半音の壁、開放弦の罠。〜ギタリストが「半音下げ」に震える理由〜【音源あり】
現在、レインボーのトリビュートバンド「ボインレー」に向けて絶賛練習中なのですが、ここにきて大きな壁にぶち当たっています。
練習曲の一曲、『Can’t Let You Go』。
なんとこの曲、チューニングが「半音下げ」だったのです。
この曲とは知り合って35年以上経ちますが、恥ずかしながら初めて知りました。というのも、ジョー・リン・ターナー在籍時の曲は、キーボードがいないとライブで再現できないとはなから諦めていたため、有名な代表曲以外は真剣にコピーしてこなかったのです。
消えた「正解」を探して
いざ練習を始めようと、YouTubeの「弾いてみた」動画や無料の楽譜を参考にし始めました。ところが、ここでパニックが起きます。
楽譜通りのポジションを押さえ、動画の奏者と同じ動きをしているのに、鳴っている音が全然合わない。
「え、どういうこと?」
レインボーに半音下げチューニングのイメージが全くなかった私は、混乱しながら調べ尽くし、ようやく「この曲だけは半音下げである」という記述に辿り着きました。
こうなると、既存の楽譜は(視覚的に)役に立ちません。頭の中で全ての音を半音ずらして解釈するよりは、耳コピした方が早い。そうしてなんとかバッキングは形にしましたが、本当の問題は「ギターソロ」にありました。
開放弦という「不可侵領域」
フレーズを確認すると、随所に「開放弦」が組み込まれています。しかも、それが非常に印象的な響きを作っている。
原曲が半音下げチューニングなら、開放弦を鳴らせばその音になります。しかし、レギュラーチューニングのまま「そのポジション」を弾いても、当然ながら半音高い音が出るだけ。
仕方なく、隣の弦で同じ高さの音を探して弾くことにしましたが、これが実に難しい。弦を飛び越える動き(弦飛び)が発生しますし、何より開放弦特有の「あの鳴り」が出ない。
それでも、音が合わないよりはマシ。苦渋の決断で運指を組み替え、音を合わせていきました。
チューニングを巡る「温度差」
弦楽器奏者にとって、チューニングの変更は一大事です。
カラオケのようにボタン一つで「ピッ」と下げられるわけではありません。一度変えればピッチが安定するまで時間がかかりますし、ネックの反りなど楽器のコンディションにも影響します。そのため、私は半音下げが必要な場合は、専用のギターを別で用意するようにしています。
この「チューニング問題」を巡っては、かつてメンバー間で揉めたこともありました。
それはジャパメタのカバーバンドをやっていた時のこと。ボーカルのユミコさんは、音域の関係で「全曲半音下げでやりたい」と最初のミーティングで提案してきました。
その瞬間、私とベーシストは顔を見合わせました。「マジか……」と。
「半音」の裏にある血の滲む努力
結局、私は押し入れに眠っていた古いギターを引っ張り出し、リペアに出して「半音下げ専用機」として復活させました。
しかし、本当に大変なのはそこからの練習です。
原曲がもともと半音下げなら(イングヴェイのように)問題ありません。
厄介なのは「レギュラーチューニングの原曲を、半音下げて演奏する」場合です。
自分のギターは半音下げ。音源はレギュラー。そのままでは音が合いません。
まずはYouTubeで「半音下げ加工」された動画がないか探し回ります。運良く見つかればラッキーですが、無い場合は悲惨です。わざわざカラオケボックスへ行き、原曲を半音下げに設定して録音し、それを持ち帰ってようやく練習がスタートできるのです。
「キー、半音下げてよ」
その一言の裏には、弦楽器隊のこうした目に見えない苦労と、楽器への負担が隠れています。
「いとも簡単に言わないでほしいな」……というのが、我々リズム隊・弦楽器隊の本音なのです。
半音下げの曲を無理矢理レギュラーチューニングで弾いたソロ!
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