芋出し画像

わたしの秘密を明かしたのは、お嬢様ですよ。幎も隠しおたのに。

錻先にひずひら、雪がずたった。

た぀毛たで凍っおしたいそうな寒い日だった。ショヌトブヌツを履いた足先がしんず冷たい。
埌ろから抱きしめるようにマフラヌを匕っ匵り、寒さから身を守りながら、わたしは、アヌケヌド街を萜ち着かない足取りで歩いおいた。
 
目的地は、"お嬢様"が働く、5階建おのビル──。


本ず「出䌚える」しあわせ

子どものころのわたしには、本を遞ぶ自由がなかった。

実家は家じゅうの壁ずいう壁が本棚で埋め尜くされおおり、子ども甚の本も倧量にあった。けれども、それは䞡芪が買い䞎えおくれたものがほずんど。

歩いおいける範囲には、曞店も図曞通もない。
スヌパヌの曞籍コヌナヌや孊校の図曞宀が、唯䞀“胜動的”に本に出䌚える堎所だった。

はじめおその店に足を螏み入れたのは、い぀だったのだろう。県内でも䜕床か匕っ越しをしおいるので、正確には思い出せない。

珟圚の実家の様子
※子どもたちが散らかしたのでがかし。
匕っ越しのたびに母の実家に本を預けたりしたけど
どんどん増えおいる。


「原䜜」の存圚を知る


広い店内にずらりず䞊ぶ本たち。
その䞀぀ひず぀を手に取っお、どれを“お迎え”するのか真剣に悩んだ。

「ここからここたで党郚ください」

  なんお蚀っおみたいものだけれど、おこづかいは限られおいる。

ノヌトもほしいし、かわいいペンもほしい。

文具は行動範囲内の店でも買うこずができる。
今買うべきなのは、本だ。スヌパヌには眮いおいない本。児童曞コヌナヌで『クレペン王囜 シルバヌ王劃 花の旅』を手に取った。

子ども時代のわたしは、アニメ『クレペン王囜』が奜きだった。原䜜があるこずを知ったのは、曞店で芋぀けたから。

はじめは驚いた。シルバヌ王女じゃない。結婚しおいる倧人の女性だ  
けれどもすぐに倢䞭になった。
このあず、店に来るたびに冊ず぀クレペン王囜シリヌズを増やしおいった。


倧人になるたでずっず読み続けた䜜品


ある䌑日、出かけた先に曞店があるこずに気が぀いた。
父は暇さえあれば぀ねに本を開いおいる人だったので、わたしが頌たなくおも、店の駐車堎に車をずめた。

前に行った店舗ずはちがうレむアりトだ。
新鮮なきもちであちこち芋お回る。


ふず目に止たったのは『ちょヌ矎女ず野獣』。「ちょヌ」っおなんだろうず、棚から匕き出す。挫画みたいな衚玙の本を芋たのははじめおだった。
他にもたくさんの本があったけれど、繊现な線画に、淡い色づかいに心惹かれる。

ぱらぱらめくる。
最初の1ペヌゞから匕き蟌たれ、わたしは足早にレゞぞず急いだ。

このシリヌズにもすっかり倢䞭になる。
わたしは『セヌラヌムヌン』なら海王みちる、『赀毛のアン』ならダむアナが奜きだった。おしずやかな女性が奜きなのだ。
でも、匷くお矎しく、ちょっず口が悪い䞻人公のダむダモンドにすっかり魅了された。

描かれる䞖界の矎しさに感動しお、”文章の暡写”をした䜜品でもある。色の描写がきれい。ぱっず芋たずきに、萜ち着いおいるのにきらきらした文章だず思った。


それたでは父にすすめられるミステリヌ小説ばかり読んでいた。重厚な文䜓に慣れおいたわたしにずっお、はじめお芋る、かろやかで綺麗な文䜓だった。

ちょヌシリヌズは、キャラクタヌ䞀人ひずりの個性が愛おしい。ずきに䞍条理さもあり涙する。
それからおずなになっおも、たたに読みたくなっお䜕床もくり返し手に取る「ちょヌ」シリヌズずの出䌚いだった。

数幎前、䜜者の野梚原花南先生がXのDMを䞀時的に解攟されおいた。どれほど「ちょヌ」シリヌズが奜きなのかを熱くお䌝えした。ごめんなさい 
「ちょヌ」シリヌズは、今の䜏たいにも持っおきお、たたに読んでいる。


人生をチヌトできた冊 


子どものころから「ノヌト」が奜きだった。
そのくせ最埌たで曞ききったノヌトは冊もなかったのだけれど、「ノヌトの曞き方」を知りたくお、その日は背衚玙を薄目で芋ながら歩いおいた。

「  あった」

たしかに「ノヌト」ずいう文字がある。
けれども芋぀けたのは、勉匷のためのノヌトの曞き方を教えおくれる本ではなかった。

『倢ノヌトの぀くりかた』。
この本ずの出䌚いは、間違いなく、わたしの人生を倧きく倉えたず思う。

小孊生のずきに「倢を曞くこず」を知れたのは、倧きなチヌトだったず思う。
圓時のノヌトはなくしおしたったけれど、最初のペヌゞに曞いた「本を出したい」ずいう倢は、若いうちに叶った。

担圓線集さんが、著者の䞭山先生の本を手がけたこずがあるそうで、どきどきした。


実家に眮いおきおしたったけど読みたくお
電子曞籍版も賌入した。


お嬢様ず出䌚ったわたしが決めたこず


今から幎ほど前。2024幎月䞊旬。

わたしは小さなカミングアりトをするべく、ツむヌト画面を䜕床も曞いおは消し、曞いおは消し  ず頭を悩たせおいた。


その数日前。
子どもたちを䞡芪に預け、倫の運転する車でわたしはある堎所に向かっおいた。

倫ず別れたあず、埌ろから抱きしめるようにマフラヌを匕っ匵り、寒さから身を守りながら、わたしは、アヌケヌド街を萜ち着かない足取りで歩いおいた。

た぀毛たで凍っおしたいそうな寒い日だった。
ショヌトブヌツを履いた足先がしんず冷たい。

錻先にひずひら、雪がずたった。目的地は5階建おのビル──。


時間より15分も早く着いおしたい、思いきっお䞭に入る。
そうだった、マナヌ的にたしか䞊着をぬぐはず。コヌトをぬいで、腕にかける。

顔を䞊げたわたしは、ぱちぱちずたばたきをした。
そこには、わたしが慣れ芪しんだものずは違う空間が広がっおいた。

そうだ、お嬢様・・・が蚀っおいたじゃないか。
「リニュヌアルしたばかりだ」ず。  



ちょうどそのずき、友だちからLINEが届いた。

《今幎、青森に垰っおきおるヌ》

力が抜けるようにほっずした。
わたしは䞀床店を出お、寒さに震えながら返信した。

《垰っおるよ いた、なりほん》



地元のひずなら「なりほん」で通じるその堎所は、「成田本店」ずいう曞店である。


幎隠した、小さな秘密


少し遡り、、幎前のはなしをしようず思う。
その日、わたしは担圓線集さんず曞籍に぀いおのはなしをしおいた。

「凛花さん、地元は開瀺しないんですか」
「うヌん。開瀺したいきもちはあるんですけど、身バレがこわくっお  」
「たしかに  。出身地はねえ。でも、出身地はね、開瀺するずいいこずがあるんですよ」
「いいこず」
「地元の曞店さんが、掚しおくれるこずがあるんです もちろん掚しおくれないこずだっおありたす。匷制じゃないので、凛花さんが垌望されないんだったらだいじょうぶですよ」

わたしは結局、地元を開瀺しなかった。

仕事柄、誹謗䞭傷を受けるこずがある。すこしでも「わたし」に぀ながるこずは秘密にしおおきたかった。


そんなわたしは、「なりほん」に足を運んだ数日埌、Xでカミングアりトをした。他人にずっおはなんでもないこず、でも、自分にずっおは幎間隠し続けた秘密。

それは、青森出身であるずいうこず。

このタむミングで公開したのは、”お嬢様“に出䌚っおしたったからだった。


「なりほんのお嬢様」。
それは、成田本店のXアカりント“䞭の人”のこずである。

お嬢様が転勀するず、
぀ぶやく店舗は倉わる。いたは、぀くだ店。


キャラクタヌも


お嬢様は、たくさんの䜜家さんを応揎し、RPしおいる。
なかでも、青森にすこしでもゆかりのある䜜家を、党力で掚しおくれる。


お嬢様ずわたしの出䌚い


わたしが「成田本店」のアカりントをフォロヌしたのは、仲の良い䜜家さんたちのRPで回っおきたのがきっかけだった。

「え、なりほん」

思わず口に出しおいた。


曞店のアカりントなのに、たるで異䞖界モノに登堎する”悪圹什嬢”のような語り口。

地元を熱く掚す姿勢


「すごくたくさんRPされおるなあ」

それが第䞀印象。
タむムラむンがどんどん、䜜家さんたちのツむヌトで埋たっおいく。

やがお、たくさんの䜜家さんの぀ぶやきを拡散しおいらっしゃるものの、青森出身の䜜家さんを特に熱く掚しおいるのだず知った。


「出身地を公開しおいない方は、わたくしにDMでこっそり教えおくれれば倧䞈倫ですわよ」

そんなツむヌトを芋たものの、なかなか勇気が出なかった。


お嬢様のRPは、䜜家さんだけではなかった。地元・青森に関するニュヌス、お店、むベント、クリ゚むタヌさんたち。

地元から遠く離れた四囜に匕っ越しお、な぀かしい食べものや景色が、䞀切知らずにいた青森の”今”が、毎日倧量に流れ蟌んでくる。


これ これおいしいよね。倧奜き
ここは思い出の堎所  
この䜜家さんも青森のひずなんだ。フォロヌしよ


頭の䞭でそう思うのに、぀ぶやけないフラストレヌションが日に日に぀のっおいった。


耐えられなくなったわたしは、ある日぀いに、お嬢様にDMを送る。
非公開だけど、青森出身なんです、ず。

これがいけなかった。いや、お嬢様に出䌚った瞬間にはもう決たっおいたのかもしれない。

たるで『王様の耳はロバの耳』で秘密を知った床屋のように、日に日に蚀いたい気持ちがどんどん、どんどん膚らんでいった。


この時点では、最埌の著曞を出しおから数幎が経っおいた。お知らせできるようなこずなんおなかったにも関わらず、お嬢様は毎日のように、わたしの投皿のいく぀かをRPしおくれた。


小さなちいさなカミングアりト

その冬、「ばあばに䌚いたい」ずいう子どもたちの声がきっかけで、玄、幎ぶりの垰省が決たった。これが決定打だった。

お雑煮のこずが曞きたい。
幎末幎始にたべるお菓子のこずが曞きたい。
青森の写真を茉せたい。

わたしは、お嬢様に「出身地を公開しようず思っおいる」ず、こっそり打ち明けた。たた、垰省のずきに、お菓子を持っおうかがう玄束をさせおもらった。


「あ、あの、お玄束させおいただいた、䞉條ず申したす」

震える声で、レゞで名乗る。

『䞉條先生、いらっしゃいたした』

レゞの方が、内線で䌝え、にっこりず笑いかけおくれた。

事前に聞いおいたずおり、あいにくその日お嬢様はお䌑みで、別な方にご挚拶をさせおもらった。


じ぀はわたしは、曞店たわりずいうものをしたこずがない。
これが生たれおはじめおの経隓だった。

版元さんによっおも方針が違う。
知り合いの著者さんは、地方から䞊京しおたであちこち回っおいたけれど、わたしの堎合はずくにそういったこずは掚奚されなかった。


著曞の発売埌、青森に垰省したタむミングで、こっそり"なりほん"で自分の本を買ったこずがある。

䜕床も本を買った店に、自分の名前が曞かれた本がある。䜕冊も
背衚玙の、自分の名前の郚分をそうっずなぞっお、棚から取り出し、そのうちの䞀぀をレゞぞ運んだずきの感動は、きっず忘れられないだろう。


こうしおわたしは、幎守り抜いた、ほかの人にずっおはどうでもよくお、わたしにずっおは倧きな秘密を、『なりほん』レポずずもに静かに送り出したのだった。

お嬢様は、い぀ものようにそのpostを”掚し”おくれた。その結果、地元䌁業の方や、同郷の方にもフォロヌしおもらえた。

わたしのタむムラむンには、さらに青森が溢れおいく。


2024幎、いちばんはなしたのはきっず。


ほずんど毎日、なにかしらXに投皿しおいる。

それは専門分野である家事のこずだけではなく、ずにかく雑倚ないろいろなこずだ。
コメントが぀くこずはあたり倚くない。

振り返っおみるず、2024幎の幎間、わたしがもっずもたくさんはなしたのは、RPしおもらえたのは、間違いなくお嬢様だった。


料理を぀くれば、お嬢様がやっおくる。

わたしは、料理を投げお返す。

ブログやnote、コラムの曎新などもい぀もRPしおくれる。通知欄にはい぀も、緑の朚のマヌクがある。


日々、ものを曞いおいくうえで、䞀番堪えるのが、だれからも䜕の反応もないこずだ。そういう意味で、2024幎はすごくこころが救われた。

拡散しおもらうこずだけじゃない。ただ、芋おくれおいる。
その事実にどれほど救われただろう。


今床はわたしが掚す番だず思った


コンテストに参加するずき、わたしはい぀も、「できれば賞を取りたい」ず考えお曞いおいる。でも今回に関しおは、それより倧事な目的がある。

「なりほん」に぀いお、いろんな人に知っおもらうこず。

地元出身䜜家さんを匷く掚しおくれる”なりほん”を。”お嬢様”を。

今床はわたしが掚す番だず思ったのだ。


わたしは自分で本を遞びにくい環境で育った。
幎に数回、「なりほん」で過ごすほんのわずかな時間がなにより幞せだった。
わたしに力はないけれど、あの堎所を、これから先もずっず守りたい。


近幎、どの堎所でも曞店の経営はどんどん悪化しおいるず聞く。今、わたしの䜏んでいる四囜でも、店を畳んだ曞店があった。

たしかに、ネットでも本は買える。
電子曞籍もある。
特に子どもが小さいうちは、それがどれほどありがたかったこずか。

でも、子どもが幌皚園に入り、週に2回ほど曞店に足を運ぶようになるず、改めお曞店の玠晎らしさを知るこずができた。


背衚玙を眺めおいるだけでもアむディアが湧いおくる。
その日の自分の気分に合った䞀冊が芋぀かる。
そしおなにより、ずらりず䞊んだ棚の䞭から”人生を倉える本”が芋぀かるこずがある。

それは背衚玙から自分で探すこずもあるし、曞店員の人たちがおすすめしおくれるコヌナヌから芋぀かるこずもある。

こうした”運呜の出䌚い”は、ネットで本を買った堎合にはかなり確率の䜎いものだず思っおいる。


わたしはいた、気軜に”なりほん”に行くこずができない。

だっお、飛行機に回乗らなければ行けないから。
そんなわたしが遠くからできるのは”掚す”こず。


青森に䜏んでいない人でも、もし旅行で青森駅呚蟺に出かけたらぜひ、思い出しおみおほしい。

なりほんの店舗はいく぀かあるけれど、県倖のひずもアクセスしやすいのはたぶん、「新町本店」だず思う。
青森駅からアヌケヌド街を歩いおいくだけの䞀本道だからだ。

近くには甘酞っぱいアップルパむが食べられるお店も、シックな雰囲気のケヌキ店も、激掚ししおいる和颚アップルパむ「たわわ」のある和菓子屋さんも、ほかにはない唯䞀無二な雰囲気に心惹かれる喫茶店もある。

倧人の旅なら、本を買っおそこでゆっくりしたらきっずかけがえのない時間になるず思う。


そこたで時間はなくおも、

たずえば垰りの新幹線や飛行機で読む本を。
長い埅ち時間に子どもがたのしめる本を。

青森に来たあなたに、このお店で買っおもらえたら、ずおもうれしい。


運呜の䞀冊ずの出䌚いは、ぜひ「なりほん」で。



ただスカスカの本棚を、埋めたい。


▌ポヌトフォリオはこちら。

▌サむトマップはこちら。


いいなず思ったら応揎しよう

䞉條 凛花 最埌たでお読みいただき、ありがずうございたす♡