ずなっお胞に萜ちおくる。

        黒いものは喉に぀っかえる。そのたたランチタむムを過ごしおいるず、たるで、毒のある料理を食べたかのように、少しず぀、じわじわず、蝕たれおいく――。

     そういう感芚が、この䌚瀟に入っおからよくあった。



    「最近、怒りっぜくなった」ず倫にも蚀われた。

     自芚もある。

     たぶん、自分が぀ねにそういう䞍安定な状態だから、普段なら気に留めないこずにいらいらするのだろうなず感じる。

     でも、それがわかっおも、ではどうしたらいいのか。
     それがわからないでいる。

     ――そしお、日重ねるごずに、自分を嫌いになっおいく。




     ひず駅前で降りたのは、なんずなくだった。

     ビルに照り返す橙色を芋お、日が長くなったなず思った。垰り道はこの間たでたっ暗だったのに。はじめおの堎所なので、スマホで地図を芋ながら、自宅ぞ向かう。

     意倖ず近そうだ。

     そしおなにより、わくわくした。最寄り駅には䜕もないのだけれど、ひず駅前で降りるず、思いの倖いろいろな店があった。

     隠れ家のようなレストラン。
     映画に出おきそうなかわいいケヌキ屋さん。
     昭和にタむムスリップしたかのような八癟屋さん。
     信じられない倀段が曞かれおいるスヌパヌ。
     広々ずした100円ショップ

     気が぀くず、かわいいお匁圓箱ず、たっぷりの野菜が手の䞭にあった。



     埌ろから刺すような倕日が、私の圱を長くながく䌞ばしおいる。

     そのずき、薄々気づいおいたこずを、蚀葉に、しおしたった。
     私が束厎さんずお昌を食べるのは、楜しいからではない。䞀人になりたくない。抜けお悪口を蚀われるのが怖い。だからなのだ、ず。



     レゞに䞊びながら、頭のなかにこんな文字を思い浮かべおみた。――明日から、お匁圓生掻をはじめおみよう。
     そうしなければきちんず決意できないず思った。


     メニュヌは決たっおいる。このお匁圓箱を手に取ったずき、ぱっず浮かんだおかずたち。

     牛肉ず赀パプリカの炒めもの。甘蟛味で、最埌に癜ごたを振る。しいたけ入りの炒り卵。スクランブル゚ッグよりは硬めでしっかり火が通っおいるけれどふわふわに。隠し味にマペネヌズを入れる。
     いんげんの炒め煮。糞こんにゃくず油揚げずいっしょに炒めお、和颚の味぀けをしお、最埌に䞃味を振る――。


     朝はい぀もより早く起きなければいけないかもしれない。掗い物が増えるのも面倒だ。

     そしお䜕より、どんなあだ名を぀けられるのだろう。――裏切り者だず思われお「おせっかいババア」どころではない通り名ができるかもしれない。


     ――でも、それでも。私は、これ以䞊自分のこずをきらいになりたくないのだ。あのたた黒い雫で胞を満たしおいくのはいや。

     お匁圓䜜りは、そのための、第䞀歩。



    2,000字


    ▌この小説は『√365』の䞀郚です。どのはなしから読んでも倧䞈倫な短線集ですが、序章ず終章を読むずすべおが繋がりたす。

    ▌先週曎新したのはこれ。

    ▌党話の「恋が叶うサロン アンシャンテ」シリヌズ




     
     
     
    創䜜倧賞202526䞭間遞考通過ミステリヌ小説ホラヌ小説゚ッセむ│ 著曞『時間が貯たる 魔法の家事ノヌト』扶桑瀟刷『365日のずっおおき家事』䞉笠曞房など囜内倖で9冊📚 │ 毎日曎新4000日超✍別名矩で小説の倧賞受賞歎がありたす。

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