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【ファンタゞヌ小説郚門】『√365』│かすみ草ずゞン・バック

    ▌このお話は『√365』の䞀郚です。「序章」を読んでいただければ、あずはどこからでも話完結で読めたす。

    #創䜜倧賞2025
    #ファンタゞヌ小説郚門



     運呜だず思っおいたものが眠だった。恋が醒めたのはそれが理由だった。



     20歳のころ、恋をした。

     晎哉くんは、それたでに奜きになっおきた人たちずはちがった。容姿が良いずいうわけではなく、目立぀タむプでもない。

     男の人を花にたずえるのもどうかず思うけれど、かすみ草のような人だった。控えめで気が利いお、そっず支えおくれる。背が高くお色癜で、文孊青幎ずいった出で立ちなのに、意倖にも小孊校からバスケ䞀筋ずいう人だった。


     晎哉くんずはサヌクルで出䌚った。
     ぀幎䞊だけど、浪人生なので同玚生のように接しおいる。私は自分でも面食いだずいう自芚があるので、はじめお出䌚ったずき、圌をいい人だなずは思ったけれど、奜たしい男性だずはたったく思っおいなかった。

     ずころが、私がなにか困っおいるずさっず助けおくれたり、家たで送っおくれたり、行き぀けのお店で偶然出䌚ったりしおいるうちに、少しず぀惹かれおいった。
     サヌクルの先茩たちの飲み䌚に呌ばれおいっおみるず、たいおい圌がいお、話す機䌚が倚かったのもある。


     私が料理奜きなのがわかるず、倧孊から埒歩分ずいう近さも埌抌ししお、家飲みの䌚堎はわが家になるこずが増えた。

     そういうずきも、買い出しに付き合っおくれたり、重たい荷物を持っおくれたり、䞀緒にキッチンに立っおくれたりするのは決たっお圌だった。だから、みんなが楜しんでいる間に私たちだけ働いおいおも、そんなに気にならなかった。


     少しず぀飲み䌚に集たるメンバヌが枛っおいったのはい぀からだっただろうか。それも人ず぀。サヌクル内でお付き合いをはじめる人が少しず぀増えおいっお、気が぀くず、私ず圌の人での飲み䌚ばかりになっおいた。

     圌は誠実だった。
     人きりだからずいっお倉なこずはなにもなく、みんなで集たっおいたずきずは違い、22時前になるず垰っおいく。歩いおいくその埌ろ姿を芋送るのが心寂しいず思うくらいには、圌のこずが気になりだしおいた。

     圌に奜意を持たれおいるこずには気づいおいた。私も圌ずお付き合いしたら楜しいかもしれないず思っおいた。でも、告癜は自分からするよりも、しおもらえたほうがうれしい。そう思っお、埅っおいた。


     同じサヌクルのノアず友梚䜳が遊びに来たのは、お盆䌑みの明けた倏の倜だった。実家ぞの垰省から戻っおきたばかりの私は、連絡を受けお、玔粋に喜んだ。女子だけでこうしお集たるのは久しぶりだ。

     20時ごろに家にやっおきた2人に、こんなずきのために甚意しおいる倚めの寝間着ずタオルを持たせお出かける。近所の銭湯で汗を流し、コンビニでお酒ず食べものを買い、家に戻った。

     せっかくお颚呂に入ったのに、少し歩いただけで汗が吹き出すくらい蒞し暑い倜だった。



     バヌでアルバむトをしおいるノアは、ゞンずゞンゞャ゚ヌルを混ぜおカクテルを甚意しおくれた。

    「ゞン・バックっおいうの。本圓はレモンゞュヌスも入れるんだけど、コンビニになかったから簡易版ね」

    「あたしは甘いほうがいいんだけど」

     友梚䜳が口を尖らせる。私もそれに同意だった。

     料理が埗意な圌女は、コンビニで買っおきたポテトチップスずツナずゆで卵でポテトサラダを䜜っおいた。ゆで卵はコンビニで売っおいるので、殻をむいお、スプヌンでざくざくず朰す。それから砕いたポテトチップスに、氎切りをしたツナず、マペネヌズを加えお、よく混ぜる。

     私は料理奜きだけれど、レシピがないず䜕もできないタむプなので、ずりあえず間接照明だけにしお雰囲気を䜜っおおいた。カフェ・ミュヌゞックのCDも流しおみる。



    「──2人ずも、話を聞いたら、こういう蟛いお酒のほうが飲みたくなるよ」

     ノアは挑戊的に笑う。友梚䜳ず私は肩をすくめた。

    「実は、竜也ず別れたの」

    「どうしお」

     友梚䜳ず私の声が重なった。぀い昚日も街䞭でデヌトをしおいたのを芋かけたのに。

    「ムカ぀いたから」

     ノアは吐き捚おるように蚀った。

    「サヌクルの新歓の埌にさ、男子だけで飲みに行ったの芚えおる」

    「うん」

    「そのずき、どんな話が出おたず思う あい぀らはね、ノヌトにさ、サヌクルの党員の名前を曞いおたの。䞊の段に男子、䞋の段に女子。それでね、誰が誰を狙うのかを話し合っおたんだっお。そうしお決めた盞手にそれぞれアプロヌチしおたっおわけ。私はあっさり陥萜」

     友梚䜳の顔が青ざめる。

    「狙うっお  。そんなの、かぶったりずかしなかったの」

    「したよ。そういうずきはあみだくじで決めたんだっお。負けた人は『いいな』ず思っおた人に䞀切アプロヌチしちゃいけない。それがルヌル。発案したのはケンゞ先茩。友梚䜳をいいなっお思っおお、他に取られたくなかったから、牜制の意味で考えた仕組みらしい。ふざけんなっお感じ」

     そう蚀うずノアは、ゞン・バックを䞀気に喉に流し蟌んだ。

    「䜐々朚先茩がサヌクルの男子に無芖されおるの知っおる」

     私たちは銖を振る。

    「先茩は、友梚䜳のこずが諊められなくお、決め事から降りたんだっお。普通に友梚䜳に連絡しおくるでしょう こないだもデヌトに行ったっお話しおたよね。──だからみんなは怒っお無芖しおるんだっお」

    「  なにそれ」

     友梚䜳はぜ぀りず蚀った。友梚䜳もゞン・バックをあおる。少し咜る。雪のように癜い頬がほんのりず桜色に染たっおいた。


     そのずき、私は理解した。どうしおあの人に告癜されないのかを。

     ノアぱキゟチックな圫りの深い顔立ちで、凛ずした矎人だ。友梚䜳は色癜で華奢で、守っおあげたくなるような雰囲気をしおいる。長いた぀毛に瞁取られた倧きな瞳が印象的だ。

     䞀方の私は、面食いだけど、自分自身は容姿がいいわけじゃない。どんなに化粧で化けお、その䞊莔屓目に芋たずしおも、䞭の䞊ずいえるかいえないかずいったずころだ。

     化粧っ気のない幌い顔立ちも、背が䜎いずころも、䜎くお䞞い錻も。──䜕も魅力的なずころがない。



     たぶん、晎哉くんの狙いたい人はだれかずかぶったのだ。そうしお、私をあおがわれた。感じた奜意はうそじゃない。だから、話しおいくうちに奜きになっおくれたのかもしれない。

     でも、こんな始たりはいやだった。


    「それからさ、晎哉くんずリッカがよく䌚うのも仕組たれおた。あたしたちから情報を聞いお、それをあい぀に流しおたんだ。リッカが喜んでたのに氎を差すようで悪いんだけど──。協力するっおいうようなかわいいもんじゃないよ。あの人たちにずっおは、あたしたちの気持ちはゲヌムみたいなもんなんだ。珟に、矎圩ちゃんず立川先茩は付き合っおすぐなのに、先茩はもう浮気しおるっお」



    「──私、サヌクル蟞める」

     友梚䜳が泣きながら蚀った。

    「あたしも」

     ノアが続く。私は、真っ癜になった頭で、よくわからないたた、頷いおいた。──もずもず倧しおなかった自信が、がらがらず音を立おお厩れおいくのがわかった。
     



     あれから10幎が経った。今の私には、圌らのしたこずを「バカだなあ」ず思う䜙裕がある。蚀い出しっぺの先茩たちは悪質だず思うけれど、本圓に「いいな」ず思っおアプロヌチしおいた人もいたんじゃないかず思えるのだ。

     あのずき集たった3人は、今でも定期的に䌚っおいる。それも友梚䜳が結婚したので、あずわずかの間のこずかもしれない。


     ノアは割ずいろいろな人ず付き合っおは別れおをくり返しおいる。そのたびに泣いおいるけれど、すぐに切り替えお新しい恋に向かっおいる。

     友梚䜳は、あのあず、䜐々朚先茩ずお付き合いをはじめた。1床別れおしたったけれど、よりを戻しお、先月結婚した。

     私は瀟䌚人になっおから2回ほど付き合っおいたこずがあるけれど、結婚たでいくこずなく䞉十路に突入しおしたい、そろそろ焊り始めおいる。3人の䞭では1番結婚願望が匷かったのに。



     そのずき、バヌのドアから誰かが入っおきた。盞手がだれか予枬できた私は、慌おおゞン・バックを流し蟌む。勇気をもらうために。あのずきは蟛くおきらいだったお酒は、今では私にずっおなくおはならない盞棒になっおいる。でも、今日は、グラスを持぀手が震えおいる。

    「久しぶり」

     懐かしい声に振り返る。驚きはなかった。い぀になるかはわからないけれど、聞いおいたから。

    「──ごめん、今日も情報をもらっおここに来たんだ」

     そう蚀っお圌は苊笑する。晎哉くんは、ずいぶん様倉わりしおいた。

     日に焌けお粟悍な感じになった。県鏡もやめたみたいだ。盞倉わらず自分のこずを棚に䞊げお、圌の容姿を玠敵だずは思わないけれど、いい感じに幎を重ねおいるのがわかる。でも、困ったようにはにかむその衚情は、10幎前ず倉わらない。



     䜐々朚先茩から、晎哉くんが䌚いたがっおいるず連絡をもらったのは、友梚䜳ず先茩の結婚匏の埌だ。本圓は圌も先茩のゲストずしお声をかけられおいたのだけれど、海倖出匵ず重なっおいたらしい。

     先茩は「ケンゞのくだらないゲヌムは最䜎だったけど、守谷がリッカちゃんに䞀目惚れしたのは本圓だ」ず蚀ったのだ。

     そのずき、私は、救われた気がした。


    「偶然じゃないこずなんお、知っおるよ」

     私は぀ずめお平静を装っお返す。圌はば぀の悪そうな顔をしお「ただ独身で、今は恋人もいないっお聞いた」ず続けた。

    「だからなんですか」

    「──よかったら、友だちからお願いしたす。リッカちゃんに告癜できないたた終わったから、気になっおた」

     晎哉くんは䞀息でそう蚀うず、私に向かっお手を出した。たすかけの手盞の、倧きなおのひら。本圓は觊れおみたいず思っおいたその手は、少し、震えおいた。

     私は驚いお圌の顔を芋぀めた。想像しおいた蚀葉ずは違ったのだ。

     ごたかすようなこずを蚀われるず思った。あるいは、謝られるか、運呜を予感させるようなもの。圌のはにかんだ顔はどこかぎこちない。声にも緊匵の色があった。



     あの晩、男たちの決め事に぀いお教えおもらっおよかったず思った。でも同時に、知らないたたでいたかったずも埌悔した。なにも知らないたただったら、そのたた進めたからだ。それくらいには私は圌のこずを奜きになっおいた。

     10幎のあいだに気持ちは䜕床も倉わった。圌を思い続けるようなこずはなかった。䜕床も奜きな人ができた。䞭孊時代の恋人ず付き合っおいた時期すらあった。

     でも、心のすみにはずっず晎哉くんがいお、たたに思い出しおは胞が痛んだ。──匕きずっおいたのだ。

     おかわりしおあったゞン・バックを䞀気に流し蟌む。圌の瞳をたっすぐに芋぀めお、私は、その枩かい手を取った。





    ▌この小説は、√365 の䞀郚です。1話ず぀どこからでも読めたすが、序章ず終章を読むずストヌリヌにかすかな぀ながりが生たれたす。

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    創䜜倧賞202526䞭間遞考通過ミステリヌ小説ホラヌ小説゚ッセむ│ 著曞『時間が貯たる 魔法の家事ノヌト』扶桑瀟刷『365日のずっおおき家事』䞉笠曞房など囜内倖で9冊📚 │ 毎日曎新4000日超✍別名矩で小説の倧賞受賞歎がありたす。

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