
「ちょっと勇気を出したのは、診察を予約制にしたこと」
今回のお題は「ちょっと勇気を出したこと」。
改めて振り返ってみると、私にとってのそれは、病院のシステムを完全予約制に変えたことだった。最初から大きな決断があったわけではない。始まりは、もっと小さくて個人的な理由だった。
金曜午後だけ、予約制にしてみた

10年ほど前のことだ。当時はよその動物病院と同じで、朝9時から12時まで診察、12時から4時の間に手術や処置、麻酔などを行い、その合間にランチを済ませ、4時から7時はまた来院した患者さんを診る。日曜日は朝9時から12時だけ、自由に来ていただく形にしていた。ごく標準的な動物病院のスタイルだったと思う。
そこに風穴を開けたのは、実に個人的な理由だった。金曜日の午後だけ、どうしてもお友達の読書会に行きたかったのだ。他に獣医師がいなかったので、病院を抜けるには診察時間そのものを変えるしかない。頑張って、その時間だけ予約制にしてみることにした。
正直、怖かった。予約制にしたら患者さんが来なくなるんじゃないか、患者さんが減って経営に差し障るんじゃないか。そんな不安がずっと頭にあった。
ふたを開けてみたら、好評だった
心配は杞憂に終わった。それどころか、まったく逆の反応が返ってきた。診察時間がはっきり決まっていることに安心する、先生とゆっくり話せる、と喜んでもらえたのだ。予約制は、思いのほか好評だった。
待たされることに慣れていただけで、飼い主さんも本当は「決まった時間に、ちゃんと話を聞いてもらいたい」と思っていたのかもしれない。そう気づかされた出来事だった。
コロナを機に、完全予約制へ
そして、コロナ禍。ここで思い切って、病院全体を完全予約制に切り替えた。
変えてみると、朝6時から診察したことさえある。診察や手術を朝のうちに全部終わらせて、午後は出かけることもできるようになった。時間の自由を、自分たちの手に取り戻した感覚だった。
患者さんにお願いしたこと
私は患者さんにもお願いした。勉強会に行きたい、ゆっくり寝たい、手術や診察に集中したい。だから完全予約制にご協力ください、時間を守ってください、と。
返ってきたのは「そうよね、先生だってゆっくりならないとね」「先生、元気でいてね」という言葉だった。ありがたい反面、私を年寄り扱いしているのでは、と少し腑に落ちない気持ちもあった。それでも、患者さんの協力を得られたことは、本当にありがたかった。
まとめ
読書会に行きたい、という小さなわがままから始まった予約制は、10年かけて病院のあり方そのものを変えた。そして何より、私自身の働き方と時間を、私の手に取り戻してくれた。
私がちょっと勇気を出したこと。それは、病院を予約制にシフトしたことだった。