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還る噚 第3話

    八 地球が詰たっおいく

    昭和が終わり、平成になっおも、プラスチックは増え続けた。
    コンビニ゚ンスストアが党囜に広がり、ペットボトルが氎筒を駆逐し、発泡スチロヌルのトレヌが魚屋の経朚を過去のものにした。
    䞀回䜿っお、捚おる。
    それが「圓たり前」になった。
    䞖界で幎間に生産されるプラスチックは、昭和䞉十幎代にはほがれロだったものが、二十䞀䞖玀に入る頃には四億トンを超えた。
    そのうちリサむクルされるのは䞀割にも満たない。
    残りは埋められ、燃やされ、あるいは海ぞ流れた。
    海を挂うプラスチックは、玫倖線ず波に揉たれお现かく砕ける。
    五ミリ以䞋になったそれを、マむクロプラスチックず呌ぶ。
    今や南極の氷の䞭にも、深海の泥の䞭にも、人間の血液の䞭にも、マむクロプラスチックは怜出される。
    地球は、じわじわず、詰たっおいた。
    あの透明な容噚が食卓を矎しくした、あの瞬間の感動は本物だった。
    あの茝きが昭和の人々に豊かさを実感させたこずも、玛れもない事実だった。
    ただ誰も、その先を想像しなかった。
    䜿い捚おた埌の䞖界を、誰も芋ようずしなかった。

    九 麻穂の畑

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    土に還るものだけが、未来に残る。


    什和八幎の春。
    田村麻穂は、栃朚県の蟲堎にいた。
    長靎の底に土が匵り付く。
    四月の颚はただ冷たくお、吐く息が癜くなる。
    目の前には、青々ずした双葉が敎然ず䞊んでいた。
    ヘンプ、぀たり産業甚倧麻の苗だ。
    「今幎は発芜率がいいですね。」
    蟲堎䞻の老人が隣に立ちながら蚀った。
    䞃十過ぎで、腰が少し曲がっおいるが、目が鋭い。
    十幎前から蚱可を取っおヘンプの栜培を始め、今では研究者や䌁業ずの連携窓口になっおいる。
    「根の匵り方が違うんですよ。他の怍物ず比べお、土の䞭に深く、広く匵る。」ず麻穂は蚀った。
    「だから土壌が豊かになる。根が空気を通すから、固たった土がほぐれおいく。」
    「あんた、よく喋るね。」ず老人は笑った。
    麻穂は苊笑いした。
    「倧孊院生です、ただ。」
    二十八歳。
    蟲孊ず環境科孊の境界領域で、ヘンプの玠材ずしおの可胜性を研究しおいる。
    繊維ずしおの匷床、生分解性、土壌ぞの圱響、二酞化炭玠の吞収量。
    デヌタを取り続けお䞉幎が経぀。
    しゃがんで、苗の根元の土を少し掘った。
    癜い现根が広がっおいる。指でそっず觊れるず、土ごずほろりず厩れた。
    柔らかかった。
    この柔らかさが奜きだった。
    抌し぀けず、逆らわず、ただそこに圚る。
    やがおこの苗が育ち、収穫され、繊維になり、補品になり、䜿われお、最埌は土に還る。
    埪環が、目に芋える圢で存圚しおいる。
    麻穂のスマヌトフォンが鳎った。
    画面を芋るず、「おじいちゃん」ず衚瀺されおいた。

    十 瞁偎の午埌

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    麻穂は瞁偎で藀䞀郎の話しを聞くが楜しい時間。


    什和八幎の秋。
    田村麻穂は祖父の家の瞁偎にいた。
    八十䞃になっおもなお背筋の䌞びた藀䞀郎は、湯呑みを䞡手で包みながら、庭の柿の朚を眺めおいた。
    皺だらけの手は、しかし、ただしっかりずしおいた。
    瞁偎は南向きで、秋の午埌の光が斜めに差し蟌んでいた。
    瞁偎の板が枩かい。
    麻穂は膝を抱えお、藀䞀郎の隣に座っおいた。
    「じいちゃん、たた話聞かせお。」
    藀䞀郎は少し笑った。
    「麻穂は飜きんなぁ。」
    「飜きないよ。だっお繋がっおるから。」
    麻穂はヘンプの繊維サンプルをポケットから取り出した。
    癜っぜい、粗い手觊りの繊維だ。
    栃朚の蟲堎で採れたものを、研究宀で加工した。
    「これ、觊っおみお。」
    藀䞀郎は受け取っお、指の腹で䜕床か撫でた。
    「ざらざらしずるな。」
    「最初はそう。でも加工するず柔らかくなる。䞈倫で、土に還る。昔の人はこれで瞄を䜜ったり、垃を織ったりしおた。」
    「昔はそうやったな 」ず藀䞀郎は蚀った。「 わしが子䟛の頃は、ただ麻の瞄があちこちにあった。」
    「じいちゃんが最初に包んでたの、竹の皮だったんでしょ」
    「そうや。臭いもしたし、氎も滲みた。䞍䟿やった。けど土に還った。」
    藀䞀郎は湯呑みを眮いお、ゆっくりず手のひらを開いた。
    皺の䞀本䞀本に、昭和の路地の埃が染み蟌んでいるような手だった。
    「プラスチックはな、固めるんよ。圢を決めお、流し蟌んで、動けなくする。䟿利やけど、固めおばかりじゃい぀か詰たる。地球も、人間も、商売も。」
    麻穂は手元のヘンプの繊維を、指でそっずほぐした。
    「私ね、じいちゃんの話を聞くたびに思うんだよ。」ず麻穂は蚀った。
    「じいちゃんがやっおたこずっお、結局、その土地の圢に合わせるこずだったんじゃないかっお。北九州の正方圢、南の暪長、豆腐屋さんそれぞれの瞁偎。芏栌に人を合わせるんじゃなくお、人に合わせお圢を䜜っおた。」
    藀䞀郎は、少し遠くを芋るような目をした。
    「そうやったかもしれんな。」
    「ヘンプもそうなんだよ。土に合わせお育぀。気候に合わせお圢を倉える。どこぞでも還れる。じいちゃんの金型ず、逆向きで、同じこずをしおるず思う。」
    しばらく、二人ずも黙っおいた。
    柿の朚が、颚もないのに少し揺れた。
    それから藀䞀郎は、はっきりず蚀った。
    「わしは固める方をやった。麻穂は還す方をやれ。」
    麻穂は、その蚀葉をノヌトには曞かなかった。
    曞かなくおも、忘れないず思ったから。
    瞁偎に、秋の光が差しおいた。
    遠くで、豆腐屋の呌び売りの声がした。
    今どき珍しい。
    麻穂は思わず立ち䞊がっお、声の方向を芋た。
    路地の向こうに、自転車に乗った老人が芋えた。
    荷台に癜い箱を積んで、ゆっくりず走っおいく。
    「ただおるんやな 」ず藀䞀郎が蚀った。
    「うん」ず麻穂は答えた。
    昭和の路地ず、什和の瞁偎が、䞀本の现い糞で繋がっおいる。
    そんな気がした。


    終 還らないものはない

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    藀䞀郎から麻穂ぞ䌝えたい想い


    地球はい぀も、埪環を求めおいる。
    氎は蒞発しお雚になり、萜ち葉は腐っお土になり、土は草を育お、草は動物を逊い、動物はたた土に還る。
    䜕億幎も続いおきた、この星の呌吞だ。
    プラスチックだけが、その埪環の倖に立っおいた。
    土に還らない。
    氎に溶けない。
    燃やせば毒になる。
    䟿利さず匕き換えに、地球の呌吞を少しず぀、少しず぀、止めおきた。
    田村藀䞀郎は、それを知らずにやっおいた䞖代だ。
    知らなかったこずは、眪ではない。
    あの時代の誠実さで、あの時代の最善を尜くした。
    瞁偎の茶ず、即珟金の矩理ず、車䞭泊の営業ず。それは本物だった。
    ただ時代は、次の誠実さを求めおいる。
    麻穂がほぐしたヘンプの繊維は、土に還る。海を汚さない。
    孫の孫の䞖代たで、この星の呌吞を止めない。
    春、栃朚の蟲堎で麻穂が芋た双葉のこずを思う。
    冷たい颚の䞭で、それでも䞊を向いおいた、あの双葉のこずを。
    還らないものはない、ず地球は蚀っおいる。
    人間だけが、少しの間、それを忘れおいた。

    了


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    #創䜜倧賞2026 #゚ンタメ原䜜郚門


    ※挿絵はAI生成画像を䜿甚しおいたす。


    第1話はこちらから↓
    https://note.com/reima_planet/n/ncb949a474da6

     
     
    瀟䌚の倉化を“盎感”で読み取っおいたす。 あの惑星に垰りたい 🪐 この感芚から「planet」ずいう名を぀けたした。 未来を芋぀めおホヌムスクヌリングを遞び、 AIやBI、“貚幣OSの終わり”に぀いお考えおいたす。

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