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そよ風が頬をなでるまで

    第1章:幸せだった日々と、忍び寄る影

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    誕生日の日は苺のホールケーキを買ってきて、ロウソクを立てる。電気を消してロウソクに明かりを灯しハッピーバースデーを歌う。

    「ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーユアしん君。ハッピーバースデートゥーユー」

    誕生日の日はしん君の大好きな、デパートで買った霜降りステーキ。毎年の恒例だ。

    29歳の初夏の頃、朝がた誰かに名前を呼ばれた。

    「りえちゃん」と。そして体がすっと起き上がった。それが全ての始まりだった。仕事は生命保険会社のコールセンター。入社したばかりの時、スタッフの自己紹介があった。

    その時紹介された男性スタッフがとても印象的だった。

    それと同時に、この人に近づいてはいけないという思いが湧きだった。それから業務でその男性スタッフに用があるときは、他の女性スタッフを介して伝言してもらったり、書類を渡してもらったりした。

    男性スタッフに対する感情は簡単に言えば好きだという感情になってしまうが、なぜか恐ろしくて近づけなかった。

    それから日々をこなしていく中で、男性スタッフが夢に出てくるようになった。

    「僕のことどう思っているの?」と。

    私は苦しくなった。結婚して愛する人がいるのに、ほかの男性に激しく心を奪われてしまったからだ。

    ​第2章:精神世界の牢獄と、悲しい別れ

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    お昼休憩は社内で食べずに外のカフェで摂る事が多かった。

    ある日いつものようにカフェでランチを済ませて帰ろうとすると、その男性スタッフが私が見えるテーブルに座ってこっちを見ていた。ドキッとした。

    習い事で英会話を習っていたが、帰りに男性スタッフを見かけた。私がよく行くパン屋さんでパンを食べているときも、窓の外からサングラスをかけた男性スタッフが私をじっと見ていた。

    また朝会社に行く前にカフェに寄るが、私が座っている斜め前に新聞で顔を隠した長身の男性がいた。

    私はその人が男性スタッフだと確信して、男性スタッフは私のことが好きでストーカーされているんだと思い込んだ。

    夜中ふと目が覚めて化粧をして外に出た事があった。

    すると道路を挟んだ道の向こうに男性スタッフらしき人が走ってやってきて、こちらを見ているように思えた。

    本当に男性スタッフに心を奪われてしまった。他に好きな人ができてしまった。辛かった。誰にも相談出来なかった。

    私はしん君に離婚届を書いてもらう事にした。

    ガラス戸を挟んだ向こうでしん君が離婚届を書いていた。私は声を殺してずっと泣いていた。

    あの時、声を殺して泣かずに、泣き叫べば良かった。苦しいとしん君に打ち明ければ良かった。そうすればこんな悲しいお別れをせずに済んだかもしれない。

    家を出ていく当日、しん君が「僕のことはきにしなくていいよ」と言ったその姿が今でも心にずっと残っていて、思い出す度に胸が張り裂けそうになる。本当に悲しい別れだった。

    家を出た後は知り合いの家に居候させてもらっていたが、その時から幻聴が始まりだした。当時ピアノを習っていて、キーボードでヘッドホンをつけて練習していた。するとメロディーに合わせて隣の部屋から鼻歌が聞こえてきた。

    私が居候していた部屋の隣は、空室。そしてトイレの音姫から「言えー言えー全部言わんと殺すぞー」という恐ろしい声が聞こえるようになった。

    だんだんと居候先の家に、こっそり男性スタッフが住んでいると感じるようになった。

    職場で私と男性スタッフが一緒の家に住んでいると噂が流れた。その時はそう感じていた。辛くなって家で泣いていると、「俺がなんとかしちゃる。俺がなんとかしちゃる」と何度も聞こえてきた。その男性スタッフと心で会話出来ると思った。

    そして家を出ようとした時に男性用のカバンが玄関に置いてあり、その日カフェに行くと、そのカバンをボディバックとして身につけている男性スタッフをカフェの窓から見かけた。

    居候している家の人に、ここの家族以外に人はいるかと尋ねると、いないと言われた。

    ある日私は思い切って、居候先の女性の家族に、私は人の心の声が聞こえると話した。

    その翌日、私をこれ以上家に置けないと言われ、居候先の家族の車で、物件を見に行き、あっという間に一人暮らしのアパートが決まってしまった。そして悪夢の一人暮らしが始まった。

    引っ越し前日、まだ荷物の整理が出来ていないでいると、

    「りえちゃんが出ていくなら俺も出ていく!!」と心臓にガンガン声が響いてきた。何度も何度も声が響き、あっという間に引っ越しの準備が終わった。

    不思議なことに、しん君と離れてから一度も寂しいと思わなかった。なぜかいつも心がポカポカと温かかったのだ。

    精神世界に引きずり込まれていたので、寂しいという感情が湧いてこなかったのかもしれない。あるいはそうさせられていたのかもしれない。

    しかし薬をちゃんと飲み出して正気に戻ると、しん君と離婚したことが悔やんでも悔やまれなかった。

    あんなに愛していた人と、なぜ別れなければならなかったのか。思い出す度に辛く胸を押しつぶす。

    職場では男性スタッフの声が頭にがんがん響きレイプされた。レイプされる感覚が体中を駆け巡った。頭から聞こえる男性スタッフの声でトイレに連れて行かれ、トイレの中で泣きながらレイプに耐えた。頭の中で男性スタッフの声が響き、体中にその感覚が駆け巡った。そのまま会社を早退し、家に帰り裸にさせられた。

    ある日職場のトイレで自分の頬を叩きまくった。トイレから出て鏡を見ると両耳のピアスが無くなっていて、ブラウスに血が飛び散っていた。

    自分は悪魔に取り憑かれたんだ。でもどんなに頬を叩いても幻聴は収まらなかった。

    仕事中は椅子に張り付けにされたように、体が固まって動かなかった。頭から重い膜を被せられたようにズーンと頭が重く、動くことが出来なかった。

    いったいその状態でどうやって仕事をやっていたのか分からない。誰も私の異変に気が付かなかったのか。もしくは気付いていたのか。

    家のチャイムがなったので受話器を取ると、「りえちゃーん」という男性スタッフの声が聞こえて、恐怖で受話器を切った。外を歩いていると、常に卑猥な言葉を浴びせられ、「りーえちゃん、りーえちゃーん」とい男性の声が聞こえていた。布団で寝ていると、シーツに染みが付いていて、声によってそれが生理の血だとわかった。

    ただの生理の血なのに、男性の声によって知らされたので、ものすごい恥ずかしめを感じて、物置の板をこぶしでたたきまくった。すると玄関のドアがドンドンとたたかれた。

    無視してまた物置を叩き続けると、また玄関をドンドンとたたかれた。玄関をあけると、おじさんが「おまえのとこは暴れるためか!!警察呼ぶぞ!!」と怒鳴られた。

    「どうぞ呼んください!!」と言い、玄関の前でカバンを持って正座して待っていた。すると幻聴が「りえちゃん警察来ないよ」と言ってきた。本当に警察は来なかった。

    恐怖で外に出ると頭のなかで車のクラクションが大きく響き、うずくまった。

    壁や天井、部屋の下から、ドンドンという音や男性や女性の声、水の流れる音、蛇口を閉める音、さまざま音が聞こえた。電波もずっと壁から当てられていた。外を歩く時、ずっと足を電波で繋がれている感覚があった。

    恐怖で何度も電話で警察を呼ぼうとしたが、何度かけてもプチっと切られたので、家から警察署まで走って行った。

    走っている最中は「りえちゃん頑張れ、りえちゃん頑張れ」という天使の声が聞こえてきた。警察官に家の中を見てもらい、家にいられないなら別の場所に行くように言われ、パトカーで駅前の快活クラブまで送ってもらった。

    翌日には帰り、幻聴と幻覚、妄想の精神世界に引きずり込まれたまま、悪魔祓いをしたりしていた。

    会社の健康診断で尿検査があったがトイレで尿を取ろうとしたとき、幻聴の男が壁を蹴ってきた。血液検査で採血する時、笑わせられて必死でこらえていると、看護師さんに心配された。

    聴力検査でヘッドホンを付けると、「言えー全部言わんと殺すぞー」と聞こえてきて、検査にならなかった。もちろん健康診断にも男性スタッフと監視が付いてきている感じがしていた。

    トイレ中も全て監視されていた。用を足す時、「りえちゃんうーん」と言われたので、大便が出来ず、便秘になった。

    バスに乗った時や道を歩いている時、顔が勝手に動いて笑おうとする。必死に堪えるために下唇をぎゅっと噛み締めた。

    噛みすぎて下唇がかさぶただらけになった。

    また勝手に笑わされる事もあったのでその度に下唇を噛んだ。

    ある時、モノレールを降りるとスーツを着た男が私をちらっと見てきた。その男が私の美容院にまでついてきていた。

    監視という言葉が怖かったので、勝手に護衛と呼んでいた。

    私はこのまま精神病院に入院して死んでいくんだ。そう思った時自分の生命保険証書をしん君の家まで持っていき、しん君に生命保険証書を渡して帰った。

    なぜその時、しん君に助けを求めなかったのか。

    現実主義の自分が、悪魔に取り憑かれたなんてとても言えなかった。それが病気であることも気付かなかったから。

    病院に行こうと、心療内科の前まで行ったがお休みだった。

    ある時、お母さんの声がした。

    ドアの向こうで「りえごめんね。あんたにいっぱい意地悪したごめんね」と言っていた。私がドアを開けようとすると、私はそっちには行けないと言った。私はお母さんが死んだと思い泣きながら、「お母さん、愛してるよ」と何度も言った。

    神様にお母さんの魂を導いてもらえるようお祈りした。深夜の事だったが、お母さんが死んだと思ったので、弟の職場に電話すると、弟が出てくれた。「お母さんと話した?」と聞くと、話したみたいなこと言っていた。よく覚えていない。

    それから、私は総理大臣の娘で命が狙われていると思ったり、常に監視されているのは護衛だと思ったり、幻聴に男の子が出てきて、一緒に歌ったりした。しかしシャワーで髪の毛を洗っていると「言えー全部言わんと殺すぞ」という恐ろしい声が聞こえてきて、髪の毛を洗えなかった「りえちゃん大丈夫?」と幻聴の男の子が声をかけてきた。

    悪魔が全身を這いずり回る感覚もあり、壁から常に電波を浴びせられていたので、隣に恐ろしい宗教団体がいて、ずっと壁から電波を送っているんだと思った。

    兵隊の整列する足音が聞こえて、キッチンでよくドンドンという足音が聞こえた。歯磨きしている姿を鏡でちらっと見ると、「りえちゃんかわいい」と言われたのでずっと鏡を見ながら歯磨きした。

    第3章:再会、そして薬との戦い

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    限界になり、頑張って走ってしん君の家まで行き、しん君に病院に連れていってもらった。病院の待ち時間の最中も、ずっと男の声が聞こえ、レイプされ続けていた。一度病院から出たが、しん君に病院に連れ戻された。

    病院で薬をもらってしん君と別れたが、家には居れず、しん君の家に行ったが、しん君はいなかった。家に入り一人でいると、のた打ち回るほど頭が痛くなり、心療内科の薬を飲もうとすると、「全部飲めーーーーーーーーーー!!!!」という恐ろしい男の声が頭に響き、薬を全部飲んだ。

    具合が悪くなり、しん君に電話をして、帰ってきてもらった。

    3日ほど入院して、退院した。

    その後一人暮らしの家に戻ったが、お母さんが東京から来て一緒に住んでくれる事になった。お母さんと数日過ごしたが、その間に、しん君と会い、しん君の家に泊まるようになった。

    それからずっとしん君の家にいるようになった。しかし、しん君の家で寝ているときも常に悪夢を見て、目が覚めると「なんのお話をしようか」と恐ろしい男の声が聞こえてきた。

    目をつぶってると、男性スタッフの恐ろしい顔も見えた。

    起きている間は常に声が聞こえて、寝ると悪夢を見る。1秒足りとも気が休まらなかった。

    しん君と手を握り合わせて「神さま助けてください、神さま助けてください!」と声に出して必死に祈った。すると「しょーがねえな」と男の声が聞こえて苦しさが消えていった。

    それから1年くらいが過ぎ、しん君と復縁する事が出来た。

    会社を辞めて、病院に通い、薬を飲む生活が続き、幻聴と幻覚も落ち着いてきた。

    しかし薬の副作用として、夕方まで眠ったり、常に無気力になったり、体重が30キロも増えてしまったりした。

    太った事が嫌でたまらず、オーバードーズもして入院した。

    オーバードーズは3回くらいしてしまった。

    そんな日々が4年くらい続いた。

    4年の間に薬が色々と変わった。胸が膨らんできたり、体重が増えたことが嫌で先生に相談して薬が変わった。

    ある日ラツーダという新しい薬を試した。すると夜に家にいられないほどソワソワして、しん君と夜中に外を歩き回った。

    なんとも言えない苦しみだったが、あんな思い二度としたくないと思い、薬を飲まなくなった。

    当時体重増加をすごく気にしていたので、栄養の勉強をして、ダイエットに挑んだ。

    栄養コンシェルジュ2ツ星の資格も取った。

    病院の薬は飲んでいなかったが、スルスルと体重が減っていき、40キロまで痩せることが出来た。そして何より、毎日元気いっぱいだった。

    朝からラジオ体操を1,2,3と自衛隊体操をして、習い事を掛け持ちして家でストレッチや筋トレ、ピアノの練習や料理など毎日忙しく過ごしていた。

    そんな時、東京に帰っていたお母さんが地元に戻ってくることになった。何となく、お母さんが戻ってくるのが嫌だった。お母さんが物件探しに一度帰ってきた時、保証人の関係でお母さんが嫌になった。それから、お母さんが戻ってきても、お母さんとは一切連絡を取らなかった。

    その間、認知症になった父のお世話や、父を老人ホームに入れる手続きなどで忙しくなった。

    しかし、家の近くでお母さんの幻覚を見かけ、その度に落ち込み、泣き叫ぶ日々が続いた。そしてだんだん監視されているような感覚がよみがえってきた。

    無事父を老人ホームに入れることは出来たが、父が病気になったら、家族が病院に連れて行かなければならない。

    一度父が一人暮らしの時に病院にタクシーで父を連れていき、帰りもタクシーを使ったが、父の家の住所を伝えても分からないと言われた。そのまま出発してしまい、家から離れたところで降ろされてしまった。タクシー代は払ったが、足の悪い父を連れて帰るのは大変だった。

    老人ホームに入ったあともタクシーで父を病院に連れて行くことがあったが、道が分からないと言われたりして、タクシーを使うのが嫌になった。

    タクシーが使えないので、父を歩いて病院まで連れて行くことにした。病院の行き帰り、父は息が苦しそうだったので、何度もおんぶしようとしたが、出来なかった。

    すると1台の黒い車が止まって、父と私を老人ホームまで送ってくれた。その人は近くの老人ホームのスタッフさんだった。

    他人に迷惑をかけ、父にも大変な思いをさせてしまった責任に追い詰められて、バリカンを買いに行き、自分の頭をバリカンで剃った。しかし失敗し、とても人には見せられない状態になり、外に出るときは頭を隠すようになった。

    それからしばらくして、監視されている感覚はずっとあったが、3日間ほど一晩中眠れない日が続いた。眠りたくても、精神世界の牢獄部屋に閉じ込められ、眠らせてもらえず、ずっと幻聴が聞こえていた。

    朝、頭がクラクラしながらしん君を仕事に見送った。

    しん君が家にいる時、抑え込まれる苦しみが襲ってきて、風呂場で裸になり冷たくなった風呂の残り湯を洗面器でくみ頭からかぶった。

    湯船が空になるまで全ての水を頭からかぶった。その後ベランダの窓を明け放して真冬の冷気に体を当てた。すぐ横に全身鏡があり自分の顔を見ると、口が勝手にがたがたと震えだし、顔が般若の顔のように歪んでいった。

    昔お母さんが怒った時によく般若の顔をしていたその顔だ。

    その時気づいた。お母さんもコントロールされていたんだと。お母さんもずっと苦しんでいたんだと。

    般若の顔は自分でもコントロールする事が出来たので、私は心に刻むように何度も般若の顔をした。

    しん君とタクシーに乗って老人ホームにお菓子を持って行った時、しん君にタクシーで待ってもらい、一人でお菓子を渡して戻ると、タクシーの色が変わっていた。

    恐らく乗ってきた時は黒色だったが、明らかに茶色に変わっていた。

    色の変わったタクシーの中にいたしん君は普通だった。

    家に帰り、空のはずの冷凍庫を開けると、私が買いたいと思っていた冷凍の魚が2袋入っていた。これにはかなりびっくりした。その後、ご飯を食べても、味のしない事があった。

    しん君がスマホゲームアプリでキラカードをめくるゲームをしていたが、キラカードがゆっくりひっくり返るのが見えて、それを押すとキラカードだった。

    そして第六感が芽生え、神の存在を認識したり、夢でレイプのような事もされたりした。

    全てを統治している神の存在を、アインシュタインよりもすごいことを知ってしまったと。

    家にいる時にマッサージ師が体に憑依した感覚になり、自分で自分の体をマッサージしてとても気持ちよかった。

    またある時はお茶の先生が憑依した感覚になり、所作が突然丁寧になったりした。

    外を歩いていると、私の斜め前を男の子が歩いていた。今思えばとても不自然だった。

    バイクに乗って黒い小さなサングラスをかけたおじさんが外で私を監視していた。そのおじさんがユーチューブに表示され、いつも見ていたユーチューブチャンネルの視聴者数が不自然に増えたり減ったりを繰り返していた。

    幻覚であるのは間違いないが、本人からしたらそれが真実だ。実際に見えるし聞こえるのだから。

    監視されている感覚が強くなり、なぜか渋い歌を歌うようになり、自分のことを俺と呼ぶようになった。

    「男はうじうじするな!」当時のカレンダーに書いてあった。監視に対抗するために、真冬に半袖半ズボンで自転車をこいだ。彼らに対抗するには、りえを痛めつけるしかない。

    再びしん君と病院に行き、インヴェガ6ミリを処方してもらい飲み始めたが、胸が張り出して母乳が出てきたので飲むのを辞めた。

    薬を飲み始めたときは落ち着いていたのに、母乳がで出して飲むのを辞めると、言葉に出来ない苦しみが襲ってきた。あまりに苦しかったので、ずっと拒否していたお母さんを家に呼んで来てもらった。薬を飲むと苦しみが落ち着いた。

    それからお母さんと交流していたが、また激しくお母さんを拒むようになった。数カ月お母さんと連絡を取っていなかったが、ある日お母さんの事が気になり、連絡するとお母さんはいつものように話してくれて、また交流が始まった。

    私の病気の事を弟がお母さんに話してくれていたおかげだった。

    それからはインヴェガ6ミリを毎日飲むようになって症状は落着き、神の存在も感じなくなった。しかし1年で体重が10キロも増え、毎日夕方まで寝て、生理も止まり、母乳も出るようになった。

    旅行に行っても薬の強い鎮静作用が効いているので、まったくテンションが上がらなかった。

    母乳と生理停止、体重が増えた事や夕方まで起きられないことを先生に相談してインヴェガを6ミリから3ミリに変更してもらった。

    薬の量が減ったので副作用が落ち着くのを期待している。

    気持ちがモヤモヤする事もあったが、なんとか落ち着いている。

    たとえ体重が増えたり母乳が出る嫌な副作用があったとしても薬は飲み続けなければならない。

    私が苦しむと、しん君が悲しむ。だから薬をちゃんと飲む。

    ​第4章:弟への相談、そよ風がそっと頬をなでるまで
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    振り返ってみると、薬の副作用で薬を飲まなくなって、病気が悪化して、また薬を飲んで副作用で苦しんで薬を飲まなくなって、病気が悪化してる気がする。

    本当は今も薬を辞めたい。そしたら体重ももとに戻ると思う。でも薬を辞めたら、感情が徐々にコントロール出来なくなって、誰かを拒否しだしたり、監視されてるように感じたりして、頭を剃ったり、取り返しのつかないことをしてしまう。もしまた薬を辞めたら、もっと酷いことをしてしまうかもしれない。

    またしん君と悲しいお別れをしてしまうかもしれない。

    この病気の恐ろしいところは、おかしくなったことを本人は自分で気づけず、周りも気づくことが出来ず、取り返しのつかない状態になってしまうこと。

    しん君と復縁はすぐに出来ず1年くらいかかって復縁出来たし、髪の毛も元の長さに戻るまで2,3年はかかる。

    次に病気が悪化したときは修復にもっと長い年月がかかるかもしれない。

    次はどんな取り返しのつかないことをしてしまうのか、自分では分からないから本当に恐ろしい。

    本当に生きているのが嫌になる。

    だって、一生、病気と薬に翻弄されて生きて行かなければならないから。

    しん君と一緒にいたければ、太った自分を受け入れて、誰とも会わずに最低限の買い物をして家に閉じこもって居なければならないのか。

    でもそしたら、私がおかしくなっても誰にも気づいてもらえず、気がついたら、また取り返しのつかない状態になってしまうと思う。今私は太らされて、孤立させられて、また病気の中に引きずり込まれようとしているのかな。

    習い事や、教会に行けば、教会で相談相手を探すことも出来るかもしれない。そしたら、私がおかしくなった時に気づいてもらえるかもしれない。でも今は薬で太った自分が嫌で、教会から遠のいている。

    もしかしたら、今既に、幻覚が迫る準備期間なのかもしれない。なぜなら、インヴェガが6ミリから3ミリに減ったから。

    とっても怖いけど、私一人では防ぎようがない。

    そのうち感情もコントロールされて、人に言えない状態にさせられるかもしれない。そうなったら、しん君はもちろん気気が付かないし、家族にも話さなくなったり、お母さんを拒否しだして、完全に孤立させられるかもしれない。

    今度はいつ、取り返しのつかない事をしてしまうんだろう。

    私は何にコントロールされているんだろう。

    怖い。けれどいつも側には愛する人がいる。

    県外だが、弟もいる。近くにお母さんも住んでいる。

    栄養の勉強もした。インヴェガが減ったからこそ栄養の知識を生かして少しずつ、少しずつ、ダイエットしていこう。たまにしん君と美味しいものも楽しもう。

    何か心にモヤモヤが浮かんだら、思いの丈を文章にして弟に送ろう。私の異変に気づいてもらえるかもしれない。弟は介護の仕事をしていて、精神疾患の友達や患者さんと多く接しているから理解がある。

    そして少しずつ無理せず外に出ていこう。遠のいていた、昔の友達にも連絡してみよう。ちょっとでも疲れたらすぐ休めばいい。

    大丈夫、きっと大丈夫。私は1人じゃない。

    しん君にはなんでも話そう。しん君に言いにくいことは、弟とお母さんに話そう。

    「ひとりで抱えこむこともあやまちになる」

    もっと人を頼って生きていこう。ひとりじゃないよ。

    きっと助けてくれる人がいる。

    今、少しずつ外出するようになった。
    朝しん君を仕事に送り出して昼過ぎまで二度寝する。起きたら、食パンで納豆ハムチーズトーストを作ってフレッシュ入りコーヒーと一緒にいただく。
    心がほっと和らぐ時間だ。

    トーストを食べたら支度して駅前まで出かける。
    ウインドウショッピングをして時々店員さんとおしゃべりする。外の世界とのつながりを感じる。
    駅内の椅子に座ってお茶を飲んでホット一息休憩。
    今度はどこに行こうかな。何を買おうかな。少しワクワクする。休憩が終わったら晩ごはんの買い物をして帰る。そんなルーティンが最近続いてる。

    薬もちゃんと飲んで安定している。
    少しずつダイエットも頑張っている。
    こんな毎日も悪くないなって思う。冬が終わり春がやってきた。こたつに潜り込んでいた私の心も暖かいそよ風が心地良いと感じるようになった。

    春のそよ風がそっと頬を撫でるのはそう遠くないかもしれない。そう願っている。

    #創作大賞2026
    #オールカテゴリ部門

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