
【第3話】夢を叶えられなかったあの日
古久保汐佳(ふるくぼしおか)、当時13歳。
夢は、どこまで信じれば叶うんだろう。
夢にしがみついていた私は、叶わなかった瞬間、
“生きている意味すら見失った”。
──
ソニーミュージックアーティスツ。
オーディションを経て、私はシンガーソングライターとして所属した。
この2年間が、私の人生を大きく変えた。
と同時に、一生残る傷跡を残して。
同期にいたある男の子。
彼は、月に100曲以上書く天才だった。
人と話すのが苦手な分、全てを音楽にぶつける根っからのアーティスト。
曲も詞も、あふれるように生まれ、
止まらなかった。
そして、事務所が告げた言葉。
「どちらかが先にバズれば、もう一方は切る」
そんな、残酷な勝負が始まった。
彼はある音楽番組をきっかけに一気にバズり、
一瞬でデビューが決まった。
それと同時に、私は「必要ない人間」になった。
世界が終わったと思った。
夢が、音を立てて崩れていった。
デビューすることだけを信じていた。
それが、人生の全てだった。
自殺未遂までした。
「もう、音楽ができない私に生きる理由なんて
どこにもない、私の居場所はない。」
そう思っていた。
音楽は、私だけの道だと思っていたのに。
誰よりも自分を信じていたのに。
親も、先生も、応援してくれていたのに。
私には、“何も”なかった。
悔しくて、辛くて、涙が止まらなかった。
その反動で、私は一切歌うことをやめた。
ギターも、触れなくなった。
想いが溢れて止まらないノートも、
増えなくなった。
音楽なんて、もう一生やらない。そう決めた。
──でも、やっぱり音楽が好きだった。
たまにイベントで歌った。
オーストラリアでもギターを弾いた。歌った。
そのたびに、誰かが言ってくれた。
「あなたの歌で、心が軽くなった」
「泣いた。ありがとう」
「明日も、生きようと思えた」
その瞬間、あの時感じた喪失感が、
“生きててよかった”という実感に変わった。
音楽は、今も私の中にある。
たとえプロじゃなくても。
たとえステージが小さくても。
私が誰かの心に触れられるなら、
それはもう、奇跡みたいな“才能”なんだと思う。
──人は、比べた瞬間に自分を見失う。
でも、あなたにはあなたにしか出せない
“色”
がある。
夢が叶わなかった日からも、人生は続く。
だから、あなた自身のペースで、
自分と向き合ってほしい。
夢は一つじゃない。
生きる理由も、きっと一つじゃない。
そう信じて、私は今も、歩いてる。