
【小説】To be continued ~第2話 いつものサヌールで~
2025年9月、バリ島@サヌール。
杖なしでやっと歩けるようになった私は、バリにいる。
歩けなかった期間の凍り付いた強い人間不信感、理不尽な思い。
出社できる体になったところで、心に刻まれた怒りや悔しさが消えることなどあるのか。
そんな思いが胸の奥で燻り続ける。
――バリは私にとって、人生で何度も助けられた場所。
若い頃、どうしても受け入れられなかった人との縁が切れた時も。
心を病み、何も考えたくなくなった時も。
気づけば私はこの島にいた。
だから今回も、失った時間を取り戻すような気持ちで、この島へ戻ってきた。
27回目のバリ島。
到着日は、初めてのホテル。
翌朝、窓から眺めると側面が透明のプール、その向こうには空き地と緑が広がる。朝日が差し、鳥のさえずりが心地いい。
朝の涼しい風が頬を撫でていった。
車を手配して、サヌールの定宿へ向かう。
もう観光はしない。
”Rio!!What time are you coming?
I'm already getting excited.”
彼女たちの人懐っこさとホスピタリティーには脱帽。
部屋にはフルーツ、そして彼女の直筆サイン入りカード。
何とも心憎い演出。
それも嬉しいけれど、実は、5Fのインフィニティープールから眺める景色こそが、私への最大のご褒美なのだ。
夕暮れ時、空港を飛び立った飛行機が次々と空を横切り、その向こうには海が広がる。
ビールを最高に美味しく飲むための、世界で一番贅沢な助走。
その瞬間のために、私はここへ戻ってくる。
スタッフの彼女には、
「実は来年3月の分も、もう予約してあるの」
と耳打ちすると
”Oh, my God!”
海を見た。
プールで動いた。
カラダとココロが喜んだ。
その瞬間の端々で、幸せに浸る。
そんな私は、まだ知らなかった・・・。
サヌールでの穏やかな日々が、後にこの先の人生を根底から揺さぶられることになるなんて・・・。
歩いて行けるはずのその距離は、当時の私たちにとっては、まだ果てしなく遠かった。
運命という言葉を使うなら、それはまだほんの少しだけ時計の針が早すぎたのだ。
気づかないまま、二人の歯車は静かに回り始めていた―--。
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