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【AI×青春小説】けいくん。第38話|エピローグ 僕の痛くて熱い初恋の終着点。ほろ苦い抹茶の味と、澄み切った京都の空

    あれから、一年以上の月日が流れた。

    僕はなんとか無事に
    文系のそれほど偏差値が高くない大学へと合格した。

    大学生になってすぐ
    近所の小さな喫茶店でアルバイトも始めた。

    高校二年生のあの夏の終わりに
    空港で別れてからも
    けいくんとの交流はDiscordや
    インスタグラムを通じてずっと続いていた。

    そして今年の春、けいくんが
    「ゴールデンウィーク、京都へおいでよ」と
    誘ってくれたのだ。

    僕は入学祝いで少しだけもらったお小遣いと
    始めたばかりのアルバイト代を握りしめ
    新幹線に乗って京都へと向かった。

    この一年余りで
    僕の身長は165センチまで伸びた。

    高校に入学した頃は
    158センチしかなかったことを思えば
    大健闘だけれど
    成長期はどうやらそこでピタッと
    止まってしまったらしい。

    父さんの身長が170センチ
    母さんが158センチ。

    どうやら、けいくんの弟の
    湊くんを見た時にも思った通り
    血は争えないということだ。

    京都駅の改札を抜けると
    人混みの中でも一際目を引く
    見慣れた少し高めの背中が待っていた。

    「あっ、りっくん! ようこそ京都へ!」

    振り返った彼の身長は
    180センチ近くまで伸びていた。

    結局、僕は未だに
    彼を見上げる格好のままだった。

    相変わらず、洗練された
    おしゃれなジャケット姿がよく似合っている。 

    彼は高校を卒業後、京都芸術大学へと進学した。

    かつてテントの中で語っていた
    「デザインや服に関わる勉強」の第一歩だ。

    美大だなんて、絵なんか描けたの!? と
    驚いて聞いた僕に
    「一般入試でも入れる学部があるんだよ」と
    彼は笑って答えていた。

    「まずは清水さん(清水寺)にお参りに行ってな。
    その後、宇治の方へ行こか。 平等院鳳凰堂。
    十円玉のやつ、あれ見て。
    その後、お茶でもしよ?」

    耳に心地よく響く
    おっとりとした少し低めのトーン。

    その声色はそのままに
    あれからすっかり京都弁なるものを
    身につけたらしい。

    もともと落ち着いていた
    低いトーンがより洗練され
    そこに独特の柔らかなイントネーションが
    乗っかっている。

    十年前から住んでいる地元民なのでは? と
    錯覚するほどの板についた京都弁に
    僕は少し圧倒されながらも
    彼に連れられて春の京都を回ることになった。

    「清水の舞台」と言われる
    壮大な景色を観光した後
    僕たちは宇治へと足を伸ばし
    真っ赤な平等院鳳凰堂を見上げた。

    相変わらず、けいくんは新しいものや
    興味を持ったものは
    とことん調べる性質らしく
    「ここの壁画はね……」と
    一枚一枚がどういう絵なのか

    そもそも成り立ちが浄土信仰で……と
    ガイド顔負けの詳しさで
    丁寧に説明してくれた。

    たっぷり歩き回った後
    僕たちは近くのお茶屋さんに入った。

    店の外には
    真っ赤な野点の椅子と
    大きな野点傘が
    まるで映画のセットのように設置されていた。

    僕たちはそこに仲良く並んで座り
    できたての本格的な
    宇治抹茶を飲むことにした。

    鮮やかな緑色の抹茶をすすると
    口いっぱいに想像以上の苦い味が広がった。

    「……苦っ」 抹茶の器をのぞき込み
    僕は思わず顔をしかめて呟く。

    すると、隣に座るけいくんが
    少し下がった眉を柔らかな角度に曲げて
    ふわりと小さく笑った。

    その無防備で優しい笑顔は
    高校生のあの頃と何も変わっていない。

    僕は少しだけ
    むっとした顔を作ってみせた後
    自然と顔を上げて空を見上げた。

    あの頃、けいくんに向けていた
    ヒリヒリするような
    コントロールできない熱い感情は

    この抹茶のほろ苦さのように
    今では僕の中で静かに
    そして確かな「温かい思い出」として
    溶け込んでいる。


    見上げた京都の空は
    どこまでも高く
    澄み切った青色をしていた。

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