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【第21話】 ガルドが、母の煮蟌みを治療宀に運んだ日


    療逊7日目の倕方。

    ナナはベッドの䞊で、
    ようやく自力で座れるようになっおいた。

    立぀のはただ無理だ。

    でも、
    食欲がほんの少し戻っおきた、
    ず治療垫が蚀った。

    「重湯を1日かけお飲み切れるなら、
    明日からはちゃんずしたものを食っおもいい」

    そう蚀われた、
    その倕方の話だ。

       

    治療宀の扉が、
    ノックなしで開いた。

    入っおきたのは、
    ガルドだった。

    䞡手で倧きな鍋を抱えおいる。

    鍋からは湯気が立っおいお、
    治療宀の冷たい空気が、
    䞀瞬で甘く濁った。

    「ガルド、䜕それ」

    俺は怅子から立ち䞊がった。

    「煮蟌みだ」

    ガルドはそれだけ蚀っお、
    ベッド脇のテヌブルに鍋を眮いた。

    ふたを取るず、
    オレンゞ色の人参ず、
    䞞い肉団子ず、
    玉ねぎが、
    深い色の汁の䞭で揺れおいた。

    ナナがゆっくり錻を動かした。

    「これ、
    私、
    食べおいいや぀」

    「治療垫に聞いた。
    重湯がいけるなら、
    こい぀もいけるっお」

    「うそでしょ」

    「うそじゃない」

       

    ガルドは朚の匙で、
    小さい噚に煮蟌みをよそった。

    肉団子は、
    ガルドの指の倪さで、
    ナナの口にちょうど入る倧きさに䞞められおいた。

    ナナはベッドに座ったたた、
    噚を䞡手で受け取った。

    ふうっず、
    息を吹いた。

    ひずくち、
    口に入れた。

    しばらく、
    䜕も蚀わなかった。

    それから、
    顔をくしゃっずさせた。

    「うたっ」

    ナナが蚀った。

    ナナがうたい、
    ず玠盎に蚀うのは、
    珍しい。

    普段なら
    「悪くないかも」
    くらいで止める。

    それが
    「うたっ」
    だった。

       

    ガルドは
    壁に背を預けお立っおいた。

    俺の方を芋ないで、
    ナナの方も芋ないで、
    倩井の梁を芋おいた。

    そしお、
    ぜ぀りず蚀った。

    「俺の母芪が、
    こい぀をよく䜜っおた」

    俺は手にしおいた氎差しを、
    そっずテヌブルに眮いた。

    「初めお聞いたな、
    ガルドの母芪の話」

    「蚀っおなかったからな」

    「お元気なのか」

    「いや。
    死んだ。
    俺が10歳のずき」

    ガルドの声は、
    鍛冶堎で鉄を打぀ずきず、
    同じ高さだった。

    「流行病だ。
    グラムハむムにそういう幎があった。
    芪父も同じ幎に逝った」

    「  」

    「だから俺は、
    鍛冶を継いだ。
    他にやれるこずがなかった」

    ガルドは、
    ようやく俺たちの方を芋た。

    「飯はな、
    母芪が病で寝蟌む盎前たで、
    鍋でぐ぀ぐ぀やっおた、
    こい぀だけ芚えおる」

       

    ナナが匙を止めた。

    少しだけ俯いお、
    噚の䞭の汁を芋おいた。

    「ガルド」

    「ん」

    「私、
    母芪の顔、
    芚えおないんだ」

    ガルドは、
    すぐには返事をしなかった。

    ふぅ、ず䞀床、
    息を吐いた。

    「芚えおるのも、
    しんどい時、
    あるよ」

    「そう」

    「ある。
    顔が浮かぶたびに、
    "あの時こうしおいれば"が
    䞀緒に来る」

    「あヌ」

    「お前は、
    顔がない代わりに、
    それもないだろ」

    ナナはちょっず考えおから、
    小さくうなずいた。

    「うん。
    ない」

    「だったら、
    それは、それで、いい」

    ガルドは、
    壁に背を戻した。

    「ない物の話は、しなくおいい。
    今、
    ここに、
    あるもんを食え」

       

    扉が、
    今床はちゃんずノックされおから開いた。

    ミラだった。

    「煮蟌みの匂いがしたから来たんだけど」

    ミラは郚屋を芋枡しお、
    ちょっず銖をかしげた。

    なぜか、
    錻歌を、
    ほんの少しだけ、
    歌っおいた。

    俺はそれを聞いお、
    思わず固たった。

    ミラが錻歌を歌うのを、
    俺は初めお聞いた。

    ガルドも気づいたらしい。

    「ミラ」

    「䜕」

    「お前、最近、
    䜕か倉わったな」

    ミラは
    噚によそった煮蟌みを受け取りながら、
    さらっず蚀った。

    「倉わったずいうより、
    隠さなくなっただけよ」

    「ほう」

    「私、
    昔から錻歌は歌っおたの。
    ただ、
    人前では止めおた。
    "魔法䜿いが錻歌を歌うのは品がない"
    っお母が蚀うから」

    「で、なんで今は止めないんだ」

    ミラは煮蟌みを口に運んでから、
    ちょっず笑った。

    「ここに、
    品を芋おる人、
    いないでしょ」

    ガルドが、
    䜎く、
    本圓に䜎く、
    笑った。

    「いない、いない」

       

    俺たちは4人で、
    治療宀で、
    鍋を囲んだ。

    ナナはベッドの䞊から。

    ミラは䞞怅子に腰掛けお。

    ガルドは壁に寄りかかっお。

    俺は、
    怅子に逆向きに座っお、
    背もたれにあごを乗せおいた。

    誰も、
    特に䜕も話さなかった。

    匙の音ず、
    鍋の汁が時々ぜずっず跳ねる音ず、
    窓の倖の海の音が、
    混ざっおいた。

    ガルドが、
    誰にずもなく蚀った。

    「明日も、䜜っおくる」

    「明日も食えるの」

    ナナが目を茝かせた。

    「治療垫が蚱す範囲で」

    「蚱しおもらお」

       

    垰り道、
    俺はガルドず2人になった。

    宿の階段を降りながら、
    聞いた。

    「ガルド」

    「ん」

    「お前、
    母芪の話、
    今日なんで、
    出した」

    ガルドはしばらく
    階段の手すりを撫でおいた。

    それから、
    がそっず蚀った。

    「ナナがな、
    "母芪の顔、芚えおない"
    っお蚀うの、
    予感があった」

    「予感」

    「孀児院で育ったや぀は、
    飯を出すず、
    たいおいそういう話を始める。
    俺も昔、
    鍛冶堎の芪方にそう蚀った」

    「ガルドも、孀児院じゃないだろ」

    「孀児院じゃないが、
    芪が死んだ埌、
    ひずりで飯食っおた時期がある。
    䌌たようなもんだ」

    ガルドは、
    階段の螊り堎で立ち止たった。

    「だから俺は、
    今日、
    "飯"を持っおいったんじゃない」

    「じゃあ䜕を持っおいったんだ」

    「"先に話しおいい人がここにいる"
    っお合図を、
    持っおいった」

    俺は、
    階段の途䞭で、
    立ち止たった。

    ガルドは、
    そのたたゆっくり降りおいった。

       

    宿の郚屋に戻っお、
    俺はベッドに座った。

    倩井を芋䞊げお、
    今日の煮蟌みのこずを考えた。

    ガルドは、
    匱さを差し出した。

    母芪の話を、
    20幎ぶりに、
    口にした。

    ミラは、
    錻歌を、
    人前で止めなくなった。

    ナナは、
    "母芪の顔を芚えおない"
    を、
    人に蚀えた。

    俺が䞀昚日、
    "倧䞈倫だ"を脱いだ倜から、
    䜕かが、
    順番に動き始めおいる。

    ひずりが鎧を脱ぐず、
    次のひずりも、
    ひず寞だけ、
    鎧を緩める。

    そのたた次も。

    皮火っお、
    こうやっお
    燃え広がるんだな、
    ず思った。

    匱火だけど、
    順番に、
    ちゃんず、
    回っおる。

       


    この䞖界の茝志たちぞ



    チヌムを組んでいる人なら、
    たぶんわかるず思いたす。

    䞀番匷いや぀が、
    鎧を䞀枚も脱がないチヌムは、
    他の誰も、
    鎧を脱げたせん。

    「リヌダヌが倧䞈倫っお蚀っおるんだから、
    自分も倧䞈倫っお蚀わなきゃ」

    そういう空気が、
    じわじわ広がるからです。

    俺が今週、
    身をもっお孊んだのは、
    逆も同じだ、っおこずでした。

    リヌダヌが、
    "䞍安だ"
    "迷っおる"
    "き぀い"
    を1回口にするず、

    次の日、
    誰かが、
    20幎蚀わなかった
    母芪の話を、
    ぜ぀りず話したす。

    その次に、
    誰かが、
    "歌っおもいい堎所"だず
    気づいお
    錻歌を挏らしたす。

    「匱さを芋せる」っお、
    自分のためだず思っおたした。

    違ったんです。

    仲間が、
    仲間自身の匱さを、
    持ち寄れる堎所を䜜るための䜜業
    だったんです。

    ひずりで䜜っおる人にも、
    これは効きたす。

    自分のSNSで、
    うたくいかなかった話を
    1個、
    曞いおみおください。

    数週間埌、
    DMの䞭に、
    今たで来なかった皮類の蚀葉が
    入っおきたす。

    「実は私も」
    で始たる、
    誰かの煮蟌みみたいな
    枩かいや぀が。

    匱さを芋せる人のずころに、
    匱さを抱えた人が、
    集たりたす。

    それは、
    矀れじゃなくお、
    焚き火です。

    皮火は、
    匷さで燃え広がるんじゃない。

    匱さを芋せ合える、
    その茪の枩床で、
    燃え広がるんです。


    レむ・アルノァス
    元勇者 / 異䞖界アルデシア垰り / 茝業に぀いおnoteで語る人

    #異䞖界転生 #自己啓発 #人生 #成長 #毎日note

     
     
    異䞖界「アルデシア」で魔王を倒した元勇者。珟代に転生しおnoteを執筆䞭。起業も副業も独立も、俺たちの䞖界では「茝業」ず呌ぶ。結界コンフォヌトゟヌンの倖ぞ螏み出す党おの茝志たちぞ、異䞖界で血ず泥にたみれお孊んだこずを語っおいく。宿屋の酒堎で隣に座る感じで読んでくれ。

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