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『なぁ、あの頃のオレ』青春編 第66話 「言葉通じへんのに友達できたオレ」

    ◆ 朝から営業開始

    なぁ、あの頃のオレ。

    次の日の朝。
    部屋のドア。

    コンコン。

    開ける。

    ちびっ子達。
    第一声。

    「スーシー!!」

    「ペン!!」

    「ペン!!」

    なぁオレ。

    お前。
    完全にマジシャン認定されてる。

    昨日までは、
    ただの日本人。

    今日はもう、

    移動式マジックショーや。

    しかも朝からや。

    営業時間、

    早すぎる。

    ◆ 大喜びのちびっ子たち

    ほんで始まる。

    昨日大ウケした、
    ペン曲げるマジック。

    ペン持つ。

    フニャフニャ。

    曲がって見える。

    すると。

    「ウオォォォォ!!」

    「アアアアア!!」

    「オォォォォ!!」

    大歓声。

    なぁオレ。

    毎回同じリアクション。
    しかも全力。

    テレビショッピングでも、

    もうちょい落ち着いてる。

    ほんでお前。

    調子乗る。

    またやる。

    今度はペンが、
    短くなったように見えるやつ。

    すると。

    「ウオオオオオ!!!」

    「アアアアア!!!」

    「オォォォォォ!!!」

    なぁオレ。

    目の錯覚や。

    でも反応は。
    石油掘り当てたレベル。

    ただのペンやぞ。

    ほんでさらに、
    コインマジック。

    右手から左手に、
    コインを移動。

    すると。

    「ノォォォォォ!!!」

    「エェェェェェ!!!」

    「ウワァァァァァ!!!」

    リアクションが、
    石油掘り当てたレベル。

    なぁオレ。

    お前な。
    最初は一人やった。
    ほんで二人なった。
    三人なった。

    気付いたら、

    後ろにちびっ子列できてる。

    完全に引率の先生や。

    でもな。
    何が嬉しいって、
    昨日まで警戒されてたんが、
    今日は笑いながら付いて来る。

    それが地味に嬉しかった。

    なぁオレ。

    この時点でお前、
    ちょっと思い始めてたやろ。

    祭り連れてったら、
    一日食っていける。

    ◆ 距離感どうなってんねん

    でもな。
    驚いたんは、
    ここからや。

    昨日。

    扉の向こうから、
    コソコソ見てた子ら。

    それが今日。

    膝の上。

    肩組む。

    手握る。

    背中叩く。

    なぁオレ。

    距離感どうなってんねん。

    気付いたら、
    一人乗る。
    また一人乗る。
    さらに乗る。

    なぁオレ。

    人気者というより、
    ジャングルジムや。

    昨日までやで。
    扉の向こうから、
    コソコソ見てたん。

    それが今日。

    普通に膝の上。

    しかも全然遠慮ない。

    なぁオレ。

    信用獲得速度、
    だいぶバグってる。

    16歳のオレより、
    ちびっ子達の方が、
    よっぽど人懐っこい。

    しかもみんな、

    ずっと笑ってる。

    言葉は分からん。

    でも楽しそうなんは分かる。

    なぁオレ。

    昨日まで他人やったん、

    もう忘れてる。

    ◆ 自慢大会スタート

    ほんで次は、
    自慢大会。

    おもちゃ持ってくる。
    サッカーカード持ってくる。
    お気に入りのボール持ってくる。

    なぁオレ。

    みんな

    「見て見て!」

    や。

    ほんでオレの手、
    引っ張る。

    走る。

    階段上がる。

    また走る。

    ほんで。

    ドヤ顔。

    「△〇□〜〜〜!!」

    何言うてるか、
    全然分からん。

    でもな。

    たぶん。

    「ここオレの部屋!」

    やと思う。

    知らんけど。

    ほんでまた別の子。

    また手引っ張る。

    また部屋。

    また説明。

    また分からん。

    なぁオレ。

    イタリア語、
    相変わらずわかってへん。

    ◆ 会話は成立してない

    ちびっ子。

    「△□〇〜〜〜!!」

    オレ。

    「オーーー!!」

    ちびっ子。

    「〇△□□〜!!」

    オレ。

    「ブラーボー!!」

    なぁオレ。

    雰囲気だけで生きてる。

    たぶん向こうも、
    オレが理解してると思ってる。

    オレも、
    理解したフリしてる。

    全員幸せ。

    なぁオレ。

    国際交流って、
    案外こんなもんかもしれん。

    サッカーの話なんか。

    ゲームの話なんか。

    家族の話なんか。

    全然分からん。

    でもな。

    笑ってる。

    ほんでオレも笑ってる。

    それだけで十分やった。

    なぁオレ。

    昨日まで、
    言葉分からん国やと思ってたのにな。

    今考えたら不思議や。

    会話なんか、
    ほとんど成立してへん。

    でもな。

    楽しかった記憶だけは、
    めちゃくちゃ残ってる。

    言葉って、
    思ってるほど万能ちゃうんかもしれん。

    ◆ 結論

    なぁ、あの頃のオレ。

    お前な。
    イタリア来て。
    サッカー合宿参加して。
    本場のサッカー学びに来た。

    でもな。

    気付いたら、
    ちびっ子達の心、
    根こそぎ持っていってる。

    言葉通じへん。

    文化も違う。

    国も違う。

    でもな。

    ペン一本で、

    全部飛び越えてもうた。

    なぁオレ。

    サッカーは、

    まだまだ全然や。

    でもな。

    イタリア来て初めて、

    「ここ来て良かったかもしれん」

    って思った日やった。

    ほんでお前、
    最後まで思ってる。

    この子ら、
    サクラとして連れ回したい。

    【一言まとめ】
    ペン一本で、
    イタリアのちびっ子達の警戒心は全滅した。

    【次回】
    イタリア語覚えようとして、
    なぜか大爆笑されたオレ。

     
     
    失敗だらけの昔のオレに、 今のオレがツッコむ。 16歳で一人イタリアへ。 気ぃ使って空回り。 失敗も、勘違いも、だいたい自分発。 全部実話『なぁ、あの頃のオレ。』 1話完結。どこからでも読めます。

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