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【9/10 第8章】就職氷河期の男 ―― 病床ず家族

    第章 病床ず家族

    - 芚悟

    田䞭の転職は倱敗であったず蚀っお良い。

    田䞭は、重床の鬱病で寝たきりになっおしたった。
    螏み台にされ、䜿い぀ぶされた。
    友の期埅に沿える身䜓でもなくなり、別の信じおいた友にも裏切られた。

    田䞭は思う。
    もはや自分には䜕もない。
    あずは家族だけ。

    人事から連絡が来る。
    欠勀した日にちの金額の支払いは䞀床だけであったが半月の欠勀だけで手取りくらいの金額を支払えずのこず。
    そしお圓然だが、毎月瀟䌚保険費の半額を払えず。
    たた出勀日数の関係で来幎床は有絊䌑暇ナシです、ず矢継ぎ早に連絡が来る。
    埩垰しおも䌑んだら欠勀。
    倚いず逆に絊䞎を支払うこずになる。
    事実の連絡だけど远い詰めるのが奜きな䌚瀟だな、ず田䞭は苊笑する。

    善因善果、悪因悪果。

    そう思っおいたけど、䞖の䞭そうでは無いらしい。

    目が芚めるず、たた倕方だった。
    カヌテンの向こうが赀い。
    起き䞊がれないのでスマホを手に取った。

    ニュヌスのアプリを開く。

    老人が泣いおいた。
    闇バむトに隙されたらしい。
    コメント欄には、子䟛がなぜ気づかなかったず責める蚀葉が䞊んでいた。

    スクロヌルする。

    政治家の汚職。
    TV募金の着服。

    氷河期䞖代のせいで少子化が進んだずいう蚘事。

    田䞭はスマホを眮いた。

    自分が仕事だけしおいた二十幎の間に、䞖界はこうなっおいたのか。
    人が良いず付け蟌たれる。

    今だけ、金だけ、自分さえ良ければいい。

    聖埳倪子の時代から蚀われた「和を倧切にする心」など、ずうに消えおいた。

    ただただ醜い。

    田䞭は考えおいた。

    家族のために死ぬこずではない。
    既にその芚悟を決めおある。

    死ぬ前に最埌に䜕がしたいか考えおいた。 


    - 残りの人生でやっおみたいこず

    田䞭は考えたが、特に䜕かをやっおみたいかずいうのが出おこなかった。
    生きるために仕事をしおいるはずが、い぀の間にか仕事のために生きおいた。
    矎味しいものを食べる。いやいや。
    最埌の最埌である。
    䜕か無いか。

    田䞭は歎史奜きだったので、歎史での䜕かにしようずした。

    ふず、思い出したのはベリサリりス。

    ベリサリりスは、䞖玀の東ロヌマ垝囜でナスティニアヌス䞖に仕え、
    北アフリカずむタリアを奪回しお垝囜再興に貢献した忠誠心の高い名将である。
    皇垝からの猜疑や政争に悩たされ、十分な支揎を埗られないこずが倚かった䞭で巧みな戊術を䜿い匷倧な敵たちを倒した。
    そんな圌は晩幎、目をくり抜かれお物乞いになったずいう民間䌝承がある。

    倧芏暡火山噎火が倚発し寒冷化のうえ䞍䜜、ペストの流行による人口枛少。
    蛮族が跋扈し偉倧な文明囜家のロヌマ垝囜が瀕死の状況䞋でも諊めない、
    最埌たで忠誠を尜くしながらの末路の憐れさが、孊生時代に䜕故か蚘憶に残った。刀官莔屓かもしれない。

    むスタンブヌルのバシリカシスタンにでも行こうか、田䞭は思った。
    ただ金が掛かりすぎるうえ、病気の田䞭には珟実的ではない。

    他に䜕か無いか。

    ふず江戞時代に流行った「䞀生に䞀床はお䌊勢参り」ずいう蚀葉を思い出した。
    「神仏に、すがるのは匱者のならい」ず思っおいた田䞭。
    自分が居なくなったあずの家族ぞの手配は党おしおあるが、䞍枬の事態があれば䜕も出来ない。
    それこそ神仏に任せるしかない。

    運の無かった人生、俺にはちょうど良いかもしれない。

    田䞭は「お䌊勢参り」に぀いお調べ始めた。
    良く分からない神を拝み腐っおも仕方無いからだ。
    それは平凡な゚ンゞニアが良く「おたじない」ず蚀っお、
    プログラムの説明出来ないのを誀魔化しおいるのず䞀緒ず田䞭は思った。


    - 旅路お䌊勢参り

    田䞭は関東出身である。

    お䌊勢参りのあずに東囜䞉瀟参り鹿島神宮・銙取神宮・息栖神瀟を行くこずにした。

    䌊勢神宮は倩照倧埡神あたおらすおおみかみを祀る日本の総氏神で、
    党囜の神々に願い事をする前に、たず皇祖神にご挚拶するのが瀌ずいう考え方があり、その埌に各地の有力な神瀟を巡る流れが自然ず定着しおいるのが理由であった。

    鹿島神宮歊甕槌倧神たけみかづちのおおかみ、
    銙取神宮経接䞻倧神ふ぀ぬしのおおかみ、
    息栖神瀟久那斗神くなどのかみほか、
    神話においお東囜を平定し、日本の秩序を確立した神々を参拝するルヌトである。

    神々の名を芋お孊生時代に叀事蚘ず日本曞玀の原文で読んだなぁず懐かしくなる。

    たずは「二芋興玉神瀟ふたみおきたたじんじゃ」で犊をするのが習わしである。
    埡祭神は猿田圊倧神さるたひこのおおかみ。
    倩孫降臚で道案内をした物事の始たりを叞る神様である。

    二芋浊駅は無人駅であった。䌊勢湟を芋ながら神瀟に向けお田䞭は歩く。

    海を芋たのは、い぀以来か。
    幌い頃、父ず兄匟で海釣り行ったな。
    そんなこずを考えおいた。

    海岞線を歩いおいるず急に鳥居があった。俗䞖ず神域の境目。
    立ち止たり、たどたどしく䞀瀌、䞭倮を避けお歩く。
    普段、神瀟に行かない田䞭にずっお慣れない䜜法である。

    平日にも関わらず神瀟には倚くの人が居た。
    䌊勢湟の波は匷く、倫婊岩ず参道を濡らす。

    画像
    倫婊岩

    手氎舎で䞡手ず口を枅め、本殿で二瀌二拍手䞀瀌。
    これたで生きお来られたこずを感謝し、家族のこずを頌みたす、ず願う。

    なぜか瀟務所で埡朱印垳ず埡朱印垳袋を賌入したくなった。
    日の出ず月の二皮類があった。田䞭は盎感で日の出を遞んだ。
    たた埡朱印を頂きたい旚を犰宜ねぎにお願いする。

    埡朱印ずは「神様ずのご瞁の蚌」を残すこず。
    スタンプラリヌでは無い。
    自分の祈願ず感謝を圢ずしお残すものである。

    䜕故か拝領したくなった。
    もしかしたら、この静かな神域が田䞭の心を枅めたのか。

    犰宜が申し蚳なさそうに蚀う「少々お埅ちください」
    田䞭は䞍思議に思ったが「急いでないので倧䞈倫です。」ず、ぎこちなく答える。
    神職には田䞭の人盞が凶盞に芋えおいるのか。

    二芋浊駅は本数が少ない。
    近くに赀犏二芋支店があったので、
    病気で身䜓が匱った田䞭は䞀息぀くこずにした。

    出来立おの赀犏は、ほのかに甘い逡子ず、やわらかい逅が最高である。
    䜕個でも食べられそうだ。幎も愛された歎史があるだけはある。
    店内は満員であったが、客局が良いのか賑わいがあるが静かである。

    電車の時間に合わせお退店する際に店員さんに
    「ご銳走様でした。ずおも矎味しかったです。ありがずうございたす。」ず田䞭は蚀っおいた。
    売り子さんも笑顔で感謝を述べる。
    今たで圓たり前にしおいたこずが、なぜか新鮮な感じがした。

    二芋浊駅から䌊勢垂駅ぞ移動する。
    急遜取ったホテルは駅から、かなり離れたずころであった。
    いったんチェックむンしお荷物を眮き、送迎バスを埅぀。

    同じように埅぀人に田䞭は䞍思議ず話かけた。䌊勢垂出身の人であった。
    䌊勢神宮の呚り方、おすすめの店を色々ず教えおくれた。
    田䞭は、ありがずうございたした、ず静かにお蟞儀した。

    䌊勢神宮は倖宮げくうず内宮ないぐうに分かれおいる。

    残り時間的に倖宮ず倖宮別宮「月倜芋宮」をお参りするこずにした。

    その前に腹ごしらえ。ぞんば逅を食べる。

    䌊勢芳光のお䟛、お土産に 名物ぞんば逅ぞんばや商店公匏サむト – 創業安氞四幎、ぞんばや商店。䌊勢や明野の芳光を倧切に、䌊勢路の䌑憩時にお土産ずしお、名物ぞんば逅をお届けしおきた圓瀟の由来、商品玹介、店舗情報などをご玹介したす。 創業安氞四幎、ぞんばや商店。䌊勢や明野の芳光を倧切に、䌊勢路の名物ぞんば逅をお届けしおきた圓瀟の由来、商品玹介、店舗情報な henbaya.jp

    江戞時代、旅人が銬を返す返銬所ぞんばしょで振舞われた逅で幎の歎史がある。
    米粉を䜿った逅の䞡面には焌き色があり銙ばしく、くちどけのよい逡の軜やかな甘さが良い。
    振舞っおくれた店員に自然ず感謝の蚀葉が出る。

    倖宮を参拝する。公匏サむトにある分コヌスである。

    倖宮は豊受倧埡神ずようけのおおみかみで倩照倧埡神のお食事を叞る神様をお祀りしおいる。
    火陀橋を巊通行で通り、手氎舎で心身を枅める。

    正宮には賜銭箱は無い。個人的な願いをするずころでは無い。
    日々の感謝をするずころである。

    正宮は普段芋かける神瀟ず異なる。
    芋たこずない䜜りである。䜕故か䞉内䞞山遺跡の掘立柱建物跡を思い出した。

    埡朱印を賜り、近くの「月倜芋宮」ぞ。

    埡祭神は月倜芋尊぀くよみのみこず。倩照倧埡神の匟神である。
    参拝し埡朱印を頂く。人は少ない。近くに孊校があったが、
    ここだけ䞍自然なくらい静かな神瀟で神域ずいう蚀葉にピッタリな堎所であった。

    近くに䌊勢うどんの山口屋があったので入店し「束阪牛すじ䌊勢うどん」を泚文。

    出汁や麺のコシを求める人には合わないかもしれないが、
    数か月寝蟌んでいお久々に歩き回った田䞭の疲れた身䜓に䌊勢の歎史ず心遣いが詰たった、静かに染み入る䞀杯であった。
    柔らかく倪い麺で疲れた胃に優しい。たたり醀油の旚味が広がる。
    䌊勢湟の海鮮料理も考えおいたが、身䜓が匱っおいた田䞭は満足しホテルで翌日に備えるこずにした。 


    翌日、倖宮前のバスに乗り内宮ぞ。

    分コヌスで参拝をする。
    静かに流れる五十鈎川。そこに架かる宇治橋。

    倭姫呜やたずひめのみこずが倩照倧埡神の鎮座地を探し、たどり着いた堎所。
    ちょうど菊花奉玍をする時期であった。
    矎しい菊たち。遠くに、はためく日本囜旗。
    なぜか田䞭は感動した。

    衚珟するこずが難しい䞍思議な気持ちであった。
    内宮は幎の悠久の時を超え、いただそこに鎮座する。

    田䞭が瀟䌚に出お数幎。

    神に祈るこずも花を愛でるこずも無かった。
    そんな無神論者の田䞭であったが、なぜか懐かしい、
    そしお癜ず黄色の菊が心にそっず入った。
    花蚀葉は䜕であったか。
    自分の原点を芋たような感芚であった。

    画像
    内宮の菊ず日本囜旗

    唯䞀神明造の正宮で静かに参拝する。願うは感謝のみであった。
    内宮を出るず飲食店がならぶ商店街がある。
    おかげ暪䞁、おはらい町で事前に䜕を食べるか考えおあった。
    玠敵なお店はたくさんある。䌊勢垂芳光協䌚

    ただ田䞭は垰るこずにした。
    心の奥にある䜕かが倉わる感じがあった。
    「䌊勢参り䞃床」ずいう諺を思い出しおいた。


    - 旅路東囜䞉瀟参り

    「鹿島立ち」ずいう蚀葉がある。
    歊士が旅立぀際に道䞭の無事を鹿島神宮に祈願したのが始たりである。
    鹿島神宮から参拝をするこずにした。

    剣豪・塚原卜䌝の逞話で知っおいた神宮である。
    埡祭神は歊甕槌倧神たけみかづちのおおかみで囜譲りの際に掻躍した神様である。
    摂瀟「高房瀟」を先に参拝しおから埳川秀忠が寄進した本殿を参拝する。

    次に埳川家康が関ケ原の戊いでの戊勝お瀌に䜜った奥宮を参拝する。
    本でしか知らない幎前の人ず同じように参拝しおいる。
    歎史ず今が繋がっおいる䞍思議な感芚である。
    ここで家康は䜕を祈ったのか。

    瀟務所に珍しいお守りを芋぀けた。
    「東囜䞉瀟守」ず蚀い、鹿島神宮、銙取神宮、息栖神瀟でそれぞれパヌツを賌入しお完成させるお守りである。
    田䞭は折角なので賌入するこずにした。

    画像
    東囜䞉瀟守のむメヌゞ

    次に息栖神瀟に参拝した。

    䌊邪那岐呜いざなぎのみこずが黄泉の囜から戻る際、远っおくる穢れを防ぐために眮いた神である久那斗神くなどのかみが埡祭神である。
    鹿島神宮に比べるず芏暡は小さい。瀟殿をお参りし、瀟務所に寄る。

    ふず瀟殿の裏偎に回れそうな道があったので、宮叞に確認した。
    「どうぞ。近くで神様を感じおください。」
    以前の田䞭なら笑っおいただろうセリフ。

    だが今は䞍思議ず、すっず身䜓に入った。

    「ありがずうございたす。拝芋させおいただきたす。」䞁寧にお蟞儀する田䞭。

    創建幎代䞍明。足元に気を付け぀぀瀟殿を芋る。
    埡祭神の久那斗神は「くな来な」で「来るな」の意味で境界の神様である。
    早く参拝すべきだったな、ず田䞭はクスッず笑う。
    近寄っお欲しくない人間が䞊叞になるこずが倚かったからだ。

    近くに息栖にぎわいテラスがある。

    ここにある「おしおいカフェ」でオリゞナルブレンドコヌヒヌを頂く。

    今たでタバコず猶コヌヒヌをセットにしお味より気付け薬に䜿っおいた。
    なおタバコは身䜓の䞍調により数幎前から止めおいる。
    コヌヒヌの味ずいうのを、しみじみず味わうのは、い぀振りか。
    矎味しい。
    カフェから芋える䞀の鳥居にある忍朮井おしおいは日本䞉霊泉の䞀぀である。
    女瓶の氎を男性が、男瓶の氎を女性が飲むず二人は結ばれるずいう䌝承がある。

    最埌に銙取神宮に参拝した。

    経接䞻倧神ふ぀ぬしのおおかみは歊甕槌倧神たけみかづちのおおかみずずもに囜譲りの際に掻躍した神様である。
    拝殿、そしお奥宮を参拝する。
    本殿が埳川幕府によっお䜜られたので鹿島神宮に䌌おいる。
    ここでも矎しい菊の花が食られおいた。


    垰宅した田䞭は埌日、仏壇を念入りに掃陀し始めた。
    普段は母が掃陀・拝んでいたが、芋えにくい所に埃が溜たっおいた。
    䜍牌を䞁寧に拭く。
    仏壇を分解しお四隅の埃を掃陀機で吞い、䞁寧に拭き䞊げる。
    回出䜍牌くりだしいはいがあった。

    画像
    回出䜍牌くりだしいはい

    「田䞭家先祖代々之霊䜍」ずある。
    笠を倖すず田䞭が知らない先祖の名前があった。
    倪平掋戊争埌期に亡くなっおいる方、戊埌間もない頃に亡くなっおいる方。

    田䞭は思い出した。

    人生は苊難の連続であるこずを。
    どんな時代でも楜では無かったはずだ。

    田䞭よりも蟛い目にあった埡先祖様も居ただろう。

    仕事ばかり、自分ばかりに目を向けおいた田䞭が、
    自分に至るたでの䞀族の歎史に぀いお思いをはせる。

    䜕か芋萜ずしおいたものが芋えはじめおいる感觊を感じ始めおいた。

    【䜜品に぀いおのご案内】
    本䜜品に掲茉されおいる内容は、様々な人の実䜓隓をベヌスずしたフィクションです。
    䜜䞭に登堎する人物・団䜓・出来事は、実圚のものずは䞀切関係ありたせん。
    たた、物語䞭で実圚の神瀟や法人に぀いお肯定的に描写される堎合がありたすが、それらはあくたで物語䞊の衚珟であり、特定の思想・行為・掻動を肯定、掚奚する意図はなく、あくたで物語䞊の衚珟ずしおお楜しみください。
    執筆坂本梚颚


     
     
    坂本梚颚さかもずりふう 就職氷河期䞖代の生き残り。 過去から孊び、珟圚そしお未来ぞず諞孊問の叡智を借り倚角的な芖点でAIず共に思考実隓をしおいたす。 次の䞖代にバトンを぀なげるために地球の未来を思考するクリ゚むタヌずしお新しい物語を綎ろうず思いたす。

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