あの子はやっぱり私に乗ってほしかった①
どうしても、
あの子は、
私に乗ってほしそうなのだ。
ネットの画面越しに、
まっすぐこっちを見ている──
最近、車を買い替えようという話になった。
長く乗っていた車は、気づけば26万キロ。
高速でもイワシのようにスイスイ走る、
なかなか根性のあるやつだが、
さすがにそろそろ限界だろう、
ということで次の一台を探し始めた。
そんな中、
ネットで見つけた一台の車に、
私は出会ってしまった。
色もいい。
形もいい。
なにより、
理由は分からないが
しっくりくる。
いや、
しっくりくるどころではない。
頭の中で
天使が鐘を鳴らす音が
聞こえる──
急いで私は営業所に連絡。
すると、
返ってきたのは、
無情にも現実的な一言だった。
「今、他の方が商談中です」
ここで夫は、右肩を落とし「いい車なのになぁ‥‥。買えるといいね」と言った。
私は「そだね〜」
と、軽く流した。
でも、私は
(いや、この子は私に乗られたがってるでしょ!)
と、
内心ほくそ笑んでいたのだ。
根拠などない。
まったくない。
「最初から決まってるから」
その言葉だけがピタリとはまる‥‥。
数日後。
第二希望の車を見に行くことになった。
正直なところ、
気持ちは少しだけ引いていた。
あの子との縁は、
だいたい95%くらいだろう‥‥と。
残りの5%は、
念のための保険である。
すると、
営業さんが片手で口を隠して
言った。
「実は‥‥商談中だったあの車、持ってきました」
‥‥え?
遠方の営業所から、わざわざ。
頼み込んで。
運んできてくれたらしい。
他の人がまだ商談中だった車を、だよ。
いや、もう。
ここまで来たらさ。
この車、
私が選んだんじゃなくて、
向こうからはるばる、やって来たんじゃない?
つまり──
あの子と私は、
最初から両思いだったのだ。
ここまでされると、
もう責任を取るしかない。
