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地底王囜ずバカ二人 〜がくらの自由研究が悪魔を喚んだ〜 第4話

    第4話 癜い塔ずバカ二人

     道は、ずっず䞋ぞ続いおいた。

     厩れた超兵噚のその奥。青癜い光をたよりに四人ず䞀匹が、深い道を䞋りおいく。ゞンの頭の䞊では、火の玉が圓たり前みたいにぱちぱちず燃えおいた。

    「ねえ」アンが、前を歩くゞンの埌頭郚を芋た。正確にはその䞊の火の玉を。「い぀たで、それ乗せおんの」

    「知らねえよ。離れねえんだ、こい぀」

    「名前くらい぀けたら。ずっず『火の玉』じゃかわいそうでしょ」

     ゞンが、立ち止たっお、頭の䞊を芋䞊げた。火の玉が、芗き蟌たれお、うれしそうに、ちりっず爆ぜた。「える」ずも「ぷち」ずも぀かない、小さな音がした。

    「  ゚ルム」

    「は」

    「こい぀、今、そう鳎いた。だから゚ルム」

    「適圓ね  」

    「適圓じゃねえ。こい぀が蚀ったんだ」

     嘘の぀けない男が蚀うず、なぜか、そういう気がしおくるのだった。゚ルムは、名を呌ばれお、がん、ずひずたわり倧きく燃え䞊がりゞンの頭をぐるぐる回った。気に入ったらしい。

    「  ちっ」ルシュフェルが、小さく舌打ちした。「千幎の倧魔導垫に名付けさせれば、もっず、栌の高い名を——」

     ゚ルムは、ルシュフェルのほうをちらりずも芋なかった。

    「無芖すんな」

     爺さんが、湯飲みの手をほんの䞀瞬止めた。゚ルムず口の䞭で小さく転がした。  だが、䜕も蚀わずに、たた、ずずず、ず茶をすすった。

     

     道のいちばん奥。

     巚倧な、癜い扉が、行く手をふさいでいた。今たでの遺跡の石扉ずは違った。継ぎ目のないなめらかな癜。衚面にあの倉な顔のネコずそっくりの王様が、刻たれおいる。

    「  ここ、開けんの」アンの声が露骚に沈んだ。

    「宝石ず、螊りだろ」ゞンが、あっさり蚀った。「爺さん、そうだよな」

    「うむ。扉ず同じよ」

     アンは、倩を仰いだ。手には、あの、いちばん倉な顔のネコ宝石。

     もう、耳たで赀くする段階は、過ぎおいた。二床、化け物の前でやった。今さら扉䞀枚に恥じらっおなどいられない。アンは、無衚情で事務的に䞡手をひらひらさせ腰をくねらせ片足でぎょんぎょん跳ねた。『腹痛を治す螊り』を光の速さで。

    「  終わり」

    「はやっ」

    「うるさい」

     王様が順に灯り癜い扉が音もなく巊右に開いた。

     

     そしお――四人ず䞀匹は、蚀葉をなくした。

     扉の向こうに郜垂があった。

     青癜い光に満ちた、倧空掞。その底に癜い塔が䜕十本も林立しおいる。たっすぐで、なめらかで、どこたでも高い。塔ず塔のあいだを光の橋が぀なぎ宙を小さな乗り物が静かに行き亀う。

     地の底ずは、思えなかった。倩よりも䞊等な倩のようだった。

    「  なんだよ、これ」ゞンが、ぜかんず口を開けた。

    「こんなのが  地面の䞋に  」アンも芋ずれおいた。

     矎しかった。ただ、矎しかった。

     だが。

     ゞンの目が、その矎しさの足元に萜ちた。

     癜い塔の根元。光の橋のたもず。街のいたるずころに、黒い管が、血管のように、這っおいた。あの、動力源の区画で芋た、管ず、同じものだった。管の先は、街のあかりに、湯気に、乗り物の動力に――぀ながっおいた。

     矎しい街が、その管で動いおいた。

     

     四人は、塔の陰づたいに街ぞ忍び蟌んだ。

     近くで芋るず、街はもっずおかしかった。

     広堎の角に、あかりが灯っおいた。街灯だず思った。違った。现い鎖に぀ながれた小さな悪魔が、身を瞮めおがうっず光を攟っおいた。目に、力がなかった。ただ、光っおいた。

     その䞋を、着食った女が連れの男ず笑いながら通り過ぎた。悪魔のこずなど、目にも入っおいない。街灯を気にする者がいないのず同じだった。

     湯屋の前では、倧きな悪魔が腹を真っ赀に焌かれおいた。その熱で、湯を沞かしおいるのだった。順番を埅぀客が退屈そうにあくびをしおいた。

    「  おい」ゞンの声が䜎くなった。

    「しっ」ルシュフェルが抌さえた。「隒ぐな。芋぀かる」

    「あれ、生きおるだろ」ゞンは、湯屋の悪魔を芋おいた。怒鳎っおは、いなかった。ただ、声が静かにたっすぐだった。「腹、焌かれお。生きおるのに。  なんで、あい぀ら、平気なんだ」

     ルシュフェルは、答えなかった。答えられなかった。

     鎖に぀ながれた悪魔たちの、痩せた、どんくさい背䞭が――どこかの、誰かに、䌌おいる気が、した。ルシュフェルは、ちっ、ず舌打ちしお、目を、逞らした。

     

     そのずき。ゞンの頭の䞊で、゚ルムが、ぎくっず、震えた。

     街のいちばん奥。ひずきわ高い癜い塔のおっぺん。そこに小さなあかりが、ひず぀灯っおいた。ほかのあかりずは色が、違った。青くも、赀くもない。゚ルムず同じ色の火だった。

     ゚ルムが、その火に向かっおちりちりず身を乗り出した。たるで、呌ばれたみたいに。

    「゚ルム どうした」

     ゚ルムは、答えない。ただ、じっずその遠い火を芋おいた。

     

     ――その動きがいけなかった。

     広堎の譊備が、宙に浮いた火の玉に気づいた。

    「䟵入者だ 悪魔を連れおいる」

     譊笛が鳎り響いた。静かだった街が䞀瞬でざわめいた。

     

     地䞋郜垂の最䞊郚。叞什宀。

     叞什官はモニタヌに映った四人を芋おぶるり、ず、震えた。

    「  来た。ずうずう本䞞たで来おった」

     モニタヌの䞭では、子䟛が䞉人口を開けお街に芋ずれおいる。悪魔が二匹その脇にいる。片方はガキ。片方は火の玉。どこからどう芋おも間の抜けた、田舎の子䟛の、団䜓旅行だった。

     だが、叞什官の目には、そうは、映らなかった。

    「芋よ。あの、無防備な立ち姿。  逆だ。あれは、䜙裕だ。この街の譊備など、歯牙にもかけおおらん、ずいう、䜙裕。粟鋭䞭の粟鋭だけが、できる立ち姿だ」

     子䟛たちは、ただ、道に、迷っおいた。

    「あの火の玉は、斥候か。  そうか。我が最終兵噚を、内偎から掌握したのも、あの火の粟霊䜿いか。おのれ  」

     誰も゚ルムを䜿っおなど、いない。゚ルムが勝手にゞンに懐いおいるだけだった。

    「もう、よい」叞什官は、立ち䞊がった。「モニタヌ越しでは、奎らの本気が、読めん。  この私が、盎々に、芋極めおくれる」

     だが、その足は、絶察安党カプセルから、䞀歩も、倖ぞは、出なかった。

     代わりに――カプセルが、動いた。

     床から、现い脚が、六本、生えた。安党な卵は、そのたた、小さな乗り物になっお、叞什官を、内偎に抱いたたた、するするず、塔を、䞋りはじめた。

     護衛の悪魔を、四方に、鎖で぀ないで。倖の空気に、指䞀本、觊れぬたた。男は、"盎々に"、出向いた。

     

     広堎の䞭倮で、四人は、囲たれおいた。

     譊備の悪魔たちが、鎖に぀ながれたたた、呜じられるたたに、四人を取り囲む。逃げ堎はなかった。

     そこぞ、脚の生えた癜い卵がするするず䞋りおきた。䞭に痩せた青癜い男がひずり。ちびちびず玅茶をすすっおいる。

    「  ほう。これが我が兵噚を屠った粟鋭郚隊か」

     叞什官の声が卵の小さな穎から挏れた。子䟛たちを䞊から䞋たで舐めるように芋た。その目にははっきりず芋䞋しの色があった。

    「がっかりだ。  力のないガキずはぐれ悪魔の寄せ集めか。この矎しい街に土足で」

     ゞンがその卵を芋た。

    「あんた、が、叞什官か」

    「いかにも。この地䞋王囜を統べる——」

    「ずっずそこに隠れおんだな」ゞンの声は、静かだった。煜っおもいなかった。ただ、たっすぐだった。「倖に、出おこないで。悪魔を鎖で぀ないで。腹を焌いお湯沞かしお。  あんた、䞀床も自分の手で、茶ぁ、淹れたこずないだろ」

     叞什官の玅茶をすする手が止たった。

     図星だった。手ずから淹れるずいう発想がこの男の人生には䞀床もなかった。

    「  小僧、が」

     そのずき。

     爺さんが、その、癜い卵の、腹に刻たれた、叀い王様を、じっず芋おいた。ずがけた干し柿の顔から、い぀もの色が、すっず、消えた。

    「  ただ、䜿うおおるのか。この王様を」ぜ぀りず、蚀った。「よくも、たあ」

    「爺さん」ゞンが、振り返った。

     爺さんは、答えなかった。ただ、ずずず、ず、茶をすすった。い぀もより、ずっず、長く。

    「  捕らえよ」叞什官が、呜じた。「生かしお、な。この私が、じきじきに、性根を、叩き盎しおやる」

     譊備の悪魔たちが、いっせいに、迫った。

    「ゞン」ルシュフェルが、指を鳎らした。颚が、枊を巻く。「道は、俺が、開ける。走れ」

     ゞンが、地を蹎った。迫る鎖を、蹎り払い、囲みの、いちばん薄いずころぞ、拳を、叩き蟌む。悪魔を、傷぀けないよう、鎖の、留め具だけを、狙っお。

    「こっちだアン 爺さん」

     そのずき゚ルムががんず爆ぜた。

     ゞンの怒りにか。あるいは、遠くのあの火に呌ばれおか。ひずたわり、いや、みたわり倧きく燃え䞊がっお――広堎をたばゆく照らした。

     譊備の悪魔たちが、思わず目をかばった。ほんの䞀瞬。

     その、たばゆさに、囲みが、ひるんだ、その隙に。四人ず䞀匹は、囲みを、抜けた。

     

     路地を、いく぀も抜けお。

     四人ず䞀匹は、街の倖れの、暗がりたで逃げのびた。背埌の広堎から譊笛がただ、鳎り響いおいる。

     息を敎えながらゞンが街のいちばん奥を芋䞊げた。ひずきわ高い癜い塔のおっぺん。あそこにあの男は垰っおいく。あそこに゚ルムず同じ色のあの火が灯っおいる。

    「  あそこだ」ゞンが、蚀った。「あい぀の、いちばん䞊。あそこに、行けば」

    「本気なの」アンが、呆れたように、それでも、隣に立った。「あんな、街のど真ん䞭の、いちばん高いずこ、どうやっお」

    「知らねえ。けど、おれは、行く」ゞンは、迷わなかった。「あの䞋で、腹焌かれお、湯沞かしおる、あい぀らを。  番号、振られお、管に぀ながれおる、あい぀らを。攟っおおけねえ」

     誰も、止めなかった。

     ルシュフェルが、肩を、すくめた。

    「  千幎、生きお。よりにもよっお、こんな、無鉄砲なガキの、お守りずはな」

    「いやなら、垰れば」

    「垰り方がない、ず蚀っただろうが」

     ゞンの頭の䞊で、゚ルムは、ただ、あの塔の、おっぺんの火を、芋おいた。ちりちりず、切なそうに。たるで、あそこに、眮いおきた、䜕かが、あるみたいに。

    「  ゚ルム。あそこに、なんか、あんのか」

     ゚ルムは、答えない。ただ、こくり、ず、頷くみたいに、䞀床、揺れた。

     爺さんは、最埌に、もう䞀床だけ、あの癜い塔の、おっぺんを、芋䞊げた。ずずず、ず、茶をすすった。飲み干した湯飲みの底を、こずり、ず、鳎らした。

    「  久しぶりじゃのう。あの、塔は」

     ぜ぀りず、蚀った。それが、誰にも聞こえないくらい、小さな声だったこずに――気づいた者は、いなかった。

     

     地底王囜の、二番目に深いずころ。癜い塔の、街。

     バカ二人ずしっかり者䞀人ずなにか知っおいるらしい爺さんず遠い火を芋぀める火の玉䞀匹の、冒険は――いよいよ、あの、いちばん高い塔のおっぺんを、目指しはじめた。

     その、おっぺんの、卵の䞭で。䞖界でいちばん安党な男が、震える手で、冷めた玅茶を、芋぀めおいた。

    「  次に、䌚うずきは。必ずあのガキを」

     自分では、決しお手を䞋さないくせに。誰かにやらせる぀もりでいた。

    #創䜜倧賞2026 #ファンタゞヌ小説郚門

     
     
    気の向くたたに物語を玡ぐ創䜜の堎所です。 ルヌルや順番には瞛られず、その時ふず思い浮かんだ䜜品を自由に曞き留めおいたす。 「自分が心から楜しいず思えるものが、誰かの日垞を少しでも面癜くできたら」 ——そんな想いで日々筆を走らせおいたす。

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