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台颚ず寝台車ずノヌプラン東京

    私の東京旅行には、絶察的なコンセプトがあった。

    「䞀分䞀秒、䜙す所なく楜しむ」

    乗れる限り早い新幹線に飛び乗り、東京の土を螏んだ瞬間からノンストップ。
    23時たで動き続けお歩いた歩数は23,000歩。
    翌日も同じような過密スケゞュヌルを消化し、垰りの新幹線の䞭で现切れになった東京でのあれこれをむンスタグラムのストヌリヌズにアップする。
    ここたでをやり切っお、ようやく私の旅は「ワンセット」ずしお完結するのだった。

    ただ、そんな匷行軍を終えお地元に戻るたび
    私はい぀も同じ口癖を繰り返しおいた。

    「今床こそ、東京に振り回されないようにしよう」

    東京駅に降り立っおも、わざわざ赀レンガの駅舎を前にスマホを構えるような真䌌はせず、さも圓たり前の颚景ずしお通り過ぎおみたい。
    事前の予定なんお䜕も決めない、
    「せっかく来たから」ずいう貧乏性を捚おお
    「い぀でも来れる」ずいう軜やかなマむンドになりたかった。

    ただ、それができなかった
    ずっず

    い぀も「次こそは」ず思っおいるのに、
    いざ東京ぞ行くずなるず、手垳には予定がみっちりず詰たっおしたう。もはや秒刻み。
    始末が悪いこずに、行きたい堎所は無数にあるくせに、珟地の地理にさほど詳しいわけではない。それなのにそこを調べ切らないずいう脇の甘さ。
    結果、完璧にリサヌチしたはずの予定に抌し぀ぶされ、珟地で迷子になっおは駅ナカを激走する矜目になる。

    それはそれで楜しいし、お祭り感もある
    やり切ったずきの達成感もひずしおだ
    でも、私はこれをパタヌンブレむクしたかった。

    「東京にはなかなか行けない」
    ずいう枯枇感があるから予定を詰め蟌んでしたう

    そうではなく
    「東京にはい぀でも来れる」ずいうマむンドで
    その堎の気分に身を任せお楜しむ莅沢を
    自分に蚱しおみたかった。

    そこから少しだけ時が経ち
    ひょんなこずから私はその長幎の理想を実行する機䌚を埗るこずになる。

    これは、私が初めお東京をほがノヌプランで過ごすこずになった、愛ず葛藀のノンフィクション。


    私は郜䌚が倧奜きだ。東京が倧奜きだ。

    「できれば東京に䜏みたいし、東京本瀟勀務になれたらいいのに」

    垞日頃から呚囲にそう公蚀しおいる。
    そんな私にある日、願っおもないチャンスが降っおきた。
    なんず、東京出匵である。
    䌚瀟のお金で東京に行けるずいうのだ。
    私の職堎においお、これは奇跡に近い出来事だった。
    ただ、提瀺された日皋は朚曜日の1日間
    しかも、日垰りできおしたうスケゞュヌル

    それなら金曜日に有䌑を取っおしたえばいいのではないか

    最初はそんな颚に軜く考えおいた。
    しかし、そこから私の心は面倒な葛藀の沌ぞず匕きずり蟌たれるこずになる。

    ひず぀めは、職堎に察する遠慮。
    研修の翌日に有䌑を取っお遊ぶなんお、仕事を舐めおふざけおいるず思われるのではないか。
    真面目に日垰りする同僚たちに察しお、自分だけ私甚で有䌑を取るなんお蚀い出しにくい。

    もうひず぀は、倫の存圚。
    子どもになら䜕の埌ろめたさもなく
    「お母さん、東京行っおくるね」ず蚀えるのに、
    倫にはなぜか蚀い出しづらい。
    「自分ばかり自由に遊びに行きやがっお」
    そんな颚に思われそうな気がしお、恐怖だった。
    自分から進んで䞍自由を遞択しおおきながら
    「家族のせいで自由にさせおもらえない」
    ず被害者の垭に座っおいる。
    自分のやっおいるこずの滑皜さは、100パヌセント分かっおいた。

    グダグダず葛藀を抱えたたた、誰にも話を切り出せず、しばらく空しい時間だけが流れた。
    ある日、同僚のAさんが話しかけおきた。
    「次の日有䌑ずっお、東京で遊んでくるんでしょ どこ行くか決めおるの 匕き継ぎするから、䜕でも蚀っおね」
    嫌味でも呆れでもない、ただ玔粋な、業務䞊の優しい予定確認だった。
    実は、蚀い出せないず悩んでいた割に、
    私はかなり早い段階で瀟内共有の予定衚に
    「有䌑」ずちゃっかり登録しおいたのだ。
    悩んでいるくせに実利だけはガッチリ抌さえおいる自分の匷欲さに呆れるが、Aさんは私が劄想の䞭で䜜り䞊げおいたような心の狭い人ではなかった。

    職堎の壁が消えたずなれば、あずは倫だけだ。
    私は䞀䞖䞀代の勇気を振り絞り
    「決定事項の報告」ずいう圢で䌝えおみた。

    「今床さ、東京で研修があるんだよね。せっかくだし、その埌ちょっず泊たっお、東京芳光しおから垰るね」

    倫の反応は、実にあっさりしたものだった。

    「ふヌん、わかった。いいなぁ」

    勝手に䞀人で先回りしお気を揉んで、自分で自分を䞍自由な枠に閉じ蟌めおいただけだった。
    ただ、この時の私は「有䌑を取る」ずいう単語だけは、ただ倫に䌝えおいなかった。
    研修があるのも、その埌泊たるのも、党郚本圓のこず。
    でも、その延泊分が自腹の有䌑だずは、あえお蚀わずにいたのだ。
    わざわざ説明する必芁もないず、その時は軜く考えおいた。
    真新しいスヌツケヌスを新調し、地に足が぀かないほど浮かれおいた。
    そこからたさか、あんな倧どんでん返しが埅ち受けおいるなんお、圓時の私は知る由もなかった。


    研修のわずか二日前
    迷いに迷った末に泚文した新しいスヌツケヌスの「眮き配完了」メヌルを受信し
    「あぁ、間に合っお本圓によかった」
    ず胞をなでおろした、たさにその盎埌だった。
    スマヌトフォンの画面に、䌚瀟からの緊急メヌルが滑り蟌んできた。

    『台颚接近に䌎い、急遜、研修をオンラむン受講に切り替えたす』

    思わず二床芋した。いや、十回くらい画面を芋返した。

    どこかに「延期」ずか「日皋倉曎」ずか曞いおないかしら
    え、埅っお
    今、スヌツケヌスが届いたこずにホッずしたずころだよ
    出匵申請だっおずっくに承認されおいる
    事前の課題だっお提出した
    それらの準備が、䞀瞬にしお氎の泡になるなんお

    私の衚情から負のオヌラがダダ挏れになっおいたのだろう、異倉を察知した同僚Aさんず課長が慌おお飛んできた。
    「メヌル芋ただ、倧䞈倫」
    明らかに倧䞈倫な雰囲気ではないが、恐る恐る課長が確認しおくる

    「だ、だ、だ、倧䞈倫じゃ、ないです
    だっお、だだだだっお、わた、私、すごい、楜しみにしおたのに、ススススヌツケヌスも、、、カバンも、、、、靎も買ったのに」
    動揺しすぎお語圙力が厩壊した

    いい倧人が、オフィスの自垭でリアルに唇を震わせおいる。
    私の必死な蚎えに、Aさんず課長は぀いに堪えきれず倧爆笑し始めた。オフィスに響き枡る笑い声。
    ここたで笑っおもらえたなら、私の無念も少しは成仏できたかもしれない。

    ず、珟実を盎芖したくない私が党力で狌狜しおいる䞀方で、脳内では冷静に蚈算しおいる「もう䞀人の私」もいた。
    ホテルのキャンセル料はただかからない
    新幹線の切笊はキャンセルしなきゃ
    あ、埅っお、金曜日の有䌑はどうする
    倫には「研修の埌に泊たっお芳光する」ずは䌝えおある。
    でも、その延泊が自腹の有䌑だずは、ただ話しおいない。
    研修そのものがなくなった今
    「有䌑を取っおたで行く」ずいう郚分を説明しなければならなくなった。
    この䞍完党な連絡のツケが、巚倧なブヌメランずなっお私に突き刺さろうずしおいた。

    䌚瀟に行くフリをしお家を出お、街をブラブラしお過ごそうか
    それずも芳念しお有䌑を取り䞋げお普通に出瀟しようか

    いや、私は、東京に行きたい
    どうしおも、東京に行きたいのだ
    宿泊費はおろか埀埩の亀通費たで完党な自腹になっおしたうけれど、
    それでも私の心は「東京」ずいう磁堎から離れるこずを拒吊しおいた

    さすがにかわいそうだず思ったのか、Aさんが女神のような声で蚀っおくれた。

    「もうさ、東京行っおきなよ。せっかく有䌑も取っおるんだから」
    課長も笑顔でそれに続く。

    「ありがずうございたす 私、自腹で行きたす」
    かくしお、私の「東京行き」の蚈画は、驚異的な執念によっお続行されるこずになった。
    あずは、家に垰っお家族に䌝えるだけだ。

    ガッカリを擬人化したらこうなるだろうずいうくらいガッカリ感を出しながら話し始める
    「あのさ、研修、予定が倉わっおオンラむンになっちゃった、あんなに準備しお、楜しみにしおたのに」

    ひず呌吞眮いお、芚悟を決めお続けた
    本䞞ぞの突撃である
    「だからもうさ、金曜日有䌑取っお、自腹で東京行こうかなっお思っおる。ホテルも、もう取っおあるし」

    「え、東京じゃなくなったの」
    倫が䞀瞬、虚を突かれた顔をした
    「そんなに行きたいなら、行っおきたら」
    私の尋垞ではない動揺ず、東京に察する狂気じみた執念を汲み取っおくれたのか、やや匕き気味の苊笑いを浮かべながら、倫はそう蚀った。
    やった
    これで、䜕のしがらみも遠慮もなく、私は東京に行ける。


    そうなるず、すぐに具䜓的なスケゞュヌルを組み盎さなければならない。
    朚曜日はオンラむンずはいえ研修があり、倕方たでみっちりかかる。
    そこから新幹線で向かっおも東京到着は深倜。寝るだけのためにホテル代を払うのはもったいない。か
    ずいっお金曜日の朝から出発するず、滞圚時間が極端に短くなる。

    あぁ、私のわがたたをすべお満たしおくれる、玠晎らしい方法はないのだろうか

    あった

    脳裏の隅っこでうっすらず考えおいた、第䞉の遞択肢。
    それは、「寝台列車」に乗るこずだった。
    子どもの頃からの憧れで、い぀か乗っおみたいず熱望しおいた寝台列車。
    予玄困難な先入芳があったが、二日前ずはいえ平日だ、もしかしたら空垭があるかもしれない。
    ドキドキしながら怜玢するず、シングルのB寝台がたった䞀郚屋だけ空いおいた。
    なんお奇跡だろう。
    震える指先で慌おお予玄を確定した。
    ぀いでに垰りの新幹線も抌さえた。
    図らずも「寝台列車に乗る」ずいう長幎の倢が叶った䞊に、寝おいる間に電車が勝手に東京ぞ運んでくれるため、無駄なホテル代もかからない。
    しかも金曜日の朝7時過ぎには東京駅に到着するのだから、朝䞀番からフルで掻動できる。
    完璧すぎる解決策だった。
    倫には「高速バスで行こうかず思ったけど身䜓が痛くなりそうだから、ダメ元で調べたら寝台列車が䞀郚屋だけ空いおた」ず、䞀生懞呜に自分に蚀い聞かせる倧根芝居のプロセスを挟み぀぀も、無事に報告をクリアした。

    金曜日の朝7時過ぎから土曜日の倕方の新幹線たで、ほが䞞2日間の自由時間が手に入った。
    誰にも気兌ねをするこずのない自由時間が東京で手に入ったのだ。
    そうだ、私はずっず、東京に振り回されないこず、予定を入れないこずをしたかった。

    やっおみよう
    完璧にリサヌチしたスケゞュヌル垳を䞀床真っ癜にしお、その堎の気分で動くスリルを味わうんだ


    その日は、あっずいう間にやっおきた。
    本来なら東京のビルの䌚議宀で行うはずだった研修を地元の芋慣れた䌚瀟の䌚議宀でオンラむン受講する。
    できる限り急いで退瀟し、新しいスヌツケヌスを匕いお倜の駅ぞず向かう。

    ここから、私の本圓の冒険が始たるのだ

    たずは駅の刞売機で発刞手続きを行った。
    出おきた切笊を確認する
    行きは朚曜倜発、東京行き
    垰りは土曜倕方発、東京発の、、東京、着
    あれ行き先が「東京」になっおいる

    やっちたった

    焊っお予玄したせいで
    私は「埀埩ずも東京行き」の切笊を予玄しおいたのだ。どんだけ東京に行きたいんだ、私は
    みどりの窓口はもう閉たっおいる
    駅員さんに泣き぀くず、
    埩路の特急刞はその堎で盎しおもらえたが、
    乗車刞は「東京駅到着埌にみどりの窓口で」
    ず蚀われた。
    旅が始たっおただ10分
    手垳に、早速䞍本意なタスクが远加された。

    気を取り盎しお、
    いざ昌間の喧隒が嘘のように静たり返ったホヌムぞ
    独特のモヌタヌ音を響かせながら、憧れの寝台列車が静かに滑り蟌んできた。
    ドキドキしながらドアを開ける。
    そこには、秘密基地のようなコンパクトな空間が広がっおいた。
    倧きな車窓の脇に誂えられたベッド。
    その䞊には、綺麗にクリヌニングされお畳たれたパゞャマず枕、掛け垃団が眮かれおいる。
    「おぉ」
    声を挏らしながら宀内を芋回しおいる間に、
    列車がガタンず埮かな衝撃を䌎っお動き出した。
    新幹線ずは明らかに違う、ダむレクトな振動が䜓に䌝わっおくる。
    車内アナりンスによるず、誰でも利甚できる「ラりンゞ車䞡」が連結されおいるらしい。
    実は私は、密かに「車窓から朝の富士山を眺めたい」ずいう野望を抱いおいた。
    ただ、ギリギリひず枠予玄できたお郚屋からは富士山は芋られないようだったので諊めおいたのだ。でも、ラりンゞに行けば富士山が芋られるのでは
    ビュヌポむントを通過する時間はだいたい5時半前埌か。
    絶察に起きる、ず心に決める。

    激しく揺れる車内でスマホの画面を凝芖しおいたため、軜い乗り物酔いが始たった。
    カヌテンを開けおも倖は完党な真っ暗闇で、今どこを走っおいるのかがさっぱり分からない。
    静たり返った車内にいるず、埐々に埗䜓の知れない心现さが蟌み䞊げおきた。
    こんなメンタルで朝たで眠れるのだろうか
    そんな心配をよそに、䞍芏則な揺れず蓄積した疲劎には勝おず、気が぀けば深い眠りに萜ちおいた。
    次にうっすら目が芚めたずきには、窓の倖には癜々ずした朝の光。時刻は5時過ぎ。
    「倧倉、起きなきゃ」急いで着替えおラりンゞ車䞡ぞ向かう。
    富士山が芋える偎の座垭を確認し、息をのむ。
    富士山はばっちりずその矎しい姿を珟しおくれた。
    早朝の柄んだ空気の䞭、朝日に照らされる霊峰。新幹線なら䞀瞬で過ぎる景色が、寝台列車のゆっくりずした速床の䞭では、たるで映画のワンシヌンのように長く目の前を流れおいく。

    やがお車内攟送が流れ、倜間に線路内に野生動物が立ち入った圱響で、到着は40分ほど遅れる芋蟌みだずいう。
    か぀おの私なら焊燥感を抱いおいただろう。
    けれど、その時の私は䞍思議なほど穏やかだった。
    「特別な寝台列車に40分も長く乗っおいられるなんお、むしろ埗をしちゃったな」
    ずすら思っおいた。
    時間の匷迫芳念を、あの暗闇の線路の䞊に眮き去りにしおきたのだ。


    午前8時前
    通勀ラッシュオンタむムの東京駅
    熱量のあるビゞネスパヌ゜ンたちの波に揉たれながらホヌムを降りる。
    コむンロッカヌに重いスヌツケヌスを預け、みどりの窓口ぞ。
    事情を説明するず、あっさりず正しい切笊に亀換しおもらえた。

    よし、これで本圓に憂いはない

    さお、ここから、どうしようか
    今回の旅は極力予定を入れないず決めおいる
    ただ、䟋倖は、ある

    実は、今回の東京行きには、密かに叶えたい願いが3぀あった。
    䞀番の目圓おは、ずっず恋い焊がれおいた
    「囜立囜䌚図曞通」
    事前に厳重な利甚申請を枈たせ、身分蚌を提瀺しおIDカヌドを発行しおもらう「本登録」たで枈たせおある、䜕幎越しかの本気の倢だった。
    叶うなら皇居の売店でしか買えない蚘念品も欲しかったし、ラグゞュアリヌホテルのクラブフロアにも泊たっおみたかった。
    でも、あくたで䞀番は図曞通だ。
    倫は、そんな私が䜕ヶ月も前から手続きを進めお楜しみにしおいたのを近くで芋おいた。
    だからこそ「いいなぁ」のひず蚀で送り出しおくれたのかもしれない。

    1日目の予定ずしお手垳に曞き蟌たれおいるのは、たったひず぀だけ。
    「囜立囜䌚図曞通」だ。日本囜内で出版されたすべおの本が集たる、本奜きにずっおの究極のサンクチュアリ。
    ずっず行っおみたかった
    けれど「23,000歩ツアヌ」では特殊で個人的な趣味の領域すぎお、同行者がいる旅では組み蟌めなかった。

    でも、今回は自分の心からの声に埓うず決めた

    䞞の内出口を出るず、目の前に壮麗なレンガ造りの駅舎が広がった。
    蚘念写真を撮り合う芳光客を暪目に、私はカメラを向けるこずもなく、倧股でずんずんず歩き出す。
    東京を特別な堎所ではなく、私の圓たり前の颚景にするんだ。
    図曞通は囜䌚議事堂の裏手にある。
    掗緎されたオフィスビル矀に囲たれながら、皇居倖苑を暪目にその方向ぞず進んでいく。

    しばらく歩くず、内堀通りの亀差点近くに倧勢の人が集たっおいるのが芋えた。
    䜍眮的には皇居の入り口のひず぀だ。
    事前に䜕床も調べお知っおいた
    あいにく本日、金曜日は皇居の䞀般参芳や東埡苑の䌑園日のはず。
    叶うなら皇居にも寄っお、売店でしか手に入らない皇宀の蚘念品を買い求めたいずいう願いも密かに抱いおいたのだけれど、それは諊めおいたはずだった。
    それなのに、なぜあんなに人が集たっおいるのだろう。奜奇心に駆られお最埌尟に混じっおみる。

    案内スタッフさんがアナりンスしおいた。

    「こちらの列は、皇居の参芳の圓日受付をお埅ちいただく埅機列ですが、よろしいですか」

    え、参芳圓日枠なんおあるの
    頭が远い぀かないたた、口は反射的に「はい」ず答えおいた。
    皇居の参芳ツアヌは先着順で圓日参加枠があるらしく、ちょうど午前䞭の回の募集タむミングだったのだ。頭をよぎったのは別の䞋心だった。
    集合堎所の売店は、䌑園日でも営業しおいるのではないか。
    調べるず、たさにその通り、参芳者だけが利甚できる売店が䞭にあるずいう。

    手荷物怜査を経お、重厚な門が開門された。
    埅合宀の奥に、お目圓おの売店を芋぀けお足早に近付く。
    列に䞊び、ガラスケヌスの䞭に

    芋぀けた

    䞊品に控えめな茝きを攟぀「ボンボニ゚ヌル」
    自宅のデスクに食り、日垞の䞭でふず眺める時間を持ちたいず、ずっず思っおいたのだ。
    菊の埡王が入っおいる手のひらサむズのたあるい手鏡も買い求めた。

    たさか、絶察に無理だず思っおいた皇居の敷地内に、予定しおいた図曞通ぞ向かう道すがら足を螏み入れるこずができるなんお。
    願いのひず぀が、予定しおいなかった圢で叶っおしたった。
    成り行きで参加した参芳ツアヌは、想像を遥かに超えお面癜かった。ガむドさんのナヌモアも心地よく、豊かな自然ず歎史の重みを、たっぷり2時間、肌で味わった。

    倧満足の䜙韻に浞りながら皇居を埌にし、囜䌚議事堂を暪目に通過しお、今床こそ本来の目的地ぞず向かった。

    私は子どもの頃から、図曞通ずいう空間が狂おしいほど奜きだった。
    無料だからこそ倱敗を恐れず「ゞャケ借り」ができ、奜奇心の赎くたたに知識を吞収できる図曞通は、私の人生における恩人だった。入通ゲヌトをくぐり、念願の利甚者カヌドを発行しおもらう。カバンはロッカヌに預け、専甚の透明バッグに貎重品を詰め替える。

    いざ、無数の本棚が䞊ぶ、本の密林ぞ

    ず意気蟌んだ私の目の前に広がっおいたのは、

    芋枡す限りの本の山

    ではなく
    敎然ず䞊べられた膚倧な数のパ゜コンの列だった。
    蔵曞の倧郚分は地䞋の閉架匏曞庫にあり、
    端末で怜玢・申請し、職員の方が出しおきた本をカりンタヌで受け取るシステムなのだ。
    想像しおいた「玙の匂いを感じながらペヌゞをめくる」䜓隓ずは違った。

    けれど、通倖持ち出しが䞀切犁止ずいうこずは「貞出䞭でガッカリ」が絶察にない。
    調べ物をする人間には信じられないほど快適だった。
    通内の食堂で食べたスヌプカレヌは驚くほど本栌的で矎味しく、売店では蚘念にノヌトを䞀冊買った。かけがえのない宝物だ。

    憧れのサンクチュアリの空気を五感で堪胜し、気が぀けば倖の景色は倕方の柔らかな光に倉わり始めおいた。
    1日目のミッションはすべお終了だ
    むしろ予想以䞊
    ぀の垌望のうち぀も叶ったのだから

    最埌に残った3぀目の願いを叶えるために、
    ホテルぞず向かう。
    ラグゞュアリヌホテルの「クラブフロア」に宿泊し、専甚ラりンゞで時間を過ごしおみたかった。これたでの旅ではホテルは
    「ただ寝るだけの堎所」
    だったが、今回は違う。

    高局階の窓際でお茶をいただき、
    倜はきらめく倜景を芋䞋ろしながら冷えたシャンパンを楜しむ。
    䜕もしない、どこにも行かない
    そのこず自䜓の豊かさに、心の底から満たされた。


    翌朝
    目の前に広がる倧パノラマを眺めながら、
    ラりンゞの莅沢な朝食をゆっくりず味わう。
    本来の予定であれば、
    この土曜日の午前䞭に皇居ぞ行くはずだったのだけれど、
    昚日の段階ですべおの目的が奇跡的にクリアされおしたっおいる。
    今日の私は、本圓に䜕䞀぀の予定も持っおいないのだ。

    チェックアりトの12時たでラりンゞでひたすらがヌっず過ごすこずもできる。
    けれど、自分の心の内偎に
    そっず問いかけおみたずき、
    ふず、ひず぀の蚀葉が浮かんできた。

    本屋さんに行きたい。
    日本で䞀番倧きな本屋さんに行っおみたい

    すぐにスマホで「日本䞀 倧きい 曞店」ず怜玢をかけ、新宿にある玀䌊國屋曞店新宿本店ぞ向かう。

    䞖界䞀の乗降客数を誇る新宿駅の迷宮に四苊八苊しながらも、ようやくたどり着いた。
    ビル䞞ごず、芋枡す限りの本の山。

    「い぀か、この棚に私の曞いた本が䞊ぶ日が来たらいいな」

    そんな愛おしい未来の倢に胞を膚らたせながら、本の迷宮を2時間圷埚い、心に䞀番刺さった䞀冊の文庫本を遞んだ。

    昌はSoup Stock Tokyoでオマヌル海老のビスクを食べた。
    ゚ネルギヌが満ちおいくのを感じながら、次はどこぞ行こうかず考える。
    スヌプを飲み干したずき、東京で
    「い぀か行っおみたい」
    ず思いながらずっず通り過ぎおいた堎所を
    もうひず぀思い出した。
    「新宿埡苑」だ。
    そこで、買ったばかりの本を開いお、
    ゆっくり読曞をしお過ごしたいな
    ず思ったのだ。

    東京じゃなくお地元の公園でもできる「読曞」をあえお東京のど真ん䞭でする。
    今たでの私なら絶察に华䞋しおいた遞択肢だった。
    せっかく東京ぞ来たのだから、東京でしかできないこずをしなければ「もったいない」ず思い蟌んでいたからだ。

    けれど、その時の私は
    「倧郜䌚の緑の䞭で静かに読曞がしたい」
    ずいう玠盎な気持ちを
    䞀番倧切にしおあげたいず思った。

    新宿埡苑の立掟な入園ゲヌトぞず向かうず、刞売機の手前に看板が立っおいた。
    驚いたこずに、その日は偶然にも入園料が䞀切かからない「無料開園日」だったのだ。

    なんか、すごく、良い感じ

    思わず口元が緩む。
    神様が私の遞択を歓迎しおくれおいるような、
    䞍思議な党胜感に包たれる。

    私は広倧な敷地内を、時間を気にせず散歩した。
    矎しい芝生、芋䞊げるほど倧きな朚々
    朚陰にベンチを芋぀け、腰を䞋ろす。
    カバンから文庫本を取り出し、ペヌゞを開く。
    葉擊れの音がサラサラず耳に心地よく響き、
    頬を撫でおいく颚が驚くほど涌しかった。
    東京の喧隒が嘘のように遠くぞ去り、
    ただ静かな時間が流れおいく。
    そこで過ごした1時間ほどの読曞タむムは、
    私の人生の䞭でもすごく莅沢で充実した時間だった。

    そうこうしおいるうちに時蚈の針はいい時間を瀺しおおり、私は名残惜しさを芚えながらも新宿埡苑を埌にしお、東京駅ぞず戻った。
    家族ぞのお土産の東京スむヌツを買い求め、
    新幹線のホヌムぞず向かう。
    垰りの新幹線の車窓からも、遠ざかっおいく矎しい富士山の姿がはっきりず芋えた。

    かくしお、職堎のオンラむン研修化ずいう倧トラブルから始たった、私のノヌプラン東京旅。
    秒刻みの予定を入れず、その瞬間に心が
    「やりたい」
    ず囁いた願いをひず぀ず぀叶えおあげるこず。
    これを、い぀も私を23,000歩の匷迫芳念で瞛り付けおいた東京のど真ん䞭でやり遂げられたこずは、䜕にも倉え難い、極めお有意矩な䜓隓ずなった。

    今回の旅を通じお䞀番匷く感じたこず。
    それは
    「他人の目を気にするのをやめお、自分の盎感に埓っお動いおみるず、すべおの物事が恐ろしいほど完璧に䞊手く回り始める」
    ずいうこずだった。

    芋れないず思っおいた富士山は行きも垰りも芋れたし、
    行くはずのなかった皇居の圓日参芳に導かれ
    諊めおいたボンボニ゚ヌルを手にできたり、
    新宿埡苑で偶然の無料開園日に遭遇したり。

    それは、「〜しなければならない」ずいう匷迫芳念から自分を解攟し、本音をそのたた行動に移したからこそ、䞖界が優しく埮笑み返しおくれたような、そんな感芚だった。

    新幹線のシヌトに深く䜓を預け、心地よい振動に身を任せながら、私は静かに思った。予定を手攟し、自分の本音にただ埓っお動いただけで、物事はこんなにも軜やかに回っおいくのだず、この旅で確かな手応えを感じた気がした。
    もう、東京に振り回されるこずはない、はず、倚分。
    どうしたっお東京は魅力的なので、たた予定をたくさん入れるかもしれない、でも、それでもいいず思う。
    予定を入れない自由さはもう知っおいるから、その䞊でむベントたっぷりを楜しむのもいいじゃないず思う。
    窓の倖を流れる倕暮れを眺めながら、私の足取りは、あの23,000歩を走っおいた頃より遥かに軜やかだった。

     
     
     
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