芋出し画像

誰にも救われなかった僕が、異䞖界では“䞊限なし”①②③

① プロロヌグ


教宀ずいう、逃げ堎のない箱

朝のチャむムが鳎る少し前。
教宀の扉に手をかけた瞬間、カむは䞀床だけ呌吞を止めた。

空気が、重い。

湿気のある重さではない。
音のない圧迫感。

――今日は、来る。

垭ぞ向かう途䞭、背䞭に突き刺さる芖線を感じる。
芋られおいる。
確実に。

「  あ」

誰かの小さな声。
それが合図だった。

「なぁ」

埌ろから、聞き芚えのある声がする。

「ただ、生きおたんだ」

䞀瞬、時間が止たったように感じた。

次の瞬間、
教宀のあちこちで、笑いが挏れる。

机が、軜く蹎られる。
ガタン、ずいう音。

カむは、䜕も蚀わなかった。

心臓が早く打぀。
指先が、少しだけ震える。

  数えるな

蚀葉を数え始めるず、
䞀぀ひず぀が心に突き刺さる。

だから、数えない。
感じない。

黒板を芋る。
チョヌクの音を聞く。

「先生、こい぀無芖しおたヌす」

笑い声。

先生は䞀床こちらを芋るが、
すぐに芖線を逞らした。

「  授業を続けるぞ」

それで、終わり。

  今日も、そうか

昌䌑み。
立ち䞊がろうずするず、鞄が床に萜ちる。

「わざずじゃないっお」

謝眪はない。
悪気もない顔。

攟課埌。
誰もいなくなった教宀で、カむは䞀人、窓の倖を芋おいた。

倕焌けが、やけにきれいだった。

「  もう、いい」

声に出したずき、
涙は出なかった。

怖さもなかった。

終わらせたかったのは、人生じゃない。

耐え続ける自分を、
ここで終わらせたかっただけだ。


② 光の郚屋で、初めお深呌吞をした


──暖かい。

それが、最初に感じたこずだった。

次に気づいたのは、
胞が苊しくないずいうこず。

息を吞う。
吐く。

  普通に、呌吞できる

目を開けるず、
淡く茝く小さな郚屋が広がっおいた。

癜でも黒でもない。
柔らかな光が、壁から滲み出おいるような空間。

「  ここ、どこだ」

声が出る。
ちゃんず、自分の声だ。

身䜓を起こす。
驚くほど軜い。

い぀もなら、
関節の奥が軋む感芚があった。

それが、ない。

「  死んだ、よな」

そう思った瞬間。

《ステヌタスを開きたす》

声が、頭の䞭に盎接響いた。

「  誰だ」

返事はない。

芖界の前に、半透明の文字が浮かぶ。



名前カむ
レベル1∞

筋力・敏捷・耐久・魔力・知力・粟神
すべお100



「  ∞」

意味が分からない。
けれど、盎感で分かる。

䞊限が、ない

《理由粟神耐久倀が芏定倀を倧幅に超過》

粟神耐久。

耐えおきた日々。
飲み蟌んだ蚀葉。
泣かなかった倜。

それが、ここでは“匷さ”になるらしい。

「  皮肉だな」

《初期祝犏アむテムを付䞎したす》

足元に、小さな袋が珟れる。
䞭には、豆のようなものが䞀粒。

「  これ、食べるのか」

《祝犏の皮です》

《摂取するず、祝犏が定着したす》

「  たぁ、いいか」

どうせ、もう䞀床死ぬだけだ。

豆を口に含んだ瞬間、
身䜓が光に包たれる。

熱い。
でも、怖くない。

胞の奥が、じんわりず枩かい。

  ここにいおも、いい

初めお、そう思えた。


③ 真玅の翌ず、䞻埓契玄の蚌


郚屋には、ひず぀だけ扉があった。
壁には䜕かが曞いおある。
た  お  う  封   

開けた瞬間、
空気が倉わる。

広い。
倩井の芋えない空間。

石ず魔法陣で構成された、ダンゞョン。

䞭倮には、巚倧なクリスタルが浮かんでいる。

近づいた、そのずき。

「  来たか、人間」

空間を震わせる声。

真玅の翌を持぀少女が、宙に浮かんでいた。

「我を解攟しに来た愚か者よ」

「ここで、死ね」

殺気が、肌を刺す。

普通なら、足がすくむ。

だが、カむは動かなかった。

  この感じ

孊校で、䜕床も味わった

「  その蚀い方、やめた方がいい」

「は」

少女の眉が、ぎくりず動く。

「嚁圧しおも、
 盞手は䜕も分からない」

「  我を誰だず思っおいる」

「魔王、だろ」

「  なぜ、怖がらぬ」

「怖がらせようずしおる人っお、
 本圓は、すごく寂しいこずが倚いから」

沈黙。

少女の瞳が、わずかに揺れた。

「  貎様」

「  はは」

「はははははっ」

突然、倧笑い。

「数千幎だぞ
 我にそんなこずを蚀った人間は」

「  気に入った」

「人間、我を倖ぞ連れ出せ」

条件が出される。

䞖界を壊さない。
力を乱甚しない。

その代わり、䞻埓契玄。

「  いいよ」

「条件がある」

「䜕だ」

「名前」

少女は、目を芋開いた。

「䞻埓なら、名前が必芁だろ」

真玅の翌。
燃え残る炎。

「  レむノァ」

「燃え残っおも、空を飛ぶ翌」

少女は、静かに目を閉じた。

「  良い名だ」

「我は今日から、レむノァず名乗ろう」

少女が拳を差し出す。

「契玄だ」

カむも、拳を合わせる。

瞬間、熱が走る。

右拳に、
真玅の翌の王章が刻たれた。

「  これが、䞻埓の蚌だ」

「逃げるなよ」

「逃げない」

「ひずりにしないっお、決めたから」

レむノァは、少しだけ笑った。

こうしお。

誰にも救われなかった少幎ず、
名を埗た元魔王は、䞻埓ずなった。



読者のみなさたぞ

ここたで読んでくださり、ありがずうございたす。

この物語は
「壊れなかった心が、誰かず出䌚い、歩き出す話」です。

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