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『倜勀ずすももず未完成の台本』

    ゆきお



    よもぎさんに捧ぐ



    䌑憩宀は、正確には郚屋ず呌べる代物ではなかった。

    现長い通路の突き圓たりに無理やり蚭けられた空間で、扉を閉めるず空気が止たる。怅子は䞀脚、壁には剥がれかけたテヌプ跡がいく぀も残っおいる。誰かが䜕かを貌っおは剥がし、貌っおは剥がした、その履歎だけが沈殿しおいる。

    僕はその怅子に座ったたた眠っおいた。
    倢の䞭で、僕は舞台に立っおいる。
    スポットラむトが䞀぀。芳客は芋えない。盞方の姿もない。ただ、手にはなぜか玙袋いっぱいのポテトがあっお、それをマむク代わりにしお喋ろうずしおいる。

    「えヌ、どうも  」
    口を開いた瞬間、ポテトが雪厩れ蟌んできた。
    喉が詰たる。蚀葉が出ない。
    「ごめんなさい、ごめんなさい  」
    なぜか謝っおいる。誰に察しおなのかもわからないたた、ひたすらに。
    ──肩を叩かれた。
    「起きおる それずも謝眪䌚芋䞭」

    目を開けるず店長がいた。盞倉わらず、軜い調子で珟実に割り蟌んでくる。
    「ポテト食べる」
    差し出された玙袋を芋お、僕は䞀瞬だけ倢の続きを疑った。
    「  いえ、倧䞈倫です」
    「遠慮しなくおいいのに。倢の䞭では食べおたよ」
    「え」
    「“ごめんなさい”っお蚀いながら」
    完党に芋られおいたらしい。
    「やめおください  」
    「いや、面癜かったから぀い」
    そのやりずりを、入り口にもたれかかっお芋おいる圱がある。
    「たたやっおる」
    牧野くんだ。
    「この人、ほんずに謝るの奜きっすよね。趣味っすか」
    「違う」
    反射的に吊定する。
    「じゃあ癖」
    「  たぶん」
    「たぶんっお䜕すか」
    圌は笑いながら䞭に入っおくる。狭い空間がさらに狭くなる。
    「倖、雚ですよ。客、少なめ。ラッキヌっすね」
    「いや、さっき団䜓来たからプラマむれロだよ」
    店長が肩をすくめる。
    僕は立ち䞊がりながら、ただ少し倢の䞭にいるような気がしおいた。喉の奥に、蚀えなかった蚀葉が残っおいる感芚。
    店に出るず、確かに客はたばらだった。
    その䞭に、ひずきわ浮いおいる二人がいる。
    初老の男女。
    背筋は少し䞞いが、劙に姿勢が揃っおいる。テヌブルの䞊には䜕もない。泚文もしおいないらしい。
    それでも、ふたりは静かに䌚話を続けおいる。
    「  あの人たち」
    僕が小声で蚀うず、牧野くんが暪から芗き蟌んだ。
    「ああ、さっきからああっすよ。居座りタむプ」
    「泚意する」
    「店長がしないなら、しなくおいいんじゃないすか」
    店長はカりンタヌの奥で䜕かを曞いおいる。あえお芋ないふりをしおいるようにも芋える。
    僕は少しだけ考えお、結局䜕もしなかった。
    正しさよりも、面倒くさくなさを遞んだ。
    それだけのこずだ。
    倜は静かに過ぎおいった。
    垰宅しお、冷蔵庫を開ける。
    内偎に貌られた玙が目に入る。
    䞞い字。癖のある蚀い回し。やたらず改行が倚い。
    「これ、絶察りケるず思うんだよね」
    曞かれおいるのは、挫才のネタだった。
    僕が曞いたものではない。けれど、僕に向けお曞かれたものだ。
    「いや、りケないだろ  」
    思わず笑う。
    構成が甘い。前振りが長いわりに、オチが匱い。䜕より、誰に向けおいるのかが曖昧だ。
    「ここ削っお、ここ詰めお  」
    指でなぞりながら、頭の䞭で修正を入れる。
    たるで自分が曞いたみたいに。
    冷蔵庫からすももを取り出す。
    かじる。
    匷烈な酞味が広がる。
    「  すもももももももものうち」
    口に出しおみる。
    「すもももももももものうち」
    二回目で噛む。
    「すももも  も  」
    䞉回目は諊めた。
    「  ごめんなさい」
    たた出た。
    誰もいないのに。
    皮だけになった果実を、しばらく舌の䞊で転がす。
    蚀葉にならなかったものが、そこに残っおいる気がした。
    時蚈を芋る。
    午前䞉時。
    そろそろ寝るか、ず思う。
    けれど、貌られた玙から目が離れない。
    未完成のネタ。
    未完成のたたでもいいのか、それずも完成させるべきなのか。
    考えおも答えは出ない。
    ただ䞀぀だけわかるのは、あの倢の舞台にもう䞀床立぀なら、今床はちゃんず喋らなきゃいけない、ずいうこずだった。
    ポテトじゃなくお、蚀葉で。
    僕は電気を消す。
    暗闇の䞭で、もう䞀床だけ小さく぀ぶやいた。
    「  すもももももももものうち」

     
     
     
    スキにキス。奜きなものが人生をめっちゃハッピヌにする。日々の生掻はそれをずこずん味わうためにある。読曞、映画鑑賞、写真撮圱。芪友ず過ごす時間。劻の手䜜りハンバヌグ。たずえ䜕があっおもそこにスキがあればい぀だっおい぀たでだっお幞せだ。代。サラリヌマン。既婚。人子持ち。郜内圚䜏

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