1Kの部屋に木を植える
社会人になって初めて一人暮らしをしたのは会社指定の小さなアパートだった。4.5畳、収納なしのワンルーム。
ベッド、デスク、タンスを置いたらすぐにいっぱいになってしまうほどの狭さで、引越し前の下見で部屋に入った私は「え、終わり?」と絶句した。どんな部屋にしようかと理想のインテリアをいろいろと調べていた私の幻想は儚く打ち砕かれ、少しでも広く見えるように家具やシーツを白で揃えてビジネスホテルのような殺風景な部屋にした。
それから数年経ち、もう少し広い部屋に引っ越すことになった。次は9畳の1Kだから、今度こそ多少インテリアにこだわれるぞ!と意気込み、またインスタで検索した。「#1Kインテリア」「#一人暮らしインテリア」と、イメージを膨らませていると、私の中でおしゃれだなと感じる部屋には、とある共通点が見つかった。
それは、「観葉植物があること」だった。
一度自覚すると、意外と雑貨屋や家具屋にも観葉植物は置いてあることに気づく。もうその頃には「#インテリア」よりも「#観葉植物」を検索していた私には欲しい観葉植物の条件があった。草ではなく木であること。ある程度背が高いこと。葉が大きいこと。葉の色が黄緑でも深緑でもなく、鮮やかな緑であること。初心者でも育てやすいこと。
そうして出会ったのが、この子、背丈90cm程度のフィカスウンベラータであった。

1Kの部屋に、テーブルや椅子より先に、木を買った。
こうしてウンベラータはこの日から私の相棒となった。

さて、観葉植物はもちろん生き物なので、他の家具のように買っておしまいではない。育てる楽しみがあるのだ。
ウンベラータの詳しい育て方は他のブログにお任せするが、基本的には土が乾いたらたっぷりと水をやり、たまに葉に霧吹きをして、カーテン越しのやわらかい陽の光に当ててあげる、それだけだ。それだけであっという間にぐんぐん大きくなり、鉢が手狭になってくる。こうなると発生するイベントが、「剪定」と「植え替え」である。
まず「剪定」とは、枝を切って樹形を整えることを言う。
ウンベラータは放っておくと上へ上へと伸びてしまうが、私は上に行くに従って広がる「木!」という感じにしたかったので、それを目指して切る場所を選んでいく。
ウンベラータの枝には成長点という赤い点があり、枝を切ったらそのすぐ下の成長点からY字に枝が生えてくる特性がある。そのため、樹形をデザインできるのだ。





さらに、なんと切った枝を水につけておくと、根が生えて新しい株となる。これを「水差し」と言う。



こうして増やした子株を、実家や妹の新居、友人宅に配った。彼らの家で私のウンベラータと同じDNAの新芽が芽吹いていると思うと、なんとも言えない嬉しさだ。
次に、「植え替え」は鉢のお引越しである。数年に一回、根が伸びてきて鉢が手狭になったら行う。
鉢という、植物にとっての家を適切に大きくすることで、植物はすこやかに大きくなれるのだ。






この剪定と植え替えを少しずつするうちに、買ったときは父の腰くらいの丈だったウンベラータは私の背をゆうに越し、180cmくらいの立派な木となった。寒さと水切れで大量に葉を落とした冬もあったけれど、今はまた元気に新芽をつけてくれている。
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土が乾いたら、鉢底から勢いよく水が溢れるくらいたっぷりと水をあげる。乾いた土は水をごくごくと吸い込み、押し出された空気がシュワシュワシュワと炭酸が弾けるような音を立てる。その音をよく聞きたくて、ウンベラータの横に寝転ぶ。窓際に置いたウンベラータの大きな葉っぱは、部屋の中に木漏れ日をつくる。ああ、この子とだったらどこでも暮らしていける気がするな。
1Kの部屋に木を植える。
それは私にとってささやかな理想の実現を意味するのだ。

