【リブート】第五章 ミオ
旅行を終えて、またポートに向かった。
(ミサキはいるかな・・・)そんな気持ちを抱えて。
ミサキは出勤していなかった。
小倉の話、知覧の話、尾道の話。
重いかもしれないけど少しだけでも聞いてほしい。
マスターは寂しそうにしている私を見て、
女の子を付けてくれた。
「ミオです。よろしく~」
黒髪のショートカットで背は少し高い。
幼さの残る可愛い顔で、清潔感があって健康的な雰囲気をまとっていた。
ミサキが居なくて落ち込んだ気持ちが少し和らいだ気がした。
「元気なさそう~。どうしたのー?」
本当はその話を最初に聞いてほしかった相手がいた。
それでも私は、知覧の話を始めた。
「え、2000キロ?浜松までの往復だと・・・4往復できるやん!!!」
自分のことに置き換えて距離を考えてくれた。
「浜松出身なの?」と聞くと、
「いや、違うんだけどね・・・」
「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。っていう映画で感動して知覧にいったんよ」
「わたしも見たーー。あれ開始5秒で泣けるよねー!!」
「俺はラストのシーンが一番刺さった。泣け過ぎた」
「わかるーーー!!」
あの映画を見ていたのか・・・。知覧のことがわかる子なんだな・・・。
この子もあの映画を見て、
受け止めて、
泣いたんだ・・・。
「あの映画見てたら、知覧いくと見え方変わると思うよ。良かったら行ってみてね」
「遠いけど、いってみようかなぁ~」
この日は同じ映画で涙を流した人に出会えた。
そして心の中の知覧を少し外に出せて、落ち着いたように思えた。
時間になり店を出ようとすると、彼女は柱から半身をひょこっとのぞかせ、「またきてねー」と笑顔で小さく手を振ってくれた。
後日、またポートに向かった。
ミオと話したかった。
元気を分けて貰いたかった。
「おひさしぶり~。また来てくれたんやー」
眼の周りが痒かったのでメガネを外して、おしぼりで目元を吹いた。
「あ、かっこいい・・・」
ん?
何かの聞き間違い?
かっこいいなんて女の子から言われたことないけど。
付き合った女の子からは、「可愛い」とは言われたことがあるかな。
「メガネ可愛い~」
ミオはテーブルのメガネを軽く掛けて、
「見えない~」と笑っていた。
無邪気かよ。
青春かよ。
「え、かっこいいって、だれのこと?」と聞くと、
「お客さんのことよ?」
「嘘でしょ(笑)」
「わたし、ホントのことしか言わへんもん!」
少しの沈黙があった。
それから何度もポートに通った。
ミオから、色々と話しかけてくれた。
「わたし、昔バドミントンに打ち込んでたけど、やめてから少し太ってきたのー。」
「全然太ってないよ。(健康的で魅力的・・・)」
「でもマンジャロとか嫌やねん。モズクを毎日飲んでるよー。」
「うん、自然が一番よね。(めちゃわかる)」
「お客さん、手が綺麗やなー。爪もめちゃ綺麗」
「可愛くなれるかな?(笑)」と冗談っぽく聞くと、
「わたし、美容の仕事してるからギャルにしたるわ~」
「よく見たら、肌もスベスベやんか~」
渇いたこころに、彼女の言葉が少しずつ染み込んでいく。
お世辞かもしれない、本心かもしれない。でも、満たされた気がした。
涙がこぼれてきて、メガネを外した。
少しうつむいた。
「ほら、顔あげて」
ミオが私の顔を両手で包んで、微笑んでくれた。
太陽のような笑顔で自分を照らしてくれた。
時間が止まった。
