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䜜業着のたた、1億円を目指す理由

    朝、家族がただ寝おいるうちに䜜業着ぞ着替える。

    この「家族がただ寝おいるうちに」ずいう蚀い方をするず、なんだか自分が立掟な父芪みたいで少し嫌になる。
    実際には、立掟ずいうより、ただ眠い。普通に眠い。できるこずなら、あず二時間くらい垃団の䞭で人生のすべおを保留にしたい。

    それでも起きる。

    掗面所の明かりだけを぀けお、鏡の前に立぀。
    歯磚きをしお、寝ぐせを氎で抌さえ぀ける。
    抌さえ぀けたはずの寝ぐせは、だいたい䌚瀟に着くころには埩掻しおいる。人間の意志より、髪の毛の反発力のほうが匷い。

    靎䞋を履き、昚日の倜に玄関ぞ眮いおおいたカバンを持぀。
    その暪に、息子の小さな靎がある。

    僕の安党靎の暪に䞊んでいるず、䜙蚈に小さく芋える。

    それを芋るたびに、少しだけ胞が詰たる。

    小さい靎は、ずるい。䜕も蚀っおいないのに、こちらにいろいろ考えさせおくる。昚日ちゃんず遊べただろうか。最近、怒りすぎおいないだろうか。この子が倧人になるころ、自分はどんな父芪になっおいるのだろうか。

    朝の玄関で、そんなこずを考え出すず遅刻するので、考えないふりをしお家を出る。

    僕は今日も䌚瀟員ずしお珟堎ぞ向かう。

    建物の䞭に入り、倩井を芋䞊げ、壁を芋お、床を芋お、写真を撮る。調査察象の建材を確認し、必芁があれば採取し、垰っおから報告曞を䜜る。

    こう曞くず、淡々ずしおいる。

    実際、淡々ずしおいる。

    ただ、淡々ずしおいる仕事の䞭にも、劙な面癜さはある。叀い建物には、そこに流れた時間が残っおいる。壁の傷、倩井の染み、床のきしみ。誰かがそこで働き、誰かがそこで暮らし、誰かがその堎所を盎しおきた。

    建物は、意倖ずしゃべる。

    もちろん本圓にしゃべったら怖い。珟堎で倩井から「お疲れさたです」ず蚀われたら、その日はもう垰る。でも、目を凝らしおいるず、その堎所がどう䜿われおきたのか、なんずなく芋えおくるこずがある。

    その跡を読み取るような仕事には、地味だけれど面癜さがある。

    仕事が嫌いなわけではない。

    ただ、珟堎ぞ向かう車の䞭で、ふず思う日がある。

    このたたいけば、たぶん僕は生きおいける。毎月絊料をもらい、家族を逊い、䌑日には息子ず遊び、たたに倖食をしお、蚈画すれば五幎に䞀床くらいは家族で二泊䞉日の海倖旅行にも行けるかもしれない。

    倧きな倱敗をしなければ、それなりに暮らしおいける。

    それなのに、なぜか怖くなる。

    このたた、䌚瀟の予定衚の䞭だけで人生が終わっおいくのではないか。自分で遞んでいる぀もりで、い぀の間にか遞べない人生になっおいくのではないか。

    䌚瀟員のたた終わりたくない。

    そう思うようになった。

    この蚀葉だけを芋るず、意識が高そうで、自分でも少し身構える。別に毎朝、熱いコヌヒヌ片手に「人生を倉えるぞ」ず窓の倖を芋おいるわけではない。むしろ珟実は、寝ぐせず安党靎ず、昚日の倜に掗い忘れた氎筒である。

    でも、その珟実の䞭で、たしかに思っおいる。

    このたた終わりたくない。

    僕には劻がいお、息子がいる。

    息子はただ小さい。毎日いろんなこずを芚え、昚日たでできなかったこずを、今日急にできるようになる。倧人から芋れば小さな成長でも、本人にずっおは䞖界が広がる瞬間なのだず思う。

    自転車に乗れた日。
    はじめお深い川に足を入れた日。
    知らない堎所で、知らないものを芋お、目を茝かせた日。

    そういう瞬間に立ち䌚うたび、僕は思う。

    この子に、もっず広い䞖界を芋せたい。

    昔、僕はバックパッカヌをしおいた。

    高玚ホテルになんお泊たらなかった。ずいうより、泊たれなかった。倧きなバックパックを背負っお、安い宿を探し、知らない街を歩き、蚀葉の通じない堎所で食堂に入り、よくわからない料理を指差しお泚文した。

    初めおのタむでコヌラを頌んだら、ホットコヌヒヌが来たこずがある。
    想定倖すぎおびっくりした。

    コヌラずコヌヒヌ。
    文字にするず䌌おいなくもない。いや、䌌おいない。でも、こちらの発音もおそらく盞圓怪しかったのだろう。僕はそのずき、人生で初めお「炭酞の぀もりで口に運んだ液䜓が熱い」ずいう経隓をした。貎重なバックパッカヌデビュヌ䜓隓をさせおいただいた。

    同時に囜がかわるずコヌラも頌めない自分にだいぶ萜ち蟌んだ。

    海倖で航空刞を重耇しお取っおしたったこずもある。鬌電したが氞遠にアナりンスが流れるだけ
    カゞュアルに空枯で預けたはずの荷物がなくなったこずもある。
    お金がなさすぎおヒッチハむクをしたこずもあるしたら、野生の銬を芳に行かされたこずもある。

    他にもトラブルはたくさんあった。

    予定通りにいかないこずの方が倚かったし、䞍䟿なこずも倚かった。

    旅人界隈で有名な蚀葉がある。

    Trouble is the spice of travel.
    トラブルは旅のスパむスだ。

    最初に聞いたずきは、うたいこず蚀うなず思った。今思うず、トラブルの真っ最䞭にいる人間に向かっおそれを蚀ったら、たぶん怒られる。荷物がなくなった人間に「スパむスだね」ず蚀ったら、かなり高確率で嫌われる。

    でも、あずから振り返るず、その通りなのだ。

    きれいな名所より、トラブルのこずのほうが、あきらかに蚘憶に残っおいる。

    䞖界は思っおいたより広かった。
    人は思っおいたより芪切だった。
    トラブルの数だけ助けおもらった物語ができた。
    お金がなくおも、工倫すれば遠くたで行けた。
    そしお、自分の垞識なんお、囜境をひず぀越えただけで簡単にひっくり返るのだず知った。

    あの感芚を、い぀か息子にも味わわせたい。

    ただスタンプラリヌのように芳光地を回るだけではなく、朝の垂堎の匂いを嗅いだり、芋たこずのない果物を食べたり、知らない囜の子どもが笑っおいるのを芋たりしおほしい。

    飛行機の窓から雲を芋䞋ろしお、「䞖界っお本圓に広いんだ」ず感じおほしい。

    でも今の僕には、守る生掻がある。

    毎月の生掻費がある。
    これから買う家のこずもある。
    息子の教育費もある。
    芪のこず、自分たちの老埌のこずもある。

    そしお、い぀か死ぬ。

    急に話が重くなった。
    でも本圓のこずだ。

    人はい぀か死ぬ。普段は忘れたふりをしおいるけれど、䜏宅ロヌンのシミュレヌションを芋たり、老埌資金の蚘事を読んだり、息子の寝顔を芋たりするず、突然その事実がこちらを芋おくる。

    独身の頃のように、バックパックひず぀で「なんずかなる」ずは蚀えない。家族がいるずいうこずは、自由がなくなるこずではないけれど、無責任にはなれないずいうこずでもある。

    だから僕は、1億円を目指すこずにした。
    目指し方は別蚘事で曞いおいこうず思う。

    1億円。

    自分で曞いおいおも、倧きな数字だず思う。普通の䌚瀟員が口にするず、少し倧げさに聞こえるかもしれない。誰かに話せば、笑われるかもしれない。

    そもそも、日垞生掻で「1億円」ず口に出す堎面はあたりない。テレビのニュヌスか、宝くじ売り堎か、やたら景気のいいYouTubeくらいである。

    でも僕にずっおの1億円は、莅沢のためだけの数字ではない。

    高玚車に乗りたいからではない。
    毎日豪遊したいからでもない。
    誰かにすごいず思われたいからでもない。

    僕にずっお1億円は、遞べる人生のための数字だ。人生の䜙癜を少しでも倧きくする数字だ。

    嫌なこずを嫌だず蚀える自由。
    倧切な人ずの時間を遞べる自由。
    息子の「行っおみたい」に、できるだけ応えられる自由。
    䌚瀟に人生を党郚預けなくおいい自由。

    もちろん、お金がすべおではない。
    ずいうか、お金は道具にすぎない。

    この蚀葉もたた、きれいに聞こえすぎる。
    でも、たぶん本圓にそうなのだ。

    お金だけを远いかけおいたら、僕は倧事なものを芋倱うず思う。家族ずの時間を削りすぎおたで資産を増やしおも、そこに本圓に欲しかった自由があるのかはわからない。

    でも、お金がなければ遞べないこずがあるのも事実だ。

    家を買うかどうか考えるずき。
    旅に行くかどうか考えるずき。
    仕事を倉えるかどうか考えるずき。
    子どもに䜕かを経隓させたいず思ったずき。

    最埌に立ちはだかるのは、だいたいお金だ。

    たただ。
    たたお金だ。

    そのたびに、悶々ずする。

    僕はそれを、きれいごずでごたかしたくない。

    だから働く。
    だから投資する。
    だから孊ぶ。
    だから曞く。

    絊料をもらい、支出を芋盎し、投資に回す。倀動きに䞀喜䞀憂しながら、それでも続ける。簿蚘やFPの勉匷をしようず思う日もある。

    家の情報を芋お、間取りを芋お、駅からの距離を芋お、この家で息子が倧きくなる姿を想像する日もある。

    䜏宅ロヌンをただ䜿えおいない。
    家賃がもったいない。

    そう思う䞀方で、家を買うずいうこずの重さに、急に黙り蟌む日もある。

    家が欲しい。

    それは、資産ずしおの家ずいう意味だけではない。

    息子が孊校から垰っおきお、ランドセルを眮く堎所。友達が遊びにくる堎所。劻が安心しお過ごせる堎所。
    僕が珟堎から垰っおきお、䜜業着を脱ぎ、ふっず息を぀ける堎所。リモヌトで事務仕事をする堎所。
    そしお旅から戻っおきたずきに、「垰っおきた」ず思える堎所。

    昔は、どこにでも行けるこずが自由だず思っおいた。倧きなバックパックひず぀で生掻できるようになったずき、自分は自由になったのだず思った。

    でも今は少し違う。

    垰る堎所があるから、遠くぞ行けるのだず思う。
    家族がいるから、もっず遠くの景色を芋たいず思えるのだず思う。

    だから僕は、家も欲しいし、旅もしたい。
    そのために投資もしたいし、思い出にもお金を䜿いたい。

    未来のために我慢もするけれど、今しかない息子ずの時間も倱いたくない。

    このバランスが、本圓に難しい。

    資産圢成の本を読めば、無駄遣いを枛らせず曞いおある。投資の動画を芋れば、耇利の力を信じろず蚀われる。

    確かにその通りだず思う。若いうちから積み立お、䜙蚈な支出を枛らし、長期で運甚する。それが王道だずいうこずもわかっおいる。

    でも、息子が「行きたい」ず蚀った堎所に、今連れおいくこずにも䟡倀がある。

    5歳の息子ず芋る海は、10幎埌に芋る海ずは違う。
    今の息子が笑う顔は、今しか芋られない。

    将来のために今を党郚削っおしたったら、僕はたぶん埌悔する。
    でも今だけを楜しんで、未来に䜕も残さなかったずしおも、きっず埌悔する。

    ぀たり、どちらにしおも埌悔する可胜性がある。

    人生、難易床が高すぎる。

    だから僕は、い぀も揺れおいる。

    蚌刞口座の残高を芋る倜がある。
    䞍動産情報サむトで家を芋る倜がある。
    息子の寝顔を芋る倜がある。

    そのたびに思う。

    僕は䜕を優先したいのだろう。
    䜕を守りたいのだろう。
    どんな父芪でいたいのだろう。

    息子に芋せたいのは、最初から成功しおいる父芪の姿ではない。

    悩みながらも、あきらめずに前ぞ進む父芪の姿だ。

    䌚瀟員ずしお働きながら、それでも自分の人生を取り戻そうずしおいる姿。倱敗しおも、迷っおも、たた立お盎しおいく姿。お金のこずを真剣に考えながら、お金だけの人間にはならないように螏ん匵っおいる姿。

    い぀か息子が倧きくなったずき、僕が本圓に1億円を持っおいるかどうかはわからない。

    もしかしたら、目暙には届かないかもしれない。
    思ったより時間がかかるかもしれない。
    途䞭で違う道を遞ぶかもしれない。

    それでも、目指したこずには意味があるず思っおいる。

    1億円を目指すずいうのは、単にお金を増やす話ではない。
    自分の人生を、自分で遞ぶための蚓緎なのだず思う。

    䜕にお金を䜿うのか。
    䜕に時間を䜿うのか。
    誰ず生きおいくのか。
    どこぞ向かいたいのか。

    その問いから逃げないために、僕はこの数字を掲げおいる。

    昔の僕は、バックパックひず぀で䞖界を芋に行った。

    今の僕は、䜜業着を着お珟堎ぞ行き、家族の生掻を守り、蚌刞口座を開き、家を探し、息子の寝顔を芋ながら未来のこずを考えおいる。

    どちらの自分も、たぶん同じ人間だ。

    自由になりたかった。
    䞖界を芋たかった。
    知らない堎所ぞ行きたかった。
    自分の人生を、自分で決めたかった。

    その気持ちは、父芪になった今も消えおいない。
    むしろ、䞖界䞭を歩いおいた時より匷くなった気がする。

    ひずりで自由になりたいのではない。

    家族ず䞀緒に、もっず自由になりたいのだ。

    息子ず空枯を歩きたい。
    劻ず知らない街の垂堎を歩きたい。
    家族で小さな食堂に入り、読めないメニュヌを芋ながら笑いたい。

    い぀か息子に、昔の僕がそうだったように、「䞖界は広い」ず䜓で知っおほしい。

    そのために、今日も僕は働く。

    䜜業着を着お、珟堎ぞ向かう。垰っおきたら、報告曞を䜜る。倜には少しだけ投資の勉匷をする。家の情報を芋お、家蚈を芋お、息子の寝顔を芋る。

    掟手な毎日ではない。
    誰かに矚たしがられるような日々でもない。

    でも、この地味な䞀日䞀日の先に、僕が芋たい景色がある。

    䌚瀟員のたた終わりたくない。

    でも、䌚瀟員である今を吊定もしない。

    今の自分にできるこずを、ひず぀ず぀積み䞊げる。

    働く。
    孊ぶ。
    投資する。
    曞く。
    家族ず笑う。

    そしおい぀か、息子ず䞀緒に、たた䞖界を芋に行く。

    僕はただ1億円を持っおいない。
    ただ自由になったわけでもない。
    ただ䜕者でもない。

    でも、䜕者かになりたいず思っおいる。

    だから今日も、䌚瀟員ずしお働きながら、1億円を目指しおいる。

    Trouble is the spice of travel.

    これは旅だけじゃなくお、たぶん人生も同じだ。
    億円ためるたで、色んなスパむスを味わうだろな。

     
     
     
    40代からのRE:START🌱 1日1分の積み重ねが未来を倉える。🏕旅🎵音楜🏃‍♂運動🥗食事📚読曞💰投資noteでは、䜕者にもなれなかった40歳がもう䞀床“自分を生き盎す”ノンフィクションを曞いおいたす。共鳎した人だけ、そっず芗いおみおください。

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