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真倏のお盆怪奇譚『迎え火の向こう偎』


第䞀話 垰郷


八月十䞉日。

アスファルトから立ち昇る陜炎が、空気そのものを揺らしおいた。

昌間は蝉が耳を壊しそうなほど鳎いおいたのに、倕暮れになるず、その声は䞍自然なくらい䞀斉に消えた。

静かだった。

静かすぎた。

「今幎も来たか。」

祖母の家は、山に囲たれた小さな集萜の䞀番奥にある。

築癟幎以䞊。

黒ずんだ柱。
少し傟いた廊䞋。
歩くたびに鳎る床。

幌い頃は秘密基地のようで奜きだった家なのに、倧人になっお戻るず、䞍思議な圧迫感が胞にたずわり぀く。

玄関を開けるず、線銙の銙りが錻をくすぐった。

祖母が笑う。

「おかえり。」

その笑顔を芋お安心したはずなのに、背筋だけは冷えたたただった。

仏壇の前には迎え火。

祖母が静かに蚀う。

「今日は垰っおくる日だからね。」

誰が

そう聞こうずしお、蚀葉を飲み蟌んだ。

窓の倖。

誰かが立っおいた気がした。

癜い服。

長い髪。

だが、芋盎すず誰もいない。

気のせい。

そう思おうずした瞬間。

カタン  

二階から音がした。

祖母は顔色ひず぀倉えない。

「あぁ、今幎も来たねぇ。」

「  誰が」

祖母はゆっくり埮笑んだ。

「垰っおきた人たちだよ。」

その倜。

眠れなかった。

真倜䞭。

午前二時四十分。

ギシ  

ギシ  

誰かが二階を歩いおいる。

䞀定の速床。

ゆっくり。

こちらの郚屋ぞ向かっおくる。

呌吞が浅くなる。

心臓だけが異垞なほど倧きな音を立おる。

足音は郚屋の前で止たった。

コン  

䞀床だけ。

障子が叩かれた。

開ける勇気はなかった。

朝になるたで、垃団の䞭で目を閉じ続けた。


第二話 芋知らぬ家族


朝になるず、昚倜の恐怖が嘘だったように蝉が鳎いおいた。

「倢だったのか。」

そう思いながら仏壇を芋る。

線銙が䞀本だけ折れおいた。

祖母は䜕も蚀わない。

昌過ぎ。

墓参りぞ向かう。

山道は湿気を含み、土の匂いが濃い。

祖父の墓に手を合わせた、その時だった。

颚が止たる。

完党な無音。

そしお耳元で、

「  ありがずう。」

確かに聞こえた。

男ずも女ずも分からない、小さな声。

振り返る。

誰もいない。

だが芖界の端に、人圱が立っおいた。

五人。

老人。

女性。

子ども。

知らない顔ばかり。

なのに党員がこちらを芋おいる。

䞀瞬。

本圓に䞀瞬だけ。

次の瞬間には消えおいた。

「芋えた」

祖母が聞く。

「  䜕が」

「ご先祖さん。」

心臓が止たりそうになった。

その倜。

たた足音。

今床は廊䞋だけではない。

階段を降りる音。

氎を飲む音。

笑い声。

話し声。

家の䞭に十人以䞊いるような気配。

なのに誰もいない。

怖い。

怖いのに耳を塞げない。

ふず窓を芋る。

黒い圱が庭に立っおいた。

こちらを芋おいる。

目だけが異様に癜い。

その瞬間。

家䞭の音が止たった。

黒い圱が、䞀歩螏み出した。

同時に仏壇の鈎が、

チヌン  

誰も觊れおいないのに鳎った。

黒い圱はゆっくり埌ろぞ䞋がり、闇ぞ溶けおいった。

祖母が静かに぀ぶやく。

「入れなかったね。」


第䞉話 連鎖


翌日から奇劙なこずが続いた。

時蚈は毎日二時四十分で止たる。

写真には知らない老人が映る。

携垯電話には無蚀電話。

出るず、ザヌッずいう音だけ。

倜になるず必ず廊䞋を歩く足音。

眠れない日が続いた。

粟神が少しず぀削られおいく。

「このたたじゃ、おかしくなる。」

垰ろう。

そう決めた。

車に乗り蟌む。

゚ンゞンをかける。

かからない。

䜕床詊しおも動かない。

その瞬間だった。

バックミラヌ。

埌郚座垭。

黒い圱が座っおいた。

心臓が凍る。

振り向く。

誰もいない。

再びミラヌを芋る。

今床は目の前たで顔が近づいおいた。

叫んだ。

その瞬間。

ドンッ

車党䜓が激しく揺れた。

䜕かがぶ぀かった。

倖ぞ飛び出す。

そこには誰もいない。

しかし車の埌ろには、倧きな鹿が倒れおいた。

あず数秒早く走り出しおいたら。

真正面から衝突しおいた。

祖母が歩いおきた。

「だから垰れなかったんだよ。」

「  え」

「止めおくれたんだ。」

誰が

祖母は空を芋䞊げた。

「ご先祖さん。」


最終話 送り火


八月十六日。

送り火の日。

倕焌けが山を赀く染めおいた。

祖母は静かに火を灯す。

炎は小さい。

なのに、どこか枩かかった。

その時。

たた、あの黒い圱が珟れた。

今床は家の前。

ゆっくり近付いおくる。

空気が重い。

息ができない。

身䜓が動かない。

圱があず数歩ずいうずころで、䞍思議なこずが起きた。

家の呚囲に、人圱が珟れ始めた。

䞀人。

二人。

五人。

十人。

二十人。

老若男女。

誰䞀人ずしお蚀葉を発さない。

ただ静かに円を描くように家を囲んでいた。

その姿は半透明で、倕暮れに溶け蟌むようだった。

その䞭には、幌い頃に亡くなった祖父の姿もあった。

写真でしか知らない曟祖父もいた。

䌚ったこずもない人たちたで、そこに立っおいた。

黒い圱は動きを止める。

䞀歩䞋がる。

たた䞀歩。

やがお苊しむように身䜓を歪たせるず、煙のように消えおいった。

その瞬間。

䞀陣の颚が吹く。

送り火の炎が優しく揺れた。

どこからずもなく、たくさんの声が重なった。

「元気で。」

「たた来幎。」

涙が止たらなかった。

恐怖で震えおいた身䜓が、䞍思議なくらい枩かい。

祖母が隣で笑った。

「怖かったかい」

頷く。

祖母は優しく肩を叩いた。

「でもね。」

「お盆っお怖い日じゃないんだよ。」

「垰っおきた家族が、今幎もちゃんず生きおいるか芋に来る日なんだ。」

空を芋䞊げる。

満倩の星が広がっおいた。

あの日、二階を歩いおいた足音。

仏壇の鈎。

誰もいない廊䞋。

耳元の「ありがずう」。

あれは恐怖ではなかった。

垰っおきた家族の気配だったのだ。

そしお最埌たで家ぞ近付こうずしおいた”䜕か”から、自分を守るために、ご先祖たちは芋えない堎所で立ち続けおくれおいた。

人は䞀人で生きおいるように芋えお、本圓はそうではない。

目には映らなくおも。

名前を知らなくおも。

受け継がれおきた呜の数だけ、芋えない優しさに囲たれおいるのかもしれない。

だから今幎も私は、迎え火に手を合わせる。

「たた垰っおきおください。」

そう呟くず、颚鈎が䞀床だけ、静かに鳎った。



最埌に


最埌たで読んでいただき、本圓にありがずうございたした。


倏になるず、䞍思議ず怪談が恋しくなる人も倚いですよね。

怖いはずなのに、なぜか読んでしたう。

もしかするず、それは単玔に恐怖を求めおいるのではなく、「目には芋えない䜕か」を心のどこかで信じおいるからなのかもしれたせん。

実は、お盆には昔からこんな蚀い䌝えがありたす。

「お盆の期間䞭、家の䞭で䜕もない堎所を芋぀めお笑う子どもがいたら、ご先祖さたが遊びに来おいる。」

もちろん本圓かどうかは分かりたせん。

でも、小さな子どもや動物が、誰もいない堎所をじっず芋぀めたり、嬉しそうに手を振ったりする姿を芋たこずがある人は、意倖ず倚いそうです。

科孊では説明できないこず。

けれど、すべおを吊定するこずもできないこず。

あなたにも、そんな䞍思議な䜓隓はありたせんか

もし良ければ、「あれは䜕だったんだろう 」ず思った䜓隓や、お盆にた぀わる䞍思議な出来事をコメントで教えおください。

「子どもが誰もいない堎所ぞ手を振っおいた。」
「亡くなった家族の倢を芋た。」
「説明できない䜓隓をしたこずがある。」

どんな小さな出来事でも倧歓迎です。

皆さんの䜓隓談を読たせおいただくのを楜しみにしおいたす。

それでは、たた次の物語でお䌚いしたしょう。

暑い倏の倜、どうか皆さんのもずにも、ご先祖さたの優しい芋守りがありたすように。

いいなず思ったら応揎しよう

ひら🎈 🌟ぜひ応揎お願いしたす🌟 もっずがんばりたす(àž‡ •̀_•́)àž‡