斉藤ななこ 2026 05/01 物語その2
DRIFT断片ログ #06
「砂の溝」
目を閉じても、音が残る。
低音のあいだに、
細かい擦れ。
砂みたいなやつ。
誰も何も言わない。
ここでは、普通らしい。
目を開ける。
ブースの奥、動く。
レコードが変わる。
カチ。
少しだけ、遅い。
なんか、重い。
隣で、狐のやつが笑う。
「今年、早いらしい」
何がかは言わない。
手の甲を見る。
スタンプ、まだ残ってる。
さっきより、にじんでる気がする。
触る。
少し熱い。
床に、砂。
前もあった気がする。
今もある。
増えたかどうかは、わからない。
低音が、少しだけズレる。
体が先に動いて、
音があとから来る。
変な感じ。
一瞬だけ、音が途切れる。
何もない。
でも、完全じゃない。
細い音だけ、残る。
ブースの奥で、誰かが何か言った気がする。
聞こえなかったことにする。
くまは、まだ揺れてる。
止まってない。
針がまた落ちる。
さっきと違う。
同じじゃない。
でも、どこか似てる。
うさぎは、手を握る。
スタンプ、まだ消えない。
断片
消えないものは、
たぶん、持って帰ることになる。
log:06
状態:during
音:ズレ
砂:ある
印:残る
DRIFT断片ログ #07
「持ち帰り」
外に出る。
街、うるさい。
さっきより、少しだけ強い。
ネオン、目に刺さる。
歩く。
普通のはず。
でも、少しだけ違う。
ポケット、何も入れてない。
確認する。
やっぱり、ない。
手の甲を見る。
スタンプ、まだある。
洗う。
落ちない。
強くこする。
少しだけ、にじむ。
でも、消えない。
なんか、残ってる。
音じゃない。
物でもない。
でも、ある。
帰る。
部屋、静か。
ベッドに座る。
目を閉じる。
低音。
さっきのやつ。
まだある。
止まらない。
スマホが光る。
知らない番号。
出る。
「それ、持ってるでしょ」
男の声。
落ち着いてる。
「……何を?」
少し間。
「わかってるはずだけど」
切れる。
部屋、また静か。
でも、完全じゃない。
低音、まだ残ってる。
手の甲、触る。
少しだけ、あったかい。
断片
運ぶものは、
最初から見えてるとは限らない。
log:07
状態:outside
音:残留
対象:不明
依頼:開始