見出し画像

もし日本のアーティストだけでRadioheadのトリビュートアルバムを本気で作るなら

もしRadioheadのトリビュートアルバムを、日本のアーティストだけで作ったらどうなるだろう

ただ有名なアーティストを集めて代表曲をコピーしてもらうだけでは面白くない

Radioheadの魅力は、作品を発表するたびに、それまでの自分たちのスタイルを壊してきたことにもある

ギターロックから始まり

巨大なオルタナティブロックへ進み

突然それを捨てて電子音へ向かい

ジャズ、現代的な音響、アンビエントを吸収し

そして再び人間が演奏するバンドの感触へ戻ってくる

だからこのトリビュートでも大切にしたいのは

「Radioheadに似せること」ではない

それぞれの日本のアーティストがRadioheadを一度壊し、自分たちの作品として作り直す

そんな架空のトリビュートアルバムを本気で考えてみた

⸻

RADIOHEAD / JAPAN — A Tribute

全15曲

テーマは

ロック → 崩壊 → 電子音 → 再生

⸻

01|Airbag

King Gnu

最初は『OK Computer』から「Airbag」

ただし1997年の音を再現するのではなく、現代の東京で鳴る巨大な「Airbag」を作る

歪んだギター

異常に太いベース

断片化されたドラム

そこへKing Gnuの現代的なプロダクションを投入する

Radioheadへの敬意を残しながら、最初の数秒で

「これは単なるカバーアルバムではない」

と分からせるオープニング

⸻

02|Paranoid Android

THE YELLOW MONKEY

この組み合わせはかなり聴いてみたい

「Paranoid Android」は一曲の中で人格そのものが変わっていく

静かな導入

突然現れる攻撃的なギター

宗教的にも感じるコーラス

そして再び暴走する後半

その異様な構成にTHE YELLOW MONKEYの妖艶さをぶつける

吉井和哉のボーカル

EMMAのギター

HEESEYのベース

ANNIEのドラム

Radioheadの神経質な狂気とは違う

退廃的でグラマラスな「Paranoid Android」

にしてほしい

⸻

03|Subterranean Homesick Alien

サカナクション

夜

都市

孤独

浮遊感

電子音

この曲とサカナクションが共有している感覚はかなり多い

原曲のギターを残しながら、シンセサイザーと電子的なリズムを増やす

宇宙の曲なのに、深夜の東京を歩いているようにも感じる

そんな「Subterranean Homesick Alien」

⸻

04|Exit Music (For a Film)

宇多田ヒカル

このアルバムの最初の大きな山場

冒頭は極端に音を減らす

声

ピアノ

空間

それだけ

そして後半から

ベース

ドラム

ストリングス

電子ノイズ

が少しずつ巨大になっていく

Radioheadの「Exit Music」を歌う宇多田ヒカルではなく

途中から完全に

宇多田ヒカルの「Exit Music」

になってほしい

⸻

05|Let Down

スピッツ

「Let Down」は不思議な曲だ

ものすごく美しい

しかし、その美しさの奥にどうしようもない寂しさがある

そこへ草野マサムネの声を置く

ギターのアルペジオは大きく変えない

むしろ原曲の構造を残しながら、日本語ポップスにも通じる透明感を引き出す

今回の15曲の中でも、かなり自然に成立しそうな組み合わせ

⸻

06|Karma Police

Mr.Children

「Karma Police」はメロディそのものが非常に強い

だからこそ桜井和寿の歌を中心にする

前半はピアノ主体

中盤からバンドが入る

最後は原曲同様、すべてが崩壊するような音へ

Radioheadを無理に再現するのではなく

Mr.Childrenが巨大なロックバラードとして解釈する「Karma Police」

⸻

07|No Surprises

羊文学

美しいのに怖い

優しいのに絶望的

「No Surprises」の最大の魅力は、この矛盾だと思う

羊文学なら、その静けさを壊さずに別の景色へ持っていける

深いリバーブ

最低限のドラム

遠くから聞こえるようなギター

そして声

ドリームポップのような「No Surprises」にする

⸻

ここからアルバムが壊れ始める

ここまでは、まだロックバンドとして理解できる世界だった

しかしRadioheadは『Kid A』でそれを壊した

このトリビュート盤も8曲目から同じ道へ進む

⸻

08|Everything In Its Right Place

Cornelius

シンセサイザー

声の断片

ノイズ

空間

反復

この曲は普通に演奏しない

一度すべてをデータのように細かく分解する

それをCorneliusの感覚で再配置する

Radioheadのカバーというより

Radioheadを素材にした新しい作品

に近いものにする

⸻

09|How to Disappear Completely

青葉市子

今度は逆に、徹底的に音を減らす

アコースティックギター

声

チェロ

最初はそれだけ

ほとんど無音に近いところから始まり、少しずつ弦が現れる

最後には巨大なストリングスに包まれ

そして再び消える

このアルバムで最も静かな曲

⸻

10|Idioteque

電気グルーヴ

ここで完全にバンドという概念を捨てる

「Idioteque」をロックとして演奏しない

巨大なキック

反復するシンセ

無機質な電子音

断片化された声

完全なクラブトラックとして作り直す

Radioheadの電子的な側面を、日本のテクノへ接続する一曲

⸻

11|Pyramid Song

UA

電子音の世界を通過したところで、突然ピアノが現れる

そしてUAの声

「Pyramid Song」の持つ神秘性を残しながら、ジャズやソウル、民族的な響きを少し加える

ピアノ

コントラバス

ジャズ的なドラム

ストリングス

そしてUA

原曲のコピーではなく

どこの国の、どの時代の作品なのか分からなくなるような「Pyramid Song」にしたい

⸻

12|There There

東京事変

ここでバンドが帰ってくる

しかし最初の頃と同じバンドではない

電子音と静寂を通過した後の、肉体的なバンドサウンド

「There There」の特徴であるパーカッシブなリズムをさらに強調する

ドラム

ベース

ギター

パーカッション

それぞれが複雑に絡みながら前進する

東京事変の演奏力を真正面から使う一曲

⸻

13|Weird Fishes / Arpeggi

L’Arc〜en〜Ciel

この曲の中心にあるのは、何層にも重なるアルペジオ

そこへkenのギターを置く

複数のギターを左右から少しずつ重ね

tetsuyaの動くベース

yukihiroの精密なリズム

その上をhydeの声が漂う

L’Arc〜en〜Cielの幻想的な側面だけを抽出してRadioheadと接続する

ライブでも聴いてみたい一曲

⸻

14|Reckoner

藤井風

アルバムは終わりへ向かう

「Reckoner」はRadioheadの中でも特に美しい曲の一つ

ファルセット

細かなリズム

ギター

ストリングス

そこへ藤井風のピアノと声を加える

さらにネオソウル的なコード感を少し強くする

Radioheadなのにソウルのようでもある

最後の曲へ向かうための、温かい一曲

⸻

15|True Love Waits

Cocco

最後はCocco

この曲を派手には終わらせない

ピアノ

声

わずかな弦

それだけでいい

「True Love Waits」はRadioheadが長い年月をかけて演奏し続け、最終的に極端なほど簡素な形へ辿り着いた曲でもある

だから最後に必要なのは技巧ではない

音圧でもない

巨大なアレンジでもない

一人の人間が歌っているという感覚

Coccoの声が持つ繊細さと、生々しい感情をそのまま録音する

途中で声が揺れてもいい

息遣いが残っていてもいい

最後のピアノが消えた後にも、しばらく無音を残す

そしてアルバムは終わる

⸻

15曲を並べると

01. Airbag — King Gnu

02. Paranoid Android — THE YELLOW MONKEY

03. Subterranean Homesick Alien — サカナクション

04. Exit Music (For a Film) — 宇多田ヒカル

05. Let Down — スピッツ

06. Karma Police — Mr.Children

07. No Surprises — 羊文学

08. Everything In Its Right Place — Cornelius

09. How to Disappear Completely — 青葉市子

10. Idioteque — 電気グルーヴ

11. Pyramid Song — UA

12. There There — 東京事変

13. Weird Fishes / Arpeggi — L’Arc〜en〜Ciel

14. Reckoner — 藤井風

15. True Love Waits — Cocco

⸻

RadioheadをコピーしないRadioheadトリビュート

このアルバムでやりたいのは

「日本の有名アーティストがRadioheadを歌いました」

という企画ではない

Radiohead自身がそうしてきたように

既に完成しているものを一度壊してほしい

King GnuにはKing Gnuの「Airbag」を

THE YELLOW MONKEYにはTHE YELLOW MONKEYの「Paranoid Android」を

宇多田ヒカルには宇多田ヒカルの「Exit Music」を

UAにはUAの「Pyramid Song」を

L’Arc〜en〜CielにはL’Arc〜en〜Cielの「Weird Fishes」を

そしてCoccoにはCoccoの「True Love Waits」を作ってほしい

原曲に似ていなくてもいい

むしろ似ていない方が面白い

それでもメロディやコードや言葉の奥にRadioheadが残っている

それこそがトリビュートだと思う

⸻

この架空のアルバムにタイトルを付けるなら

『RADIOHEAD / JAPAN — A Tribute』

そして全15曲を通して描くのは

ロック

から始まり

崩壊

し

電子音と静寂

の中へ入り

最後にもう一度

人間の声

へ戻ってくる物語

Radioheadの30年以上にわたる変化を、日本の15組で一枚のアルバムとして再構築する

もし本当に発売されたら

最初から最後まで通して聴いてみたい

いいなと思ったら応援しよう!