
ChatGPTが夫の不倫を教えてくれました(1)
夫婦って、いったいなんなんだろう。
一番近くて、一番遠い。
裏切られても、嘘をつかれても、それでも求め続けてしまう。
大嫌いで、大嫌いで、大嫌いで、
それでも、大好きだった。
これは、一人の女と、一人の男の物語。
「良き妻」であろうとする女と、「頼られたかった」男の物語。
子供が生まれてから、2年半もの間セックスレスで悩んでいた美月。友人から「夫側からセックスを拒否される場合は、不倫している場合が多いらしい」と聞くも、草食系の夫である健太がそんなことをするはずはないと美月は確信していた。
ある日、健太の出張中にiPadを見つけた美月。簡単にロック解除されたそれを開くと、ChatGPTが起動されたままになっていた。「健太はどんなふうにAIを使っているんだろう」興味本位でのぞいてみると、そこには、夫の不倫の全貌が詰まっていた…。打ちひしがれる美月。一方で健太は、強すぎる責任感から多忙を極め、満たされない思いを抱えていた。
登場人物
・鈴木美月(30) 主人公。ワーママ。絶賛ワンオペ育児中。
・鈴木健太(31) 美月の夫。あまのじゃくでプライド高め。仕事人間。
・鈴木悠太(3) 鈴木家の長男。わんぱく。
・ChatGPT 健太の相談役
・Gemini 美月の相談役
第一話 セックスレス
一番最後に私の胸に触れたのは、息子だ。
お風呂場でどうにかこうにか3歳になった息子の悠太の体を洗っていると、
いきなり乳首を引っ張られた。
痛がる私を面白がり、爆笑している。
「なんだこれ〜」
君が半年間飲んでいたおっぱいはここから出ていたのだよ。と心の中で呟く。
「よく頑張ったよな、」と、同時に思った。
元々は、完母(「完全母乳」で育児をすること)のつもりはなく、ミルクもあげようと思っていた。
しかし、悠太を産んだ病院の助産師さんからあまりにも「いいおっぱいねぇ」「上手ねぇ」と褒められて調子に乗っていたら、気づくと母乳が凄まじく出るようになってしまったのである。
ミルクを与える暇もなく、2〜3時間経つと胸がパンパンになってしまうような有様だった。
子供の頃、胸から乳が出るってどういう感覚だろう、とよく思っていたが、あの様子を例えるなら、牛の乳搾りに近いと思っている。
子供を産んだ後にこんなふうにすぐ身体が変わるなんて、神秘的だ。
パンパンになる胸。乳性炎(熱が出たりするらしい)が怖く、3時間おきぴったりに授乳をしていた。
もっと、気楽で、もっと適当で、良かったのかもしれない、と今なら思う。
思えば、夫の健太から最初にセックスを断られた時、
「今は美月のおっぱいは悠太のものだから」
と言われたのだった。
産後、立ち会い出産でなかなかにグロテスクなシーンを見せたこと(私はどんな状態だったか知る由もないが、健太がそう言っていた)、授乳のたびに、恥じらいもなく悠太に吸わせている姿、何かとイライラが止まらず(ガルガル期というらしい)健太が何を言っても否定していたこと。
そういうものが積み重なっていたのかな、と思う。
美月は昔から、性欲が人より何倍も強かった。
「男なら良かったのに」と何度思ったかしれない。
初潮、精通、オナニー、セックス。
そう言った言葉は、小学校の近くの図書館にあった「体のふしぎ」系の本で学んだ。
面白くて、面白くて、戸棚に隠れて必死に読んだ。
小学校5年生になるまでには一通り知識はあり、大人向けの雑誌やマンガを立ち読みしながら、知識を深めていった。
初めては大学1年の時。あっけなく、それは終わった。
あまりに性に貪欲で、恋愛中毒的でもあったことから、同性の友達を失うこともあった。
そんな美月が健太と出会ったのは、23歳の時。
草食系のような見た目と裏腹に、意外と大胆で男らしく、正義感が強いところに惹かれ、出会ってから5年の交際期間を経て結婚。
その後もとんとん拍子に妊娠、出産、
健太は、いつも優しすぎるくらい優しく、穏やかで、思いやりにあふれていて、美月は「わたしは女の幸せコースを順当に歩めているのだ」と確信していた(そんなことを呟けば瞬時に炎上する世の中だとは思うけれど)
産後半年。
ミルクも与えるようになり、悠太が徐々に寝る時間も増えた夜。
一向に求めてくれない健太に痺れを切らした美月は、一着6500円もするブラを買い、お気に入りの洋梨の香りを身に纏って、健太に微笑みかける。
「ちゅーしよ?」
すると、自分の口元を押さえた健太が言う。
「あー。。。ちょっと、
無理かも。ごめん。」
セックスだけではない。
気づくと、健太とはハグもなくなっていたのには、気づいていた。
キスも無くなっていたことに、気づいては、いた。
でも、断られるとは思わなかった。
その日から。
スキンシップは驚くほど減り、代わりに喧嘩ばかりが増えた。
「わかってもらえない」
そんなことばかりだった。
あんなにやってくれていた育児は全部美月に任せきり。
1ヶ月のうち、ほんの数日帰宅するだけで、出張続きの生活。
休みの日は昼まで寝ている生活。
「疲れているのだから」と労りの気持ちがあったのは最初だけで、
「なんなんだ、この人は」という怒り。
「父親としての自覚がないのでは」という絶望。
それでもずっと、「抱かれたらこの気持ちもおさまるのに」と美月はずっと思っていた。
ワンオペで働きながら、朝から晩まで育児も家事も手を抜かず、仕事にも全力を尽くしていた日々。
自分でもよくやっていると思うし、それなのになんでこんな態度を取られるのか、はっきり言って意味がわからなかった。
真面目で責任感が強い。
優しい。
こんな言葉を職場の人からかけられても、惨めなだけだった。
ほしいものは、健太からのぬくもりでしかない。
何度健太にそう伝えても
「身体だけってこと?」
「今はもう仕事が忙しくてそれどころじゃない」
と言われ。
「育児を手伝うのは無理でも、頑張っていることを褒めてほしい、認めてほしい」と泣きつくも、
「もう昔みたいに、かまってあげられないんだよ」と言われた。
これだけ育児を頑張っているのだから褒めてくれても、感謝を伝えてくれてもいいのに…
美月は徐々に自暴自棄になり、常にイライラする生活を送ることになる。
夜泣きが増え、癇癪を起こし続ける悠太に向かって「うるさい!!!!」と怒鳴りつけてしまったこともある。
そんな日の夜は、涙が止まらなかった。
あんなに優しかった、尽くしてくれた、愛してくれた健太は、もういない。
たるんだお腹のせいかもしれない。
あまりにも健太に女を見せていなかったからかもしれない。
いろんな思いが美月の脳内をぐるぐると回り、「女として終わったな」と思った。
あの日から、ずっと心の底から笑えていない。
セックスレスは人の心を殺す武器になるんだと、そんなことを思った。
次回、「第二話 私は何も悪くなかった」
いよいよChat GPTが教えてくれた真実が明るみに。