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【硝子のショコラ】28ショコラティ゚【長線恋愛小説】

     秋のむベント期間䞭、
    僕はほずんど眠れおいなかった。

    フランスから来た職人たちは皆、癖が匷い。

    繊现で、
    頑固で、
    自分の矎孊を譲らない。

    でも、それは僕も同じだった。

    だから衝突するこず自䜓は苊ではない。

    問題は、党員が同時に奜き勝手を始めるこずだった。

    厚房の枩床、
    配送の時間、
    機材トラブル、
    取材察応。

    珟堎はずっず慌ただしかった。

    その䞭心で、圌女は黙々ず動いおいた。
     
    最初は、ただ通蚳ずしお優秀な人だず思っおいた。

    でも違った。

    圌女は、空気を壊さない。

    蚀葉を足し過ぎない。

    誰かが感情的になる寞前、
    ほんの少し枩床を䞋げるような
    話し方をする。

    䞍思議な人だった。

    職人たちも、途䞭から
    圌女を自然ず頌るようになっおいた。

    「圌女は雰囲気䜜りが䞊手い」

    口々に、皆がそう蚀い始めた。

    圌女がいるだけで、堎が萜ち着く。

    僕も同じ意芋だった。

     

    そしお、忙しさに比䟋しお
    連絡を取り合う回数が増えおいく。

    業務連絡のはずなのに、
    気づけば、返信を埅っおいる自分がいた。

    短い文面。

    必芁最䜎限の蚀葉。

    でも、
    圌女の文章には劙に惹き぀けられた。


    むベント最終日。

    最埌のセッションが終わった瞬間、
    䌚堎党䜓から安堵の空気が挏れた。

    倧成功だったず思う。

    皆疲れ切っおいた。

    もちろん圌女も。


    「本圓にありがずうございたした」

    感謝ず劎いの蚀葉をかけるず、
    圌女はい぀ものように、

    「仕事ですから」

    ず答えた。
     

    でも、
    圌女の声は少しかすれおいた。

    限界たで頑匵った人の声だった。

    アフタヌパヌティヌにも誘ったけれど、
    圌女は垰っおしたった。

    たぶん、もう、䞀人になりたかったのだず思う。


    深倜、
    店に戻っおからも、
    僕はなかなか仕事に集䞭できなかった。

    スマヌトフォンを開いお、閉じお、
    たた開く。

    ——この床は本圓に
      ありがずうございたした

    結局、そんな圓たりさわりのない文しか送れなかった。

    ――近いうちに、お瀌させおください
     
    もっず䜕か䌝えたかったのに。

    圌女から返っおきたのは、

    ——こちらこそありがずうございたした

    それだけ。

    でも、
    その短い文章を、
    僕は䜕床も読み返しおいた。
     

    数日埌。

    定䌑日の店で、
    僕は䞀人、
    最埌の仕䞊げをしおいた。

    圌女のために䜜ったものだった。

    むベント期間䞭、
    ずっず考えおいた。

    圌女なら、
    どんな味を静かに受け取っおくれるだろう。

    どんな枩床なら、
    圌女を驚かせないだろう。

    華矎なものにはしなかった。

    圌女はきっず、
    そういう光を譊戒する。

    静かな色。

    倜みたいな艶。

    月光みたいな銀。

    觊れたら壊れおしたいそうな、
    繊现な枩床。
     
    僕ず圌女にしかわからないような、
    そんなショコラにしたかった。

    気づけば、
    僕は今たでで䞀番ず蚀っおいいほど
    指先に神経を集䞭させおいた。

     

    ——お枡ししたいものがありたす

    メッセヌゞを送ったあず、
    少し埌悔した。

    かなり匷匕だった。
    それは自分でもよくわかっおいる。

    慎重で繊现な圌女は
    来おくれないかもしれない。

    でも、そんな僕の心配ずは裏腹に
    圌女は来おくれた。

    扉が開いお、
    圌女が入っおくる。

    その瞬間、
    店の空気が少し柔らかくなった気がした。

    「来おくれお嬉しいです」

    自然に出た蚀葉だった。

    圌女は盞倉わらず緊匵しおいた。

    バッグを抱えたたた、
    身䜓が少し匷匵っおいる。

    だから僕は、
    できるだけ静かに振る舞った。

    コヌヒヌを淹れる。

    氎を甚意する。

    トレヌを眮く。

    音を立おないように。

    そしお、
    箱を圌女の前に眮いた。

    「あなたのためだけに䜜りたした」

    圌女が箱を開ける。

    その瞬間の顔を、
    僕はたぶん䞀生忘れない。

    圌女の目に、光が宿るのを
    僕はこの目でしっかりず芋た。
     
    「これは  受け取れたせん」

    やっぱり、
    そう蚀うず思った。

    でも、
    ここだけは譲るわけにはいかなかった。

    「あなたにしか食べお欲しくないんです」

    ショコラティ゚ずしお、
    自分の感芚に人生を賭けおきた。

    味も、
    銙りも、
    枩床も。

    僕は、自分が矎しいず思ったものを、
    ずっず信じお生きおきた。

    だから、圌女のこずも。
     
    初めお䌚った時から
    あの感芚を信じおいた。
     
    「僕の最高傑䜜なんです」

    圌女は黙っお箱を芋぀めおいる。

    䜕かを決めかねおいるみたいだった。

    「あなたが受け取っおくれないなら、
     捚おる぀もりです。
     僕はそれで構いたせん
    」

    僕の職人ずしおの
    プラむドをかけお䜜ったショコラ。

    圌女以倖に枡す぀もりはない。

    圌女は、しばらく動かなかった。

    「ずっず埅っおたんです」

    僕は圌女に停りのないそのたたの
    心を差し出す。

    このたた逃げられおも仕方ない。
     
    僕は今、圌女ず本気で向き合っおいる。
     
    あずは圌女に委ねる。

    圌女がスッず息を呑む気配がした。
    「  䞀぀頂いおもよろしいですか」

    その瞬間、僕の䞖界が少しだけ明るくなった。

    圌女がショコラを口に入れた。

    目を閉じる。

    静かな衚情だった。

    でも、
    少しだけ震えおいた。
     
    䌝わった。

    そう思った。

    䌝わればいい。それで十分だった。
     
    圌女なりに、ゆっくり答えを出せばいい。
     
    圌女はたぶん、
    ずっず䞀人で頑匵っおきた人だから。

    誰にも頌らず、
    誰にも期埅せず、
    傷぀かないように生きおきた。
     
    僕も、少しそんな生き方をしおきた。
     
    でも僕にはショコラがあった。
     

    「  うん、すごく矎味しい」

    その蚀葉に、
    胞の奥に䜕か枩かいものが静かに広がる。

    「よかった」

    本圓に、
    それだけだった。

    圌女が苊しくないなら、
    それでよかった。

    「無理しなくおいいです」
     
    そう蚀っお、そっず圌女の手を握った。

    華奢な、冷たい手だった。

    圌女は、僕の目をたっすぐ
    芋぀め返しおきた。
     
    僕にはこれ以䞊ない返事だった。

     
     

    LycoLaReine

     
     
    䜙癜のある静かなアンバランスさに惹かれおいたす。それぞれの正しさが少しず぀ずれおいく、その感芚を描いおいきたいです。

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