🌙第十夜『花畑の向こう側』
翌日の朝。
ちゃぴうさたちは、
約束の場所へ向かっています。
それは――
和菓子屋さんの隣に広がる花畑。
「来てるかな?」
ちゃぴうさが辺りを見回したその時。
もぞ……
もぞもぞ……
花畑が揺れました。

「ぷぅ♪」
みかんが嬉しそうに駆け寄りました。
練り切りうさぎは、
まるで待っていたかのように
ぴょんぴょん飛び跳ねます。
そして――
くるっ
振り返ると、
花畑の奥へ向かって歩き始めました。
「?」
ちゃぴうさたちは顔を見合わせます。
「ついて来てって言ってるのかな?」
みたらしが首をかしげました。
「行ってみよう!」
三匹は練り切りうさぎの後を追いかけます。
花畑の中には、
細い小道が続いていました。
黄色い花。
桃色の花。
白い花。
たくさんの花が風に揺れ、
甘い香りが辺りいっぱいに広がります。
練り切りうさぎは
お気に入りの花を見つけるたびに、
「ぷぅ♪」
と嬉しそうに鳴きながら
花の中へ飛び込みます。
ちゃぴうさ
「また消えた!」
みかん
「かくれんぼ上手だね!」
ちゃぴうさたちは笑いました。
しばらく歩くと、
花畑が少しずつ開けていきます。
すると――
「わぁ……」
ちゃぴうさが思わず声を漏らしました。
目の前に、
一本の小さな橋が現れたのです。
橋の向こうには、
見たこともない桜並木。
風が吹くたび、
桜の花びらが舞い上がります。
その景色はまるで、
春だけを集めたような世界でした。
橋のそばには、
小さな木の看板があります。

「春の島……?」
みかんが看板を読み上げます。
橋の向こうには、
桜色の景色がどこまでも続いていました。
その時――
ふわり
春風が吹き抜けます。
すると、
どこからか声が聞こえました。
「おーい!」
「「「えっ?」」」
ちゃぴうさたちは顔を見合わせます。
「今、誰か喋った?」
みたらしが耳をぴんと立てました。
「気のせいじゃないよね?」
みかんも辺りを見回します。
その時です。
春の島の奥に並ぶ和菓子屋さんの一つから、
小さな影が飛び出してきました。
たたたたっ!
たたたたたっ!

「わっ!」
こちらへ向かって、
勢いよく走ってきます。
桜の葉っぱを頭にかぶった、
小さなうさぎでした。
「わあ!」
ちゃぴうさが思わず声を上げます。
桜色のおもちみたいな体。
頭には桜の葉っぱ。
胸元には可愛いリボン。
春の香りをまとった、
とても可愛いうさぎです。
その子は橋を渡ると、
真っ直ぐこちらへ駆けてきました。
「おーい!」
今度ははっきり聞こえます。
「ええっ!?」
みかんも、
みたらしも、
ちゃぴうさも目を丸くしました。
「しゃべった!?」
すると、
隣にいた練り切りうさぎが
突然ぴょんぴょん跳ね始めます。
「ぷぅ♪」
そして――
ぴょんっ!
やってきたうさぎへ飛びつきました。
「ぷぅ♪ ぷぅ♪」
嬉しそうに頬をすりすり。
そのうさぎも笑います。

「久しぶりー!」
「ぷぅ〜♪」
二匹はどうやら
お友達みたいです。
仲良くじゃれ合う姿に、
ちゃぴうさたちも思わず笑顔になりました。
ちゃぴうさ
「練り切りうさぎのお友達?」
桜餅うさぎ
「うん!
ぼく、桜餅うさぎ!
春の島へようこそ!」
春風が吹き抜け、
桜の花びらがふわりと舞いました。
ちゃぴうさたちの新しい冒険は、
まだ始まったばかりです。
